第42話 鞭は人間用
「え? いや、痛いだろ……流石に」
「大丈夫よっ。 それに今日の私は馬の気分なのだからつべこべ言わずに私を躾けてちょうだい。 それに馬の尻の皮膚は厚いからムチで叩かれても痛くないというらしいじゃない」
「いや、それ馬の尻の話で人間の尻の話では無いだろっ?」
もう滅茶苦茶である。
俺の知っている麗華はいつも学校で見る凛として勉強もでき、地頭もよければ美人というまさに才色兼備という女性であるのだが、どうも俺と二人の空間となるとその凛とした表情はだらけきってしまい無防備な(よく言えば信頼しきっている)表情で、知能が五歳くらいにまで低下してしまったのかと思ってしまう程の穴が空きまくり矛盾しまくりの感情優先のことをさもそれが通用すると信じて疑わないキラキラした目で毎回俺にお願い事をしてくるのだが、それでも今まではギリギリなんとか『それくらいならば』と思えるような内容であった。
しかしながら今回の麗華のお願いは鞭で麗華を叩くことであり流石にこればかりは『仕方ないな』とはならない。
「大丈夫よ。 確かに馬と人間のお尻の皮膚の厚さは違うのだけれども、今私が持っている鞭は人間用ですもの」
そして麗華は自信満々にそう告げる。
そうじゃない。 そういう事じゃ無いんだ。 馬用だとか人間用だとかそこじゃ無いんだ。
そもそも鞭で人を、それも女性を叩くというのが俺には無理そうだと言っているのであって、麗華が今手に持っている鞭が馬用なのか人間用なのかなんてのはどうでも良いのだ。
そう言ったところで麗華は知能を低下させた内容で反論してくるのでる。
もうここまで毎度毎度となるともしかしたら『バカのふりしたら論破されても押し切れる』とでも持っているのだろうか?
いや、間違いなく思っていそうなので笑えない。
「三日前にクラスメイトから数ヶ月前にウマ姉さんというアニメやアプリが流行っていたと聞いてから、犬や猫もいいけど馬も良いかもと思い、流石に馬用は皮が剥げたり水膨れになったりそもそも痛すぎたりするらしいので、人間用の鞭を速攻でママゾンストアのサイトから購入したやつが今日届いたんですもの」
そして聞いてもいないのになんで今日は馬に成ってみたいのかという理由を勝手に喋るではないか。
しかしながらいくら麗華が馬になってみたいと力説しようが俺は全くもって一ミリも理解できな無いのだから今回ばかりは諦めて欲しいところである。
「いや、流石に鞭はちょっとハードルが高いというかペットの範疇を超えてこれもうSMの領域というか……」
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