第43話 一番安全

「そうね、確かにそういうイメージはあるわよね……」

「そうか……やっと分かってくれたかっ」


 話が通じないだろうと半ば諦めていた分、なんかちょっと感動してしまいそうになる。


 麗華も何だかんだで俺のペットになりたい訳で俺とSМプレイをしたい訳ではない事にようやっと気付くことが出来たのだろう。


 それと共に『どうせ話してもなんだかんだと押し切られる』と思っていたのが『根気強く話していけば分かってくれるかも』という麗華に対するイメージが変わったのも大きい。


 そう。 俺達はペットと主という関係の前に一応恋人同士であり言語で意思疎通ができる人間なのだ──


「でも、身体に当てない場合でも危険な行為を止めさせるために鞭を使って出す音をで躾として使う場合もあるから鞭を使って躾けるというのは珍しいものでもないのよ? そしてこれは人間の身体を叩く様に作られた鞭、言うなれば人間をこの鞭で叩いて躾するために作られた道具と言っても過言ではないわっ! ならばその道具に沿った使い方が一番安全であるという事だわっ!!」


 ──そう思っていた俺の想いは、麗華の熱弁によって無残にもかき消されてしまう。


 そして『過言だよっ!』と突っ込みを入れる寸前のところで止める事が出来た俺を誰か褒めてほしい。


 もしそこで麗華の言い分を否定するような事を言ってしまった場合は小一時間は間違いなく『いかに過言ではないか』とう麗華による力説(暴論)が始まってしまっていただろう。


 ここは相手の矛盾点を突くのではなく『俺自身は乗り気ではない』というのを伝える方が得策であろう。


 さすがに自称『できるペット』と言っているくらいなのだからご主人様である俺が困っていると分かれば麗華も引き下がってくれるだろう。


「そ、それはそうかもしれないが……流石に人を、それも麗華を鞭で叩くというのは良心の呵責というか、なんというか、とにかくやってはいけないような事をしている気分になってやりたくないんだが?」

「なるほど、そこまで言われたのならば私も折れるいかないわね。 分かったわよ」

「おぉ、分かってくれたかっ!!」

「鞭はちょっとまだ・・早かったようね。 その点は私もご主人様の事を考えず自分本位に行動してしまった事を謝るわ。 ごめんなさい」

「お、おう。 分かればいいんだ。 分かれば」


 なんかまだ少し引っかかる部分はあるが、とりあえず今は鞭で麗華を叩くという行為を免れただけ良しとしよう。


「そして私も鞭よりもご主人様の手のひらで私のお尻を叩かれたいと、ご主人様に指摘されて気付くことができたわ」

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