第3話 魔女
「私に魔術を教えてくれませんか?」
「は?」
思わず聞き返しそうになった。
急に言われたからだけではない。
だって聞いたことのあるセリフだったから。
<回想>
「私に魔術を教えてください!!」
そう言われたのは魔女の一族の少女だった。
彼女の一族は、僕が人間に火などを教える時に使った魔術を、
独自に発展させ、生活して来た一族だった。
一族の規模はかなり大きく、一つの小さな国が作れるほどの
規模であった。
そして、彼女はその一族の族長の娘だった。
「私、魔術が上手くなりたいんです。でも、教えてくれる人が近くにいなくて。」
それはそうだろう。
魔術は狩りの時や料理したりする時にしか使わない。
そして慣れないものが扱うと危険なのである。
族長の娘ともなれば、危険な目に合わせるわけにはいかないのだろう。
「失礼だとはわかっています。でも、それでも教えてほしいのです。」
その時は、彼女の生活が少しでもいいものになればと思っていた。
「いいでしょう。一緒に頑張りましょう!」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
その日、僕はかじめて弟子というものを持った。
神が弟子を持つというのは変に感じるかもしれないが、僕らは人間の格好をして、人間のように過ごしている。
僕らは、分野ごとに神様が分担して仕事をしているから神様の数はとても多い。
そこらへんにかなりの人数が紛れている。
人間との関係が親密な神もいれば、人間とほとんど接しない神もいる。
僕は人間の中に混じるタイプの神だった。
「私の先生ということは、師匠って読んだ方がいいですかね?」
「恥ずかしいよ。」
「いや、呼びますよ!師匠〜!」
師匠呼びは永遠に続いた。
彼女は族長の娘であったため、最初はいろいろと大変なこともあったものの、僕は彼女にできる限りのことを教えた。
彼女も吸収が良くすぐに習得し、魔術の新しい分野への活用法を研究するほどになっていた。
そして彼女は立派な一族の族長となった。
「危ないから下がっていなさい。龍竜巻!!!(ドラゴンクレーク)」
「ゴォォォォォォ」
一族の館へ戻ろうとすると、彼女が子供たちに魔術を教えているところだった。
僕は魔術が人間の生活を幸せにしていくのが嬉しかった。
それに彼女だけでなく他の人間も魔術を習得し、生活の中で使っていった。
想像してみて欲しい。
火打ち石で火を起こしていたところにガスコンロが来たのだ。
そんなこんなで僕の神としての”魔術を広め人々の暮らしを豊かにする”という目的は果たされていった。
しかし、そんな楽しい時間も長くは続かなかった。
『一族の若者が魔術を使って人を殺した』
という情報が回って来たのはすぐのことだった。
悪夢はそこから始まったのかもしれない。
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