第26話 意外とご主人様は大胆
まさか、親友だと思っていた圭介が俺のうんこよりもクラスメイトの色恋沙汰の方が大切だとは思わなかったぜ。
そして、氷室麗華に彼氏が出来たという噂は瞬く間に学校中に広まって行き、休み時間の度にその噂が真実かどうか、そしてその勢いで告白する者で溢れ返るのであった。
◆
「なぁ、その手に持っている物は何だ?」
「え? 首輪とリードだけれど? 今日はご主人様に直接つけてもらおうと思ってるのだけれども」
地獄かと思えた一日を何とか乗り切り放課後。
俺は今日一日中、麗華がうっかり口を滑らせてしまうのじゃないかと生きた心地がしなかった。
そしてこれからも毎日こういう日常が続くのかと思うと想像するだけでストレスで頭が禿げそうである。
今日一日だけで麗華に告白して絶対零度の如く冷たい言葉と冷たい態度でバッサリと切り捨てられた男性の数は二桁を超えたあたりから俺は数えるのを止めた。
もし俺が麗華の彼氏だとバレたら、夜道刺されるのではないか? とすら思えてくるし、あながちありそうだから笑えない。
そんな俺達は放課後、流石に学校では危険だという事で最早家族公認となっている(そこに俺の決定権はない)俺の家に集まっていた。
因みに『ここまで良くバレずに来れたな? 普通こんな事があれば麗華の彼氏を特定しようとつけられていたんじゃないか?』と聞いてみると『一回帰宅し、つけられないように変装した上に細心の注意を払って自転車でここまで爆走して来たわ。 それに私を尾行してきた奴らは私に合わせて徒歩と電車でしょうし、自転車で移動すれば万が一私の変装に気付けたとしてもまず追いかけるのは無理ね そして何よりもご主人様に一秒でも早く会いたいもの』と言うではないか。
それを聞いて麗華がまるでツールドフランスに行くようなフル装備だった理由が分かった。
恐らくこの格好は変装も込みなのだろう。
しかし、当初はあまりのギャップに違和感しかなかったのだが慣れて来ると普通に似合っていると思う辺り麗華のポテンシャルの高さが窺えて来るのだが『あと、普段は自転車に乗りながら、ご主人様に自転車で引かれながら散歩している妄想をすると同時に、その妄想で悶々とした気分を運動する事によって発散できて一石二鳥なのよ』という言葉で台無しであった。
そんな麗華は今、脱衣所で私服に着替え直すと、期待の籠った眼差しで俺を見つめ、そうするのがさも当然という態度で俺に首輪とリードを渡そうとしてくるではないか。
「なんかもう、キャラが大渋滞を起こしてどこから突っ込んで良いか分からねぇわ……」
「あら、私に突っ込みたいだなんて……意外とご主人様は大胆ね」
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