第28話 わんっ!

 そして俺に首輪とリードを付けてもらった麗華は鼻息荒く大満足といった感じでとても嬉しそうにしている。

 

 その姿を見るとなんだかこっちまで嬉しくなってきそうなのだが、その後に続く麗華の言葉によって俺は目の前の美女の性癖がド変態である事を思い出す。


「え? なんて?」

「外に出て散歩してくださいとは言わないわ。 でも、せめて部屋の中だけでもこう……ご主人様が私の首輪に繋がっているリードを持ちながら部屋の中を周って欲しいのだけれども、駄目かしら?」

「うーん…………そうだなぁ……」


 俺は麗華のお願いをきいてあげるかどうか悩んでしまう。


 麗華に首輪とリードを付けるまでは良い。 誰にも見られていないから俺に何か不利益が生じるわけでもない。


 それはこの『部屋の中で散歩の真似事をする』という事だって同じで、ここは俺の家の部屋である為クラスメイト達に見られる等と言う心配もないので俺に何か不利益が生じるわけでもない。


 そうだと分かっているのだがそれをしてしまうと前の俺にはもう戻れなくなってしまうような、そして何かは分からないのだが大切な何かを失ってしまうようなきがしてしまうのである。


「首輪とリードを付けたのならば、そのリードをもって少しだけ部屋の中を歩いても自然な流れだと思うのだけれども、何をそんなに悩んでいるのかしら?」


 今現在学校指定の制服へに着替えている麗華の首には首輪とリードが付いており、それら首輪とリードを付けたのは俺で、そのリードは今俺が握っているだけでもかなりヤバいシチュエーションなのである。


 流石にこれ以上となると、なんというか、人として超えてはならぬ一線というか、それに近いものを感じてしまう。


「まったく、しようがないご主人様ね。 でしたら私にも考えがあるわ。ご主人様がこの部屋で私をペットの如くリードを持て歩いてくれないというのであれば、いまから私は下の階へ行きお義母様おかあさま義妹様いもうとさまへ挨拶しに行かせてもわうわ。 勿論、首輪もリードもそのままで」

「やらせていただきます」


 しかしながら、男には引き返せないと分かっていても前に進まなければならない時ってあると思うんだ。


 それに俺はまだ母や妹からゴミ虫を見るような目で見られると思うと、一日と耐えられない自信がある。


 そして俺は麗華の母や妹の言い方に少しだけ引っかかりつつも、麗華のお願いである『リードを持って部屋の中を歩く』という事を承諾する。


「じゃ、じゃぁ……歩くぞ」

「わんっ!」

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