第9話 初めての彼女


 うん、できれば卒業まで仕舞っていて欲しかった。


「そんな悶々としている日々を過ごしていたのだけれども、私は今日聞いてしまったのです。 犬飼君が朝登校時に『氷室麗華さんから告白される事なんてあり得ない。 もし告白されたら何でもいう事を聞いてやるよ』と言っていたのが聞こえてきたので、これを使わない手はないと思いましたね。 だって私は今犬飼君の事が好きで、そして告白さえすれば例え恋人になれなくてもペットにしてくれる。 こんなビックチャンスを逃すなんて考えられないわね」

「………………あぁ……確かに言ったけど……それは絶対に無いと分かっているからこそのノリというか……」


 畜生っ!! こうなると分かっていたらあんな事絶対に言わなかったのにっ!! 


 できる事ならば過去に戻ってあの時の俺をぶん殴ってでも止めたい。


「あら? まさか嘘とは言わないわよね? 自らが言った言葉には責任をとって貰わないと」

「も、もし嘘だと言ったら?」

「ここであなたに襲われたって言うわ。 私と犬飼君、大人はどちらを信じるでしょうね?」


 学園でも優等生で常にテストの点数は学年トップレベル、息を呑むほどの美少女にも関わらず浮ついた話もなく品行方正。 方や生活態度もテストの点も可もなく不可もなく、パッとしない男性。


 どちらの話を信じるか、火を見るより明らかであろう。


「卑怯だぞ……っ」

「お褒めの言葉ありがとうございます、ご主人様」


 畜生、こいつ既にペット気取りになってやがる……。 しかしながら今の俺に選択肢がないのも事実。


 ならば恋人にはなれないがペットにするという事で一旦はなしを通して、ペットの件はおいおい考えていけば良いだ──


「ちなみにお付き合いできた場合はペットの事もお付き合いしている事も周知には黙ってあげるわ。 でも、もし私を振った場合は周囲に振られたけどペットにされたと言いふらしますから」

「お付き合いしましょう」

「はいっ! ご主人様っ!!」


 そして今日、俺に初めての彼女件ペットができたのであった。





 色々あった放課後、俺は精神的に疲れ切った身体で何とか帰宅すると自室のベッドに身体を投げ出す。


「つ、疲れた……」


 そして俺は制服を着替えるのもめんどくさいと、そのままベッドの上で寝っ転がりボーとしているとスマホにレイントークの着信の電子音が鳴り響くので、寝っ転がったままスマホを手に取る。


『ご主人様、ご主人様』

 『何だ? あと、わざわざご主人様って言わなくて良いからな?』

『ご主人様、明日は一緒に登校しようと思うのだけれども、どうかしら?』

 『唐突だな。 別に一緒に登校する必要はないんじゃないか? あとわざわざご主人様って言わなくても良いからな?』

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