お前のものは俺のもの-4

 次の日

 僕はいつも通り自転車を走らせ、学校の駐輪場へと向かった。


 そして駐輪場に着くと、そこには駿の姿があったんだ。そうか、今日はバスケ部の朝練がない日だったんだね!


 僕はいつも通り「駿!おはよっ!」と声をかけ、駿も元気よく挨拶を返してくれたんだけれど…


「…ん?あれ、お前メガネどうしたんだ?」


 僕のトレンドマークであるメガネがないことに、いち早く気付く駿…僕はその場を凌ぐためにとりあえず…


「あはは…色々あったんだ、多分、教室に行けばその理由が分かるよ?」


「…はぁ?教室…??」


 そう、僕のメガネは大和の手の中だ、そしてきっと大和が掛けているはずだ…昨日はあんなに喜んで掛けていてくれていたからさ!


「とりあえず、教室行こっ!」


 話の内容が分かってない駿の手を僕は握りしめ、教室へと向かって行ったんだ。


 ◇ ◇


 教室のドアを通り抜けると、そこにはいつも通り、僕の席の前に大和が座っていた。


 そして、次の瞬間…駿や他のクラスメイトの視線が、僕たちに集まることになったんだ。


「大和、おはよっ!」


「…裕翔か、うん、おはよっ」


 いつもは振り返ってくれなかった大きくて小さな背中を、今日の大和はちゃんと僕へと振り返り、微笑みながら挨拶を返してくれたんだ。


 そして…ぼ、僕のメガネ…ちゃんと掛けてくれてる…!


 大和と僕の行動に周りのクラスメイトも…そして駿ですら驚きを隠せない様子で、僕たちを見つめている…


 な、なんだよ…僕はこうしたかったんだ…!

 みんなだって分かってるだろ…もう!


 僕は周りの目なんてどうでも良かった。

 何より大和が教室で声を出して話してくれる事がとにかく嬉しかったから…


 うん、大和との昨日のひと時に嘘や偽りもなかった…僕たちはちゃんと友達になれたんだね…?


 そんな事を思いながら僕もニコッと大和に微笑み返した時、駿が口を開いたんだ。


「あれ…?ん…?!山際、お前がしてるそのメガネって…?!」


 そうだ、メガネのこと!

 う〜ん…駿になんと説明していいのやら…僕は少し返答に困ってしまったその時…


「ああ、このメガネか…昨日から裕翔のもんは俺のもんになったってことで」


 そ、そこさ!はっきり駿に言っちゃうの?!


 僕は恥ずかしさと共に、条件を付けられた友達ってどうなんだ?と、そんな事を駿に思われてしまうのではないかと、変な焦りを覚えてしまったんだ…


「はぁ?良くわけがわかんねぇ、裕翔はそれでいいのかよ?」


「僕っ?!えへへっ…なんでか、嫌じゃないんだこれが…」


 だって…僕のものは大和のものって言ったけれど、僕のものを渡した時、あんなに嬉しそうな顔をする大和を見ていたら、それでもいいかもなんて思っちゃったんだ。


「はぁ…まぁ裕翔が良いならそれでいっか…でも良かったな、やっと山際のこと振り向かせられて!」


「も、もう!駿っ!恥ずかしいから大きい声でそんな事言わないで!!」


 駿もなんやかんや、いつもの調子であははっと笑ってくれたんだ。


 そして、大和も大和で満更でも無さそうだ…


 駿も含めて…これから3人で楽しく過ごせたら嬉しいな…僕はそんな事を思いながら、2人にニコッと微笑み返したんだ。

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