第19話 安いものだろう

 そう上目遣いで話す麗華はとんでもなく可愛くて、思わずころっと『うんそうだね。 じゃあ散歩行こっか』と言いそうになるのをグッと堪える。


 しかしながら普段クールビューティーな麗華が俺にだけは甘えてくれるというのは、こう何というか、言いようの無い優越感のようなものを感じてしまうのは男ならば致し方ない事だろう。


「どうしてもダメかしら? 今までずっと、こんな性癖では彼氏なんか一生できないのだろうと思っていたのだけれども、こうして私の性癖を理解してもらっている彼氏ができた今やっぱりペット扱いされたいと思ってしまうのは、彼女が彼氏に甘えるのはダメな事なのかしら?」


 そしてなおも麗華はその反則級に可愛らしい顔で俺にペット扱いしてもらう事をせがんで来るのだが、俺は一度たりとも麗華の性癖に理解を示すような事は言っていない。


 なので捏造はやめていただきたい。


「……はぁ、分かったよ。 首輪にリードをつけるだけだぞ? 散歩とかはしないからな? 校舎裏からも移動しないからな?」

「ありがとう、ご主人様っ!!」


 しかしながら麗華も今までかなり自分の性癖で悩んできたというのは分かるし、少しくらいならば麗華の性癖にも付き合ってあげても良いのかな? なんて思ってしまい条件付きで了承してしまう。


 流石に校舎裏限定であれば大丈夫だろう。 そもそもこんな所を麗華と二人でいるのがバレた時点で俺の平穏な学校生活は終わるのである。


 どの道平穏な学校生活が終わるのならば麗華に首輪がついてリードがつながっていようがいまいが関係ないと考えた結果でもある。


 頭から全て否定するのではなく、妥協できる箇所があるのならば妥協するべきだと俺は思う。


 その結果麗華の笑顔が観れるのならば安いものだろう。


 ちなみに俺が首輪とリードをつける事を了承して、麗華が首輪とリードをつけるまでにかかった時間は三十秒もかかっていなかった。


 こいつ、こなれてやがる……っ。


 おそらく毎晩自分に首輪をつけて性欲を発散していたのであろう。


「あぁ……やはり首輪というものは良いものですね。 こう、身体の奥底からゾクゾクとして興奮が……あぁ……はぁはぁ……ご主人様、私、発情してしまったかもしれません」

「……さよで」


  そして俺の考察通り麗華は夜な夜な自分で首輪とリードをつけて性欲を発散してしまっている結果、首輪とリードをつける事と制欲を発散することがイコールで強く結ばれてしまい、そういう気分になってしまっているとみて良いだろう。


「ご主人様ぁ……」


 そして、目をトロンととろけさせ、顔は赤く染まった麗華が俺の胸に抱きついてくる。

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