第18話 麗華が自身の心境を叫ぶ

「ではこのロープの輪っかの先端を持ってくれるかしら?」

「まぁ。それくらいならば別に良いけど…………いや、ちょっ待て」


 そして俺は麗華に言われる通り何も考えずに渡されたロープの先端にある輪っかを握ると、それを見た麗華が少しだけ頬を染めながら満足そうな表情をしながらカバンから何かを取り出して首に装着し始めるではないか。


 どう考えてもおかしい。


「はい? 何ですか? 今私は忙しので後にしてもらえますか? 先ほども言った通り祐也様はそのロープの先端にある輪っかを握ってくれるだけで良いので」


 その事を麗華に問い詰めようとするのだが、俺が何かいう前に麗華に反論されてしまう。


 しかしながらやはやりどう考えても突っ込んでくださいという内容であるため問答無用で突っ込む事にする。


「いや、俺がこのロープの先端にある輪っかを握る事は別に良いのだが──」

「でしたらそれで良いのではないのですか? 変に考えずにただ言われた事だけを忠実に行うというのも私は大切な事だと思うのだけれども?」

「──うんそうだね。 だが人の話を遮ってまで自分の意見を押し通そうとするというのはあまり良くないと思うぞ。 それだけ自分の言った言葉の内容が破綻していると麗華自身も理解しているという事なんじゃないのか?」

「ぐぬっ……」

「それで、話を戻すとして……今麗華が自分の首に付けようとしているのは何だ?」

「…………ち……」

「……ち?」

「……チョーカー……?」


 そして俺は麗華が今首に付けようとしている革製の輪っかを指差しながらそれが何か麗華に聞いてみると、しどろもどろになり目線は泳ぎまくり、脂汗は顔から吹き出しつつ『チョーカー』というではないか。


「いや、流石に無理があるだろ……そして俺が今手に握っているのはどう見ても犬用のリードだよな?」


 むしろリードに関しても『ロープ』と言い張れば何とか押し切れると思っているのかと思うと少し頭が痛くなってくる。


「だ、だって仕方がないじゃないっ!! 私たちは恋人同士なのに恋人らしい事この一週間何もやってないのよっ!? 少しくらい恋人らしい事をしても良いじゃないっ!!」


 そしてついに観念したのか麗華が自身の心境を叫ぶ。


「いや、それ恋人らしい事をしていないのではなくて、ペット扱いされていないの間違いじゃないのか?」

「だ、だって……恋人ができたらペット扱いもしてくれると思ってたんだもの……今まで我慢してきた分、恋人ができた今『いつペット扱いしてくれるのだろうか?』と妄想してしまう頻度も増えてきて……が、我慢できなくなったんだもの……」

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