第13話 フルスロットル


「あら、どうしたの? 私の事をそんなに見つめて。 もしかして祐也様はやっと私のペットとしての魅力に気づいてくれたのかしら? それならば丁度いい首輪があるんだけれど、つけてみても良いわよ?」

「いや、そう言う性癖はないので大丈夫です」

「まったく、それだと私をペットにするという約束が守られていない事になるので学校のみんなに言いふらしても良いのだけれども? 私は祐也様のペットになりましたって。 私のご主人様である祐也様の方から約束を反故にすると言うのであれば、こちらも約束を破っても良いと言う考えで良いかしら?」

「分かったっ! 分かったからっ!! でも今は流石にリスクが高すぎるから後日誰にもみられない場所にしてくれっ!」


 そして今まで生きてきた中で一番ストレスがのしかかった朝を迎えた俺は、麗華と一緒に高校へと歩いて登校していた。


 俺の家からは途中までは歩いてあとはバス通学となっているので、おそらく麗華はバス停まで首輪をつけて登校したいと言う事なのだろうが、いくら俺たちが使うバス停から乗る学生はいないとしても既にバスに乗っている学生や、今日たまたま俺たちと一緒のバス停を使う学生がいないとも限らないのである。


 流石にそんなリスクを背負ってまでやるようなことではないので丁重に断る。


「えぇ、そのスリルが良いと私は思うんですけどねぇ」


 そして俺が断る事で少しだけ残念そうな口調でそう言う麗華なのだが、俺はその言葉にドン引きだぞっと教えてやりたい。


 おそらく麗華は俺という自分の性癖を隠す必要がない人間が初めてできたのであろう。 


 そのため性癖の事となると今まで抑制していた分常にアクセルベタ踏みフルスロットルなのでアクセルを緩める事を覚えてもらいたい限りである。


 まぁ、普通の人間関係であれば自分のそういった性癖をどこまで相手が許容できるか手探りな状態で少しずつ擦り合わせていくという過程があるのだが俺と麗華の関係は初めっからそんな面倒臭い事をする必要がないため、麗華の気持ちもわからなくもない。


「しかし、昨日のレイントークで俺は一緒に登校するのは遠慮すると言ったような気がするのだが、気のせいだろうか?」

「あら? これはたまたま同じ時間に私と祐也様が同じ場所から登校し始めただけで、向かう場所も乗るバスも同じであるのならばこうして被ってしてしまうのは仕方のない事だと私は思うのだけれども?」

「さいですか……」


 そして麗華は初めからこうするつもりだったのだろう。


 そもそも俺と比べて明らかに麗華の方が地頭は良いと思うのでこれ以上は言いくるめられるか不毛な言い合いが続くだけで俺側にはデメリットしかないと判断して会話を切り上げるのだが、それと同時に俺の腕が二つの柔らかな感触で包まれるではないか。

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