第70話 何かとても柔らかい物
その結果俺は自分の性欲が表に出てこないように無心になった結果、気がついたら全てが終わっており、途中から記憶が無くなっていた。
なんと勿体無い事か。
「そ、それじゃぁ……散歩を再開しようか」
「そ、そうね……っ」
そして俺と麗華は気まずい空気を纏いながら深夜の散歩を再開する。
その時、俺たちはある意味で一つのお大きな課題をクリアしたことによって気が緩んでしまっていたのであろう。
その事を知ったのは翌日の学校に登校した時であった。
◆
「ほら、起きなさいっ」
何故だろう? 麗華の声が聞こえてくるではないか。
確か俺は昨日あのと麗華と一緒に深夜の公園を一周してから帰宅して、麗華とは家で別れて帰宅したはずである。
にも関わらずなんで今麗華の声が聞こえるのだろうか? そうか。 これは夢なのだろう。
であれば麗華の声が俺に起きるように言いながら身体を揺すってくる理由も合点がいくというのもだ。
そこまで考えた俺は、覚醒しかけた意識を今一度夢の世界へと戻ろうとしたその時、再度俺の身体が揺さぶられるではないか。
「早く起きないと遅刻するわよ? 起きなさい。 起きないとキスするわよ?」
そして聞こえてくる麗華の声。
しかも俺がこのまま起きないとキスをしてくれると言うではないか。
これは逆に願ったり叶ったりではないのか?
というわけで俺はまだ目を覚ます訳にはいかなくなった。
さぁ、夢の中の麗華よ。 夢の中だというのに一向に姿を現してくれないの夢の中のシャイな麗華よ。 言葉通りキスをしてもらおうではないか。
「まったく、私は確かに『起きないとキスをする』と言いましたからね。 だからご主人様に勝手にキスをする訳ではないわ。 むしろこれは起きないとキスをすると言われて起きないということは逆に『キスをしても良い』というご主人様の答えという事なので私は何も悪くないし、これは合意の上でのキスということよねっ!」
そして夢の中の麗華は何やら長々と言い訳をし始めるのだが、どこら辺が『逆に』なのか教えてもらいたい。
あと、寝ている相手に『起きなければキスをすると言って起きないのだから合意』というのは流石に無理がありすぎやしないか?
流石夢の中の麗華である。
普段は聡明で学校でもテストの結果は常に上位一桁をとっている麗華がこんなガバガバな考えをするわけが…………するわけが…………あれ? 俺の記憶の中の麗華は常にガバガバな論理しか言っていないような……?
そんな事を思っていると、俺の唇に何かとても柔らかい物が押し当てられるではないか。
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