第68話 爆弾を落としやがった

「お、押すぞ……っ」

「あぁ、なんだかいけないことをしているようで興奮するわね」


 そして俺は麗華に一度声をかけてから『ビデ』のボタンを押す。


「んん……っ。 ……んっ。 …………んぁっ」


 すると便器からノズルが伸びる音が聞こえ始め、止まったかと思った次の瞬間に勢いよくノズルから水が出る音と、麗華の大事な部分の汚れを洗い落として便器の水面に落ちる水の音、それに加えて麗華の荒い息遣いと、偶に声が出るのを我慢するような息遣いが多目的トイレの中を満たず。


 その光景に俺は本日何度目かになる新しい性癖の扉が開きそうになるので『俺は無関心、俺は無関心、俺は興味ない、俺は興味ない』と心の中で唱えながら必死に扉が開くのを耐え時のぐ事数十秒。


 やっとノズルから水が出るのが終わったらしく水の音が収まり、そしてノズルが戻っていく音が聞こえてくる。


 なんとか耐え凌いだ……。


 そして俺はなんとか新しい扉を開かずに入れた事でホッと胸を撫で下ろすのだが、何か忘れているような気がする。


 しかしながら忘れるという事はその程度の事であろう。


「やっと終わった。 ほら、早くパンツとスカートを履いて散歩に行こうか」

「何を言っているのよ。 まだトイレは終わってないわよ?」

「は? ……ま、まさか大きい方も今からするんじゃなかろうな?」

「何を言っているのかしら。 私のトイレはまだ終わってないわよ?」

「いや、終わっただろ? むしろ終わっていないとすれば何があるんだ?」


 そしてようやっとこの多目的トイレから抜け出してシャバの空気が吸えると思っていたのだが麗華はトイレに座ったままで立ち上がろうとしないではいか。


 あれ? 今さっきと同じ光景見たことあるぞ? デジャブかな?


 この時の俺はまだ頭の中でこんな寒いダジャレを言えるくらいには余裕があった。


 しかしながらこの余裕も次の麗華の言葉によって綺麗さっぱり見事に消え去ってしまう。


「まだ大事な部分を拭いてないんだけれども? 拭き方や、トイレ用の紙の使い方など教えてもらってなわよ?」


 そして麗華がとんでもない爆弾を落としやがったのである。


 流石にこれはどうなんだ? と麗華を見ると、やはりというかなんというか麗華本人も物凄く恥ずかしいのか、耳や首元まで真っ赤に染まっているのが分かる。


「流石にそれはヤバくないか?」

「根拠はないけれども大丈夫、ヤバくない至って健康よっ。 だって私がしてほしいんですもの」


 そして麗華は俺の問いに満面な笑顔を見せながら『大丈夫だ問題ない』としか聞こえないと答えるではないか。

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