第17話

フィア:あら〜キルったら大胆な

茜:見てないで助けてくださいよ

ノック:助けても何も、キルが思いのほか幸せそう

    だから…くっ!俺にはできない!


 そんな小芝居じみたことをする弟くん。


 今どう言う状況かと言いますと…、キラさんが俺に抱きついて離れないんです

 無理にでも剥がそうとすると、涙目になって子猫みたいになるんです。


フィア:聞いて聞いて、今ね面白いことになってる

    のよー。キルが茜くんに抱きついて離れな

    いのよ〜

陸:それ言って大丈夫なの?

フィア:まぁ、大丈夫でしょ!


 こちらにグッと親指を立てウインクを見せるフィアさん。


ノック:ことの原因は兄貴が弱いのもあるけどな

淳:そうだな。あんなに飲まされたら酔いますよ

兄:すいません


 さっちゃん険しい顔してる〜。確かに、俺らから見てもさっちゃんものすごく弱かった。


 キルさんはこんなに酔っても強さは変わらない。


 本当にすごいな、キルさん。


キル:Rさん…なんで、遊んでくへんの

茜:あっあの、キルさん

キル:私はキルちゃう、Kや!


 突然の関西弁で、脳が一時停止してしまった。


キル:なぁ。Rさん。何で私と遊んでくれんの?

   私が弱いから?

   それなら強くなるから、やから、やから…

茜:わぁ!


 抱きつくの次は俺の体を押し倒しお腹の上に乗り、顔を近づけ、耳元で囁いた

「私と遊んで…」


「…!」


 小さな声で、誰にも聞こえない距離でそう囁いた。


「Kさん、俺…」


 返事をする前にKさんは酔い過ぎたのか眠ってしまった。


茜:あの、キルさん寝ちゃいました

フィア:どうしよう。みんなコレは面白いことにな

    ってきたわよ〜!

ボム:すみません。ウチのキルが…

兄:どうしようもありません

ノック:コレは明日、荒れるぞ〜


 荒れるって、何もそこまで言わなくても多分問題ない、多分。


 でも、俺は見てなかったコメントの流れが異常に早いのと、業界の友人から仕事関係の人から大量のメッセージがおくられてるのをね。


フィア:まぁ、起きたことは起きたことだし仕方な

    い。そろそろ終わりましょか、キルも寝ち

    ゃったし

ボム:そうだね

ノック:そんじぁ、締めの挨拶しましょう

フィア:またねー。乙!

ボム:おつかれ〜

ノック:じぁなあ


 脱力したのかヘナヘナと寝転がるノックくん。


「だー。キルの野郎あんなことして!ぜってぇ荒れるって!」


「ノックくん静かに、キルが起きるよ」


 ソファーに寝かせキルさんに指を差し伝えた。


「片付けをしましょ。このまま帰っては失礼だからね」


「そうだね」


 フィアさんはみんなが使った箸、皿、グラスを洗い場に持って行ってくれた

 ボムさんと弟くんは出した機材を元に戻すって。


「手慣れてますね」


「あら、茜くん。そうね、毎回やってたらそりゃ手慣れるわよ。他のお三方は?」


「えっと、さっちゃんは電話が、後の2人は機材が見たいとかで」


「そっか。ありがとう」


 丁寧に食器を洗う姿は母に見えた。そして、俺はあることを聞いた。


「…あの、キルさん…Kさんの過去を教えてくれませんか?」


 そう、なぜKさんが“キル”と呼ばれてるのか俺は知りたかった。


「……それは、キル自身に聞きなさい」


「どうやって?」


「普通に聞こうとしてもあの子は嫌がるは。時期を見て聞きなさい」


「…」


 時期を見る。それはいつでどう聞けば良いのか、彼女が素直に話してくれるのか。


「少しでも知りたいなら、検索したら出るわよ」


「本当ですか」


「えぇ、ネットて言うのは残るのよ。消そうと思っても消せないものが」


 フィアさんの顔は笑ってなかった。


「あの…」


「はい!終わり!さてと、そろそろ帰りますか」


 俺の声を消し飛ばすかのように声を出し、洗い場からキルさんが居るソファーえと近づいた。


「よいしょ。あら、軽ーい」


 女性なのに軽々とお姫様抱っこを披露した。


「車に乗せるから手伝って」


「は、はい」


 スヤスヤと眠る彼女。優しく車に乗せてここでお別れ。


「またね、キルさん」


 今日会えてとてもよかった。色々なことがあったけど、どれも感じたことのないものばかりだった。


「あっ!キルを知りたいなら1つ教えるよ。キルは関西出身だ」


「関西」


「そうそう、普段は標準語だけど酔ったら関西弁なんだって今日知った。たまにゲームしてる時もちょっと出る」


 また彼女の顔に笑顔が浮かぶ。


「そんじぁあね〜青年。夜道には気をつけなよ」


「はい、キルさんをお願いしますね」



 その後はボムさんとフィアさんがキルさんのことを送ってくれ、りっくん達は明日早いから家に帰った。俺も何かする訳でもないので家に帰ることにした。


 家に帰るなり早速自室のパソコンを開き、あることを調べた。


「…出てきた」


名前 キル  性別 女  年齢 20歳

出身 関西

職業 配信者 ゲーマー


 現在チーム“ ENEMY”として顔を出さずに活動中。それぞれ個人のアカウントと持っており、個人配信などをしてるいる。


 彼女が得意とするのはバトルゲーム。チームではクールでチーム最強のキルですが昔は野良だった。


 チームメイトのノックの誘いがあり入った。


 野良の時代は、“ K”と名前を表示。様々なゲーマー達が彼女に対戦を挑んだが敗北。その異常な強さ、冷徹さから“キル”。ゲーム界の“死神”とも呼ばれた。


「…」


 ゲーム界の“死神”。全く知らなかった。きっとその時は俺がオーディションをいっぱい受けて、演技の練習とかを一生懸命やっていた。


 全く実が付かずゲームなんてする気力が無くて、連絡だって返せてなかった。


 もしかして、俺のせい…。


「…ッ」


 そう考えるのはよそう。だって、Kさんは…。


 俺はベットに入った。きっと明日になっても忘れない。


 このネット記事は本当なのか本人に直接聞こう。


 『私と遊んで…』


 今にも泣きそうな君の声が頭の中に響く。


 ごめん、俺もKさんと遊びたい。次はもっともっと遊べるように俺も頑張る。連絡もする。


 だから…泣かないで。



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