第55話 キラキラした表情でおねだりをしてくる麗華


 だったら、当初の考えからは逸脱してしまうのだが、氷室麗華に奪われるくらいならば私の考えなどどうでもいい。


 奪われるくらいならば私から告白するのも辞さない覚悟である。


 流石に、つい最近私の事が好きだと告白してきたのだからその相手から告白されればいくら氷室麗華からアタックされて今現在良い感じであるとしても私の方へ気持ちは傾くだろう。


「そう言ってられるのも今のうちよ、氷室麗華」

「あらそう? だったら見せてもらおうじゃないかしら」

「泣いて後悔しても知らないから」


 そして私は氷室麗華の、私を舐め腐ったその態度を見て祐也に告白する決心をするのであった。





 何故だろう?


 いつものように俺の部屋で麗華と一緒に過ごしているのだか、今日の麗華はいつも以上に俺にベタベタとくっついてくるではないか。


「なぁ、何かあったのか?」

「何もないわよ? 急にそんな事を聞いてきてどうしたのかしら?」


 明らかにおかしいので麗華に直接聞いてみるのだが帰ってきた言葉は『いつも通り』という言葉であり、結局麗華に何があったのか分からず終いである。


「まぁ、今は言いたくないのであればそれでも良いけど、一人で抱えきれなくなったら隠さずに俺に吐き出してくれよ? これでも一応俺は麗華の彼氏でありご主人様なんだから」


 そんな麗華に俺は柄にもなく『俺は麗華の彼氏でご主人様なんだから耐えきれなくなったら吐き出してほしい』と告げる。


 言っている最中はそこそこ恥ずかしい程度だったのだが、言い終えた後から津波のように恥ずかしさが増していき、正直今俺は麗華の顔を直視できないほどの羞恥心に襲われている。


「ねぇ、ご主人様……っ」

「ど、どうした麗華?」

「先ほどご主人様が言った言葉をもう一度言ってちょうだいっ!! 今度は録音するからっ!!」


 そして麗華はそんな俺の心情など分かるはずもなく、あの思い出しただけで顔から火が出てきそうな程恥ずかしい言葉を『もう一度言ってほしい』と目をキラキラさせながら言ってくるではないか。


 これほどキラキラした表情でおねだりをしてくる麗華はスパンキングや散歩を要求してきた時以来である。


「いや、流石にもう一度あの言葉を言うのは恥ずかしすぎるから嫌だ」

「で、ではっ『これでも一応俺は麗華の彼氏でありご主人様なんだから』という部分だけでももう一回言ってちょうだいっ!!」

「いや、だからそれも恥ずかしいから嫌だって」

「言ってくれないのならば私は今から叫んで、突撃してきた妹ちゃんや母様に有る事無い事嘘八百言うわよっ?」

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