第11話

 怖い。人が怖い。会いたくない、目を合わせたくない、見られたくない!



『何で咲良ちゃんは目の色がちゃうん?』


『それは…』


『コイツ、日本人じゃないからやで』


『ちがう!』


『何が違うんだよ。お前の目、俺らと違うもん』




 何で、何で、何で!

 一緒じゃないとダメなん、私の何がいけんの

 私はただみんなと遊びたいだけやのに、どうして、目が、瞳の色が違うだけでこんなに言われないといけないん?


 …そうや、ゲームをしよう。そしたら、みんな私だと分かんないよな。



「わたしっ、わたしっ、」


 頭の中で嫌な記憶が流れる。


 ノックの後ろでフードを深々と被りしゃがみ込む。


「大丈夫、大丈夫だから。貴女は何もしてない」


 リーダーが私の背を撫でながら優しく語りかけてくれる。

 呼吸が上手く出来なくなる。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「大丈夫、大丈夫よキル」


 無理だ、知らない人怖い。Rさんなら大丈夫だと思ってたのに…途中から、怖くなっちゃた。


「ご、ごめんなさいRさん」


 せっかく会えたのに、私のせいで台無しになった。


「ごめんなさい。私が、私のせいで…」


 目の前が滲む、涙が零れ落ちる。

 ただ謝ることしか出来ない。


「Kさん…大丈夫ですよ。それと、ここでは何ですし、別の場所でお話ししませんか?」


 優しくそう語りかけてくれた。


 本当にRさんはリアルでも優しい人なんだぁ。


「そうだね。他のお客さんの邪魔になるし、…それなら僕の友達の店に行こう。すぐ近くなんだ」


「えっ。あそこ行くのか?」


「嫌かい?」


「いや別に、飯は美味いけど…あの人がなぁ」


 何となくノックの反応であそこだと分かる。私は好きだよ。あの店。


「僕はこの人達を案内するから。フィアはキルに付いて後ろを歩こう。ノックはキルの前に立って歩いて」


 ボムさんが先導して、彼らを案内してくれる。後ろから下を向きフードを深々と被って、リーダーに支えてもらいながら歩くことしか出来ない。


 ノックは前に立ってくれて、視界がノックしか見えない。


「キルのペースでいいから、大丈夫よ」


「…うん」


 一つまた迷惑をかけてしまった。



 数分歩くと、目的の場所に着いた。7階建てのビルが目の前に建っていて、そこの1階の喫茶店に入った。


「いらしゃいませ〜って、ヤダー久しぶり!前はバーの方に来てくれたけど今日はこっちなのね〜!」


「カマ、久しぶり。ごめんだけど奥の部屋借りるね」


「良いわよ。親友の頼みだから。後で注文してね〜」


 ウインクをボムさんにかまし、奥の部屋へと連れられる。


「カマちゃーん。お手洗い借りるねー」


「はーい…ヤダー。どうしたの?!そんなに泣いて。嫌なことでも有った?お姉さんに話してみなさい」


「後で私が話すから、ほらほらメイク落とすわよ〜」


「うん…」


 お手洗いでメイクを落として貰った。こんな時のためにとリーダーが持って来てくれてたんだって。

 本当、頭が上がらない。


「…はい、落ちた。じゃぁ、行くわよ」


「あっ、先に行っといてください。後から行きます」


「そう?動けなかったら連絡してね」


「はい」


 リーダーが出ていき、目の前の鏡を見た。そこには、自分じゃない自分が写っている。


「…」


 このままじゃダメだR。さんには本当の私を知って貰いたい。

 

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