第79話 自分に都合の良いたられば
弱みを握った状態で半ば無理矢理私の彼氏になってくれたという事は、ご主人様は私の事が異性として好きで付き合っているわけではないという事でもあり、そのことは相手の気持ちを慮れば小学生でもわかる事である。
なので私は、ご主人様は私のご主人様であると周りに牽制する為にも首輪とリードを用意したのだが、ご主人様は『首輪とリードは俺たちのプレイをより良いものにするためにここでは使わない方が良いだろう』言ってくれ、その代わりに手を繋いで登校しようと言ってくれるではないか。
しかも恋人たちがすると言われているあの伝説の繋ぎ方、恋人繋ぎである。
これは、少しは期待しても良いのだろうか?
そんな自分に都合の良いたらればを思ってしまう。
それにしても、今までは抱きついて密着してご主人様を感じたり、首輪に繋いだリードを握ってもらう事によってご主人様との繋がりと信頼関係を感じたりしていたのだが、何だろうか? 手を繋ぐという行為はそれらとはまた違い、直でご主人様と繋がれているという安心感と、それと同時にご主人様の体温も感じ取れるというだけではなく、それは逆に私の体温もご主人様に伝わってしまっているという緊張と安心感も感じてしまう。
なんで今まで私はご主人様と手を繋いでこなかったのだろうか?
そう思ってしまう程には、癖になりそうなくらいに今の私は幸福で満たされて溢れ出してしまっている。
そして、幸福で満たされれば満たされるほど、それと同じくらい私は不安になるのであった。
◆
「おいっ!!」
「何だよっ? 朝っぱらからうっせーなっ」
「良いからあれを見ろよっ!! あの氷室麗華と手を繋いで登校している奴がいるぞっ!!」
「はぁ? そんなわけあるはずがないだろ? 幻覚でもみてるんじゃないのか? 今までどれほどのイケメンが氷室麗華様にフラれてきたと思ってるんだよ? お前だって氷室麗華様が裏で氷の女王と呼ばれている理由ぐらいは知っている…………マジじゃん……」
「だから言っただろうがっ!! あぁ、俺密かに氷室麗華を狙ってたのにっ!!」
「あ? ふざけんなよ? お前如きが麗華様と付き合えるわけがないだろうが。 あるとすればまだ俺の方が麗華様と付き合える確率が高えわ。 あと様をつけろ。 麗華様だろ」
「知ってるか? ゼロにどんな数字を掛けてもゼロなんだぞ?」
「あ? そういうお前こそ付き合えてねぇじゃねけかよ。 やんのか? お?」
「それはお前も同じだろうがっ」
何だろうか? そこかしこから似たような会話が繰り広げられており、そのどれもが氷室麗華と手を繋いで登校している男性についてである。
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