第54話 この女狐が
「いいえ、違うわね。 私の祐也よ。 そして貴女は祐也を捨てた。 それがどんな理由であれ、貴女が祐也を捨てた事には変わりないわ」
「違うっ!! 私は祐也を捨ててなんかいないっ!!」
そして私が『祐也は私のもの』と牽制の意味で麗華に言うと、麗華は『私の祐也』と返すではないか。
しかも麗華はそれだけではなく、私に向かってあろうことか『貴女は祐也を捨てた』と言うではないか。
この麗華の断定するような口ぶりからも、間違いなく麗華は私が祐也に告白をされて祐也をフっているところを見ているのであろう。
そして麗華は私にフラれて傷心した祐也を甘い言葉で誘惑して横から掻っ攫っていったのだ。 きっとそうに違いない。
「あら? 何が違うと言うのかしら? 祐也が言うには貴女にフラれたと言っていたように思うえるのだけれども、今更になって貴女がフった祐也になんのようかしら?」
そして麗華は自分で盗み見たのではなく、あくまでも祐也から聞いた体で話しかけてくるではないか。
こうする事によってあくまでも『私は傷心した祐也を横から掻っ攫った訳ではなく、あくまでもたまたま傷心した祐也と出会った結果親しくなっただけだ』とでも言いたいのであろう。
この女狐が……っ。
しかし私はこんな女狐に負けるわけにはいかない。 祐也をこの女狐の毒牙から助け出してあげなければっ!!
「フっていないっ!! 確かに表向きはフっているように見えたかもしれないし、祐也本人もフられたのかと勘違いをしたのかもしれないけれど、私は本当の意味で祐也をフっていないっ!!」
「あら? フったけどフっていないとでも言うのかしら? 理解に苦しむわね。 それに貴女の考えはどうあれ祐也は貴女に振られたのだと思った。 それが全てではなくて?」
しかしながら、やはり一度祐也をフったと言う事実がある以上麗華を言いまかすことは厳しいと思わざるを得ない。
ほんと、なんで私はあの時祐也からの告白をフってしまったのだろう。
こんな事になるのだと分かっていれば私は絶対にあの時祐也をフるなんて事しなかったのに。
そして今頃私と祐也は登下校手を繋いだり、学校でもイチャイチャしたり、休日にはデートだってしていたかもしれない。
そう思えば思うほどあの時の私を張り倒してでも告白を受け入れるべきだったと後悔してしまう。
しかしながらまだ祐也本人に聞いたわけではないのだ。
であれば私にも勝機があるかもしれない。
祐也はつい最近まで私の事が好きだったのである。 であれば今も祐也は私に気持ちがあるかもしれないのだ。
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