第78話 打算

 しかも、あの氷室麗華の性癖がド変態である事まで伝えたのならば『もしかしたらそのような未来が、一パーセントでもあるのかもしれない』とすら思えなくなり、ただのホラ吹き野郎だと思われて相手にもされないだろう。


 それほどまでに今起きている現状はあり得ない事なのである。


 それに、麗華がド変態なのはここ最近の付き合いで、というか彼女になった初日で分かったのだが、麗華は俺の事を好きなのかどうなのか今だに分からない。


 その事が今の俺にとっては不安で仕方ないのである。


 もし、俺以外に麗華好みの男性が現れて、そして麗華の性癖に付き合うというような人と麗華が出会った場合、ただ『氷室麗華がもし告白して来たんなら何でもいう事を聞いてやるよ』という理由で付き合う事になった俺は簡単に捨てられてしまうのでは? と日に日にその不安は大きくなって来くる。


 その為今日、麗華が一緒に登校しようと言ってくれた事に対しては『麗華と付き合っている事がバレてしまう』という恐怖も当然あったのだが、それよりも『氷室麗華は既に俺の女だ』と周りへアピールできるという感情の方が大きかった。


 だから俺は別々に登校する事は提案せず、手をつないで更に周囲へとアピールできるという打算から一緒に登校する事を提案したのである。


 そんな自分が嫌になってくる。 それでも、そうしてでも麗華を手放したくないと思ってしまう程俺は麗華の事が好きになってしまっているのだ。


 そして俺は麗華と恋人繋ぎのまま学校まで登校するのであった。




 私はあの日、私のご主人様である犬飼祐也の幼馴染が私へ突撃してきたその日から、不安で胸が押しつぶされそうになっていた。


 だからこそ昨日は羞恥心を押し殺してでもあんな好意をご主人様にさせてしまったのだが、今になって昨日のアレはやり過ぎたかもしれないと後悔する。


 そもそもご主人様と付き合うようになったきっかけはご主人様へ、言質にもならないような『氷室麗華がもし告白して来たんなら何でもいう事を聞いてやるよ』という誰が聞いてもその場のノリで言った冗談だと分かるご主人様が言った言葉で脅して、更にそれだけではなく失恋して傷心しているであろうご主人様の心に付け入るようにして付き合い始めたのである。


 しかもそれが只の恋人通しであればまだここまで不安にはならなかったのかもしれないのだが、今のご主人様はわたしの変態行為に半ば強引に付き合ってくれているという状況なのである。

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