第34話 イチャイチャ

 それはそれとして今は置いておくとして、今現在の問題は目の前の麗華をどう扱うかという事である。


 目の前にいる麗華は猫耳のついたカチューシャをつけてゴロゴロと鳴きながら床に座っている俺の胸に顔を擦り付けていた。


 正直いって可愛く無いわけがない。


 学校のマドンナ的存在の麗華にそんな事をされて可愛くないと思う人はまずいないだろう。


 さらにその麗華がまるでベタ慣れした猫の如く俺の胸に擦り付けてくる姿は、俺しか知らないという優越感も相まって、手放したくないとすら思える程には可愛いと思ってしまう。


 野生動物に餌をあげる行為は中毒性が物凄く高いと言われているのだが、その理由は、本来懐くはずのない野生動物が自分だけに懐いている特別感、そして自分がいなければ生きていけないという優越感から来るものだという。


 その話を聞いた時は『ふーん、そんなもんか』と流していたのだが、その中毒性の高さを身をもって体験している今ならば激しく共感していた事だろう。


 しかしながら、その可愛らしさや優越感に特別感といったものを台無しにする麗華の性癖が俺が麗華という異性にハマってしまうのを寸前のところで食い止めているというのが現状であった。


 このまま麗華に惚れてしまったらどれだけ楽だろうか? と考えたりもするのだが、その度に麗華の性癖に自分はついていけるのか? ドン引きしてしまいやしないだろうか? という不安も同時に感じてしまうのである。


 もちろん今まで麗華の行動に引いてしまう事はあるのだがそれを差し引いてでも麗華個人の可愛らしさが勝っている中途半端な立ち位置が、俺と麗華の関係を俺自身いまだに受け入れられていないのだろう。


 そんな麗華はというと、なぜか俺の部屋に入って来るやいなや圭介に敵対心を剥き出しにしてこうして俺にペットとしてアピールをしているのである。


 はっきり言って意味が分からない。


 圭介に敵対心を抱くのも、その結果俺にペットとしての可愛らしさをアピールするの意味が分からない。


 麗華は何を圭介と張り合おうとしているのか?


「むぅー、こんなに可愛らしい彼女件ペットがいるにも関わらず教室で東城圭介とこないだからイチャイチャイチャイチャとクラスメイトたちに見せつけてっ!!」


 そして麗華は、俺は自分のものだと証明する為に自分の匂いを俺につけるかの如く、今度は顔だけではなくて身体全体で俺に擦り付けてくる。


 ちなみに麗華のこの行動はもはやいつもの事になりつつあるのだが、今日に限ってはいつもよりも更に激しく擦り付けて来る。

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