第59話 どうせなら犬のように
しかし俺はそれでも、引き返すのではなく一歩前に進む事を選ぶ事くらいには俺は麗華の事を好きになりかけているのだろう。
ここまできて麗華の事が好きだと言いきれないない辺りは、少し前まで好きだった幼馴染の事を考えてしまうからであり、いくらフラれたからと言っても少し前まで好きだったのに麗華から好意を寄せられただけで簡単に麗華の事を好きになってしまったら、なんだかそれはとても軽い気がして嫌だと思ってしまう。
相手のことを好きになるのに時間なんか関係ないというのは理解しているつもりなのだが、どうしても前の恋愛感情を出して、そこで相手の事を好きだった時間の長さを比べてしまうのである。
このままじゃダメだという事は分かってはいるんだけど……いるんだけどなぁ……。
「どうしました? ご主人様」
「いや、なんでもない。 少し考え事をしていただけだ」
「ご主人様がなんでもないと言うのであれば良いのですけれども、もしご主人様一人で抱えきれなくなったその時は私に打ち明けてほしいのだけれども?」
「あぁ、その時は麗華を頼るよ」
「えぇ、その時は私の揉みごたえがある胸を貸してあげますよ」
いつの間にか俺は熟考していたようで、麗華に心配されてしまう。
しかしながら、その気遣いが今の俺にとっては何よりもありがたく、心が少しだけ軽くなった気がした。
そして俺は麗華へ「ありがとうな」と告げると頭を犬にするように少しだけ乱暴に両手でわしゃわしゃと撫でてあげる。
すると麗華はとても嬉しそうに目を細めて、気持ちよさそうな表情で撫で受けされながら少しだけ俺の方へ体重を傾け、俺の胸にもたれかかって来るではないか。
なんだかんだと悩んではいたものの、俺の胸に麗華がもたれかかっている今この時は確かに幸せなんだと言う事がわかる。
「ありがとう麗華。 麗華のおかげでかなり吹っ切れたよ」
「お役に立てて何よりだわ」
これは、セラピードッグならぬセラピー麗華と言っても過言ではないだろう。
それを言うと調子に乗りそうなので決して本人には言わないのだが。
「それじゃぁ、深夜の散歩を再開しようか」
「そうね、そうしましょうっ!! あ、おしっこはどうしようかしら? どうせなら犬のように地面にしてしまおうかしら?」
「いや、そこまでしなくて良いからなっ!? 変に完璧を求める必要はないから頼むから公園にあるトイレを使用してくれっ!!」
「そうね、そういうプレイは私たちにはまだ早いわね。 確かにいきなりハードルを上げてやったところで上手くいかない可能性もあるでしょうし、少しずつ慣れていきながらおいおい、私たちのペースでやっていけば良いわよね」
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