第5話 名前

「あなたを最高の魔術師にして見せます!」


僕は一人の少女の先生になった。



「そういえば名前も言ってなかったですよね。私の名前はアリアと言います!よろしくです!」

「あぁ」


僕にも名前がある。

そりゃ人間の中に混じってて、名前がなかったらまずいからな。

でも、場所によって違った名前を使っていたから、どの名前にするべきだろうか。


「僕の名前はヘルメ。なんて呼ばれたって構わない。」


僕は神話時代の名前を口にした。


「ヘルメさん、ヘルさん、ヘル先生、ヘル師匠、、、。じゃあ、師匠!師匠って呼んでもいいですか!?」

「あぁ、もちろん」


師匠呼び…。懐かしいな。



倒したいのしし…、ボアーは魔物の分類だそうで、放置しておくとアンデッドとして、動き出してしまうのだという。

だから使えるところだけ取って燃やして灰にしないといけないらしい。

ちなみに、食べると魔物特有の強い魔素のせいで魔力障害を起こし死ぬという。

要するに食えない。


「偉大なる大炎!(グレイトフラーム)」

「ボン!」


「おぉ、、、!」


偉大なる大炎(グレイトフラーム)は

指定した場所に五メートル以上の大きな炎を出す魔術だ。

結構簡単なのでおすすめ。



「師匠!こっちです!」


アリアの村は僕らが出会った川の近くにあった。

やはり川の方角へ歩いて正解だったのだ。

しかし、対岸も巨大樹の森が永遠と続いていて、集落が現れる気配がない。


「ここは木が大きいし、日の光も葉で遮られてるけど、、、住めるのか?ここ。」

「それはですねぇ…。」


アリアは急に走り出して上を見上げた。


「ようこそ、私たちの”国”へ!」


彼女の視線の先を同じように見上げると、そこには木にくっつくようにして建てられたたくさんの住居があった。

樹の上の村、いや、街には遠くから見てもわかるほど活気があった。

人がとにかくたくさんいるのだ。

前世ほど文明が進んでいるわけでもなさそうで、建材には木が目立つ。

そして、ただでさえ背の高い樹だらけなのに、その樹だけ異様に背が高く、太い。

樹の頂上は背が高すぎるせいで霞がかっていて、どのぐらいの高さなのかが全然わからない。

イメージは東京スカイツリーだ。


「すご、、、!何人住んでるんだ?」

「うーん。ここは私たち獣人の集落で最も大きいから正確には分からないけど、軽く10000人以上はいます。」


100000人。10万人。

巨大樹の上に10万人。

かなりの規模だ。

参考として、日本全国の市の平均人口は12万人だ。

そして彼女の種族は獣人というらしい。

たしかに尻尾も耳も獣っぽいからな。

そして国を組織しているという。

ぬるすぎるぞ、異世界。


「師匠はこれまでにこの国に来たことがありますか?」

「いや、ないが?」


何かまずいのだろうか。

もう日が暮れかけている。

そろそろ門が閉まったりはしないのだろうか。


「それだと入国審査を受けないとですね。1時間ぐらいかかるんだよなぁ」


おそらく1時間も経ったらこの辺りは真っ暗になる。

おそらく、もう入国審査は受けられないのだろう。

てか、入国管理が行えるって、結構文明進んでね?

日本ですら鎖国していたとは言え、入国管理するようになったのは縄文時代から10000年以上後だぞ。


「なら、僕は今日、野宿するよ。」


ここに来る途中でも旅商人らしき人々が野宿の準備をしていた。

それに混ざっていれば問題ないだろう。


「いや、それじゃ師匠に失礼です!ちょっと話してきますね!」


巨大樹の麓にある小さな建物に向かって走って行ってしまった。

ちなみに巨大樹の上には階段、もしくはエレベーターみたいなもので登れるようになっていた。

エレベーターといっても人力木製だけどね。


しばらくしてアリアが帰ってきた。


「そうだ、師匠!族長に会いに行きましょう!」


そうして僕は族長の住む、この辺りで一番大きな樹に向かった。

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