第2話 接触
「嫌ャャャャャャャャ!」
ん?嫌?いや?
”いや”って確か、日本語だよな。
日本語で人の声が聞こえた。
僕はもちろん声の方へ走った。
叫び声が上がった方へと、疲れた体をむち打ち走っていくと、やはり人間がいたのだ。
日本語を話すことができる人間。
僕はそれと出会った。
異世界というのは思っていたよりぬるいのだろうか。
「グァァァァァァ!!」
しかしそんなぬるい考えはそのおたけびによってかき消された。
僕が声のする方へ駆けつけた時、声を発した人間は絶体絶命のピンチだった。
いのししに襲われる寸前だったのだ。
いや正確に言うならばいのししもどきか。
ところどころ、、、いや、結構違う。
するとそのいのししもどきは僕の存在に気づいたのか、ターゲットを人間から僕の方へ変え突進してきた。
舐められてるのか、、、。
「戦うのは好きじゃないんだけどなぁ。」
僕は手を前に突き出し、魔力を手の方に集中させた。
僕は手を前に突き出し、魔力を手の方に集中させた。
イメージは、一筋の稲光。それも、鋭く力強いもの。
ふと思ったのだが、どの世界でも猪突猛進という言葉は通じるのだろうか。
と言うか、なぜ日本語が聞こえたのだろうか、、、。
ほんやくコンニャクは食ってないはずなんだが、、、。
まぁいい。
「雷槍!!!(ドナースピアー)」
自分の魔力が手のひらから放たれ、高電圧の電気に変換されていく。
そして槍状に伸びた電流はいのししもどきに命中し、その体を駆け巡った。
「ギュェェェ!!」
プスプスといのししが倒れている中、僕は声を発した相手の様子を確認した。
今気づいたが、正確には人間ではなかった。
身長から見るに、全世界での中学3年生ぐらいに見える。
性別は女と見えるが、人間と異なる点が二点。
頭の横から狐のような耳が生え、お尻からは尻尾が生えているのだ。
しばらく驚いたようにいのししの死体を眺めていたが、僕の存在を思い出したのか、僕の前までトコトコやって来た。
そんなに影が薄いか。笑えよ、、、。けっ。
「た、助けてくれて、あ、ありがとうございました。使ったのって魔術ですよね!!」
「えっ。あぁ、うん。そうだよ。」
驚いた。日本語ってことすら驚きなのに”魔術”が会話で出てくるなんて思っていなかった。
この世界で魔術は共通認識なのだろうか。
と言うか嫌って言ったのはこいつであってるのだろうか。全然物怖じしていないぞ。
「魔術のこと、知ってるの?」
僕が聞くと、彼女は頬を赤らめて答えた。
「えぇ。お、お父さんに教えてもらったんです。でも私、うまくできなくて、、、。」
そういうと彼女は指先を目線の位置まで持ってきた。
ぐっと力を入れるように、けれどどこか怖がっているような感じで。
「炎弾!(フラームボール)」
ポッと、明るくてピンポン玉くらいの炎弾が指先にできた。
しかし、魔力のコントロールができないのか、大きさ、温度がとてもぶれている。
そして、花が枯れるように静かに炎弾は消えていった。
「あなたはすごい魔術師さんなんですね。
あんなに大きなボアーを一撃で、しかも魔術で仕留める人なんて初めて見ました。」
あのいのししもどきはボアーというらしい。
食べれるのかなぁ。
「私、魔術が上手くなりたいんです。でも私の村では魔術を教えられる人がいなくて。助けてもらった分際で失礼だとはわかっています。それでも、私に魔術を教えてくれませんか?」
「は?」
柄にもなく驚いてしまった。
だってその言葉はもう聞くことがないと思っていたから。
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