第51話 それは難しい問題ね
そう言うと麗華は興味津々といった表情で俺の答えを待っている。
そんな表情の麗華もまた愛らしくて、少しだけ苛めたやりたいと思ってしまう。
「うーん、そうだなぁ」
「…………っ」
「どれが一番美味しいかなぁ……」
「…………っ!」
「全部美味しかったしなぁ」
「…………っ!!」
「どれが一番かと聞かれれば、どれも美味しかったから困るなぁ」
「もうっ!! 早く言いなさいよっ!! 絶対にわざとでしょうっ!?」
そして俺はひたすらどれが一番美味しかったのかを引き伸ばすという事をすると、麗華は顔を膨らましながら少し顔を赤らめて抗議してくるではないか。
「やっば、麗華はやっぱ可愛いわ」
「か、かわ……っ!? もうっ!! そ、そんな言葉では騙されないわよっ!!」
そして、そんな麗華を見て可愛いと思ったのだ、思わずその間情を口にしてしまったらしい。
それを麗華は聞き逃すわけもなく、次の瞬間には顔を真っ赤にしてポカポカと俺を軽く殴りながら抗議してくるのだが、やはり口元は隠せないのかニヨニヨとしているのが見え、それでまた俺は麗華の事を可愛いと思ってしまう。
これが、麗華を可愛いと思ってしまう無限地獄、または無限ループというやつかっ!?
このままでは俺は間違いなく麗華を心の底から異性として好きになってしまうではないか。
しかし、何で俺は麗華の事を好きになるのを頑なに拒んでいるのだろうか? 今思えばどうでもいい理由で拒んでいるような気がする。
そう思うのと共に俺の中で『もう良いではないか。 麗華を好きになることで何か悪い事があるのか? 何もないだろう?』と問うてくる俺がいるわけで。
「そ、それで……どれが美味しかったのか良いかげん教えなさいよ」
「あ、あぁ。 ごめんごめん。 正直言ってどれも美味しくて選べないというのは本心なんだが、強いて一番を選ぶとしたらそうだなぁ……このピーマンの肉詰めとかはかなり好みの味だったかも」
「分かったわっ!! これから毎回全てのおかずをピーマンの肉詰めにしてあげるわねっ!!」
「いや、流石に毎回おかずがピーマンの肉詰めというのはやめてほしいというか、流石に飽きるわ。 せめて週一回、二個くらいにしてもらえれば」
「なるほど……分かったわ」
「ちなみに明日は俺が麗華の分のお弁当を作ってくるのだが、嫌いな食べ物とかないか?」
「ご主人様が作ってくれるのならばご主人様が弁当を作るときに出た生ゴミでも私にとっては最高のお弁当になるから、それは難しい問題ね」
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