第14話
「キルにボムさんを取られたのは結構キツイ…」
「なに言ってるのよノック!楽しみましょ!」
私はノックに笑顔を見せた。
せっかくの機会なのだから楽しくやりたいし…、Rさん(燐道茜くん)とも仲良くなりたいしね!
「せっかくならお菓子のクレーンにして、みんなで一緒に食べよ!」
こっち、こっちとみんなを誘導して沢山のお菓子が並んでいる台の前へ立つ。
「各々好きなのを選んでやりましょう。お菓子以外が良いなら別に構わないから」
そう言ったらノックは早足で別の場所に行ってしまった。
せっかくなら、みんなで遊びたいのに。ノックたらもう!
「1人にして大丈夫ですか?」
「別に大丈夫よ。ノックだって子供じゃないんだし。それより!茜くんに聞きたいことがあったの!」
それは!
「キルのことどう思ってるの?」
昔のキルの印象を聞き出すのよ!
「Kさんのこと…ですか?」
「そう!茜くんは私達よりも先にキルと出会ってるから、当時はどうだったのか知りたいの!」
「オレも聞きたーい」
私と同様、興味があるのか陸くんが元気よく手を上げる。
「えっと、その…Kさんには言わないでくださいね」
恥ずかしそうに頬を赤らめる茜くん。
何何、そんなに恥ずかしいの!てか、人気男優をこんなに恥ずかしそうにさせるキルって昔はどんなのだったの!
「Kさんと出会ったのは…学生の時、オンラインゲームで会ったんです。その時からKさんは強くて、俺は何度も何度も彼女に勝つまで挑戦して、仲良くなって、話てる内にもっと仲良くなりました」
口元をモゴモゴさせながら話してるが、手元はクレーンゲームをしていた。とても器用に、さっきキルとしていた時とは全然違う、上手に出来てる。
「Kさんの印象は大人で、自分よりも年上の人だとずっと思ってたんです。話し方、ゲームスキル、全てが完璧で、俺なんて手も足も出ない。そんな俺に色んなゲームを教えてくれて、優しい人です」
昔のキルが優しい。
今はそう思えないが、初めて私達と出会った時はとても尖っていて、人と接したく無い人間だったのに。
「俺がこの仕事についてからは全然ゲーム出来なくて…、そんな俺にKさんは『夢があるのは良い事だよ。応援してる』て、言ってくれたんです」
景品が落ちる。それを取り出し、こちらに差し出した。
「俺にとってKさんは、強くて、優しくて、良い人ってことです!」
…全く想像出来ない。一体どうなってるの?彼と私達が想像するキルは違うのは分かってる。でも、Rさんと遊べなかった数年間、キル(K)に何らかの感情的なモノが起きたのか…。
「…」
「えっと〜。何か嫌なこと言いましたか俺?」
「そ、そんなことない。いいこと聞いたわ。ありがとう」
「それなら良かったです」
満面の笑みをこちらに向けた。
グッ!ま、マブシイ…。陰キャには刺激が強い!
「では、俺達も次々と景品取っていきましょう。負けるわけにはいきませんから!」
次々と景品が取られていく。
お菓子以外にも、ぬいぐるみの所まで行ってしまった。
「なんだこりゃ。おれが居ない間にこんなに取ってたのか?!」
別行動してたノックが、両手に色んな景品を持って戻ってきた。
「ほとんど茜くんが取ったけどね…」
「はぁぁ!アイツ、ゲーム下手じゃないのかよ!」
うん。それは思ったよ。明らかにキルの時は下手すぎて、本当にゲー友か疑った。
「ノック。もしかしてだけど…」
「アイツ、下手に見せる演技をしてたな。キルにかまって欲しくて」
「だよね」
少し離れたところで楽しそうに遊んでるけど、一体何がしたいのだろうか?
「あんなヤツがいるから、キルが嫌な思いをするんだ」
「こら、ノック」
「実際そうだろ。キルが昔にボロ吐いた時に言った言葉。今でも覚えてる。姐さんは違うのか?」
「…覚えてる。でも、それは昔のこと、今じゃない」
チームを結成して数ヶ月した時に、徐々に信頼を得ていた。
配信外でも遊ぶ様になって、キルがうっかり言ったボロ。
『私って…Rさんに嫌われてるのかな…』
これがきっかけで、Rさんを知った。
連絡しても中々返信が返ってこない。ゲームに誘っても、忙しいと言われて断られてしまうばかりで、キルの心が保たなくなった。
それもあって、人が信用出来なくなった。
「大丈夫。いざ何か有ったら、私が守ってみせる」
「姐さん…」
ニッコリと笑顔を見せる。
「はい!そろそろ時間だから、集まりましょうか!」
時計を見たらもう1時間経っていた。
「さてと、ボム達は何を取ったのかな〜」
いつもの様に明るく振る舞う。
さてと、頑張ったから優勝してると良いな。
昔は明るく振る舞うのは嫌いだった。それで、会社を辞めた理由の1つでもある。
でもね、キルが初めてだったの。私の振る舞いを見破ったのは。
『無理にそうしてると、いつか自分を見失いますよ』
そう言われて嬉しかった。
ボムは「無理しないでね」ってずっと言われてだけど、でも、元気で明るくいないとって勝手に思ってずっとずっと…。
キルが私にそう言ってくれて、心が軽くなった気がした。
彼女が私のことを信頼して「リーダー」って呼んでくれている。
私はその期待に応えて、あなた達チームを守る。
それが、リーダーっていうモノ。
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