第37話 仕方のない事

「…………そこまで言うなら信じてあげるわ」


 そう麗華は渋々といった感じで俺の言葉を信じてくれるみたいなのだが、先ほど俺が言った『そもそもこんなに身体を重ね合わせたりしているのは麗華しかいないからな』という言葉がよほど嬉しかったのかそっけない態度とは裏腹に口元はにやけてしまうのを抑えきれておらずニヨニヨしてしまっているのが見える。


 その事は麗華自身も分かっているらしく、口元を見られないように俺の胸へと顔をうずめて口元を隠す。


「すぅぅぅぅぅぅぅ…………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 そして俺にバレていないと思っているのか麗華は顔を俺の胸にうずめた状態で俺の体臭をこれでもかと堪能し始めるではないか。


 麗華が変態であることは既に知っているため別に俺の体臭を嗅がれること自体は今更驚きはしないのだが、だからと言って俺も年頃の年齢である。


 体臭が臭くないかどうか気になってしまうのは仕方のない事だろ。


「んふっ……ふんふん、すーはーすーはー……んふふふっ。 何度嗅いでもやばいわねこれ……もう一日一回はご主人様の匂いを堪能しないと禁断症状が出てしまう身体になってしまったわ……」


 しかしながら麗華は俺の不安などお構い無しに俺の体臭を堪能し、恍惚な表情をしながらまるでやってはいけない違法なものみたいな感じで俺の体臭について喋るではないか。


 てか、禁断症状って流石にそこまで行くと麗華が変態などではなく俺の体から変な物質が出てしまっているのでは? と思わず思ってしまう。


「臭くないか?」

「むしろ良い匂い過ぎてヤバいくらいだわっ」


 しかしながら一度気になってしまうとずっと気にしてしまう為俺は麗華に単刀直入で聞いてみると、麗華は食い気味で『良い匂い』だと返してくるではないか。


 その麗華の表情はとろんとしており、そんな無防備な表情を見せされると俺の中の悪魔が『今までお前は十分に我慢してきたよ。 でも流石にもう我慢する必要はねぇだろ。 襲っちまえよ。 麗華もそれを望んでいると思うぞ』と囁いてきて、その悪魔の声に唆されて襲ってしまおうかと思ってしまいそうになるのをグッと堪える。


 流石に、無防備すぎるだろ毎回っ!! とは思うものの何度『せめてスキンシップをもう少しだけ抑えてくれ』と言ったところで焼石に水で改善はされないのだから俺はもう諦めている。


 それでも幸せそうな麗華を見ると全て許せてしまうのだから不思議である。


 そう考えてしまう時点で俺も麗華に毒されてきているな、と思うのであった。

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