第16話 ド変態じゃん

 …………ド変態じゃん。


 てか俺のパンツ、いつの間に盗んだんだよ……盗んだ時って朝のあの時しかなかったよな? もし朝の内に盗んだのだとしたら大したもんだ。 


 その能力と行動力を別の何かに役立てる事が出来なかった事が悔やまれる。


 それでも放課後は俺一人で帰る事ができるという事で、パンツは盗まれはしたが少しばかりホッとしてしまう。


 俺の大切なパンツが作ってくれた大切な時間なんだ。 有意義にすごそう。


 そして俺は帰りにスヌバに寄って呪文を唱え、甘々なドリンクを飲みながら帰宅する。


 恐らくこんな時間を過ごせるのは今日で最後かもしれない。 ありがとう、俺のパンツ。


 そんな事を思いながら家に帰り、うるさい妹を押しのけて自室に入ると、机の上に可愛らしいクマ柄の紙袋が封を閉じた状態でおかれており、その紙袋には『私のご主人様である犬飼様へ』と書かれているではないか。


 たったこれだけで誰が俺の机の上に置いたのか分かってしまうのだから恐ろしい。


 いつの間に、とは思うも相手は朝誰にも気づかれずに俺のパンツを盗み出す大泥棒なのである。


 俺の部屋の机の上に紙袋を置くことなど造作もない事だろう。


 しかしながらなんだかんだと言っても麗華は俺の彼女でもあり、俺のペットになりたいという女性なのである。


 そんな俺に対して流石に何か危害が及ぶようなものは入っていないだろう。 そう判断した俺は恐る恐るではあるものの紙袋の封を開けて中を覗いてみると、中には手紙らしき紙と白い布が入っていた。


「ふむ、手紙にはっと『これを見て私を思い出してください』、か。 どれどれ…………ハンカチ?」


 プレゼントか何かだろうか?


 そう思い広げてみると、それは明らかに使用している痕跡がある女性のおパンツ様であった。


「…………ド変態じゃん、兄貴」

「違うっ!! 違うんだ妹よっ!! 話を聞いてくれっ!!」


 この日、何とか深夜までかかって妹と両親に説明して『変態』から『変態疑惑』までもっていく事が出来たのだが、間違いなく俺の中の何かは失われた気がしたのだった。







「あら、そうなのっ!? 昨日のは麗華ちゃんがわざと祐也の為を思ってサプライズプレゼントしたのねっ!! いやいや迷惑だなんて、そんなっ! 祐也も昨日は発散したと思うわよっ!!」


 そして翌日の朝。

 

 母親のうるさい電話の声で目を覚ますと、どうやら電話の相手は麗華だったらしく、昨日の件を聞いているみたいであった。


 それによってどうにか兄貴として、そして息子としての尊厳を失わずに済んだのだのだが母親の不要な一言によってあらぬ誤解を今度は麗華にさせてしまい、その誤解を解くのにかなり苦労する羽目になったのであった。

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