第48話 やる事やってる

 私の勘が正しければ麗華さんはかなりの変態であると私は思っている。


 それこそここ最近変態さを隠そうとしなくなった兄貴よりもさらに頭一つ上のレベルの変態なのでは? と、兄貴との約束よりも自分の性壁を取る事を判断して兄貴の使用済み洗濯前パンツを手に入れた麗華さんだからこそそう思わざるを得ない。


 そして今あの兄貴が壁一枚向こうで緊張しているのである。


 これは麗華さんが本気を出そうとしおり、兄貴がたじろいでしまっているのではなかろうか?


 これは盗聴、ではなくて万が一兄貴が麗華さんに襲われて助けを求めた時にすぐにでも駆けつけて兄貴を助けてあげられるように私はより一層集中してコップを使って壁から漏れる音に聞き耳を立てる。


 すると隣から麗華さんの喘ぎ声にも似た声が聞こえてくるではないか。


 あぁ、ついに始まったのかもしれないっ!! これはもう妄想が捗る……ではなくて、兄貴をいつでも助け出せるように兄貴の部屋の中で何が行われようとしているのか想像しなければっ!!


 これは決していやらしい気持ちや、これをネタに発散しようなどとはこれっぽっちも思っていないし興味なんて無い。 いや少し、ほんのちょっとはあるかもしれない。


 だけれどもこれは決して邪な感情から盗聴するのではなくて、兄貴の為の盗聴なのである。


 そんな事を自分に言い聞かせながら盗み聞きをしていると麗華さんの色っぽい声の他に柔らかい何かを『ぱんぱん(たまにパシンッ)』と叩くような音が聞こえ始めるではないかっ!!


 え? これってっ、まさかっ!? やってるっ!? やってるでしょっ!! 絶対にあの音でしょっ!! 


 こうしちゃいられないわっ!! これは実際にこっそりと見に行かないとっ!!


 そう思った私は善は急げとばかりに音を立てずにピッキング用の道具を持ち出して兄貴の部屋の扉の前まで行くと静かに鍵を解錠して中をそっと覗いてみる。


 そして、直接聞こえてくる麗華さんの色っぽい声に『ぱんぱん(たまにパシンッ)』という生の音とともに嗅いだ事の無い独特な香りとムワッとした重たい空気。


 絶対に今二人はやる事やってるっ!!


 そう思ってさらに扉をゆっくりと開いて部屋の奥を覗いてみると、そこには四つん這いになった麗華さんのお尻を軽く『ぱんぱん(たまにパシンッと少しだけ強く)』と叩いている兄貴の姿と、叩かれる度に色っぽい声を出す麗華さんの姿が目に入ってくるではないか。


 その瞬間私は兄貴に騙されたのだという事に気付かされる。 きっと今の私はまんまと罠にかかったネズミなのだろう。

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