第60話 躾

「いや、やらないよ? やらないしさせないよ? 公園にはトイレがちゃんとあるんだからトイレで用を足させるよ? いくら何でも流石に」

「…………え?」

「…………え?」


 流石に冗談かと思ったのだが、俺の本能が『ここは否定しないと大変な事になるぞっ!!』と訴えかけてくるので俺は本能に従って否定しといて良かったと心から思う。


 まさか、誰が本気で夜の公園の茂みなどで用をたすと思うというのか。 しかも麗華ほどの絶世の美女、それもクール系の美女がである。


 ある程度麗華がド変態である事は知っているつもりだったのだが、まさかここまで変態とは流石の俺でも予測できなかった程である。


「…………どうしてもダメかしら? やはり公園にそのまま用を足してこそプロのペットというかなんというか……分からないかしら?」


 いや、分からねぇよっ! そもそもプロのペットって何だよっ!? 聞いたことないんですけどっ!?


 そんな俺の心境など知ってか知らずか麗華は上目遣いで目をキュルンと潤ませおねだりの表情をしてくるではないか。


 その麗華の表情が可愛くて思わず『分かったよ。 麗華がしたいのならばそうしよう』と折れてしまいそうになるのだが、流石に今回ばかりは首輪やリード、部屋の中で散歩やスパンキングなどとは訳が違うため何とか必死に耐える。


 さて、どうしたものかと悩んでいると俺は一つの提案が頭に浮かぶので早速その提案を麗華に使ってみる事にする。


「しかし麗華よ」

「いきなり改まってどうしたのかしら? ご主人様」

「まぁ、聞け。 ペットの下事情についてどう思う?」

「どう、とは? 今も昔もしたい時に出して大きい方はご主人様が拾って帰るというイメージなのだけれども、それがどうしたのかしら?」

「なるほどなるほど、麗華もまだまだだな」

「まったく、一体何を言いたいのかしら? 勿体ぶらずに早く教えなさいよ」


 そして麗華は俺から『まだまだ』と言われて少しだけムッとした表情をする。 そんなムッとした表情も普段のクールな麗華とのギャップで可愛く思えてくる。


「まったく、分かったよ。 ペットだからこそトイレの躾をしないといけないんじゃないのか?」

「と、トイレの…………躾……?」

「そうだ。 トイレの躾だ。 ペットだからこそご主人様が指摘したトイレに用を足してこその優秀なペットというやつではないのか?」

「うぐ…………っ、た、確かにそう言われればそうね」

「そうだろうそうだろうとも」


 そして何とか麗華は分かってくれたようで俺は内心ホッとする。


「それでどうやって私にトイレを躾けてくれるのかしら?」

「…………はい?」

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