第12話 美人は卑怯だと思った
違う、そうじゃない。 と思わず口から出かかったのだが、なんとか堪える事に成功した俺を誰か褒めて欲しい。
「いえ、祐也さんはとても素敵な方なので……」
そして俺と、俺の家族の前で頬を染めて照れている麗華を見て、思わず見惚れてしまいそうになる程可愛いと思ってしまったのだが、相手は俺に何も告げづに俺の家に朝押しかけて来て朝食までたべるような奴なのである。
その見た目の可愛さに騙されてはいけない。
「あら、なんて素直で良い子なのかしら……。 祐也っ!! 麗華ちゃんを泣かせたら承知しないからねっ!!」
というかこの家族では俺の事がどう見えているのか一度真剣に話し合う必要があるみたいだ。
「はいはい分かったよ母さん……」
そう自分の母親に返事をしながら俺は両親と一緒に朝食を食べている麗華に話しかける。
「それで、何で麗華がここにいるんだ?」
「そんな、いくら私達は付き合っているとはいえまだ付き合い始めて三日も経っていないのに、いきなり麗華って呼び捨てだなんて……照れてしまいます……っ」
うん、落ち着け俺。 ここで怒りに身を任せてしまったら相手の思う壺だろう。
こういう時は深呼吸だ。 すっ、すっ、はーっ、すっ、すっ、はーっ ……なんか違う気がするが落ち着いて来たので良しとしよう。
そもそも麗華に関しては俺の中で値崩れしまくっているだけなのだが、それに関しては別に教える必要も無いだろう。
「それで、もう一度聞くけど、なんで麗華がここにいるんだ?」
「それは、一秒でも早く裕也さんに会いたかったからで……迷惑だったかしら?」
「うん、めいわ──」
「迷惑じゃないわっ!! これから毎日、麗華ちゃんさえよければ家に来ても良いわよっ!! そうすれば裕也も喜ぶでしょうしっ!! お父さんも良いわよねっ?」
「あぁ、そうだな。 それに我が家の朝の食卓に花ができて明るくなった気がするしな。 あ、母さんが我が家で一番の花だからね?」
「ちょっと、それだと私に花がないみたいじゃないっ。 ま、まぁ麗華さんと比べたらそりゃ劣るだろうけど」
「もう、あなたったら……っ。 それにしてもまさか祐也にこんなにきれいなお嫁さん候補ができるなんて思いもよらなかったわねっ! どうしましょうっ!? いまからご近所さんに自慢してこようかしらっ」
「こらこら母さん、気が早いんじゃぁないかい? 麗華さんのプレッシャーにもなるかもしれん。 ここは慎重にしないと」
そして俺は麗華に向かって迷惑だと言おうとしたその時、俺の言葉を塞ぐように母さんが麗華にたいして『いつでも来て良い』と答え、そして父さんもそれに続くではないか。
「明るくて楽しい家族ね、祐也さん」
そしてそんなやかましい家族を見て麗華はそういうと微笑むのだが、その笑顔が見れたなら『まぁいいか』と思えるのだから美人は卑怯だと思ったのであった。
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