第8話
この日をどれだけ待っていたか。ソワソワして夜も寝れず、ゲームをしてしまった。
同期とかにも手伝ってもらって服とか選んで、髪のセットもバッチリしてるけど…。正体バレたらダメだから変装はしないと。
そう思いマネージャーのさっちゃんの言葉を思い出す。
『会っても良いが変装はしろ。お前が今人気の“燐道 茜”とバレたら面倒だから、絶対に気をつけろよ!』
さっちゃんは心配性だなぁ。この完璧な変装はどう見てもバレない!
「バレないとか思ってるのか?」
「うん。だって完璧でしょ。りっくん」
「はぁ〜。どう見ても芸能人オーラが半端ねーよ」
呆れた顔でそう言ったのは、俺の同期の「笹嶋 陸」。モデルの仕事をしていて、流行になったモノはすぐに試してSNSに上げてる。
「茜は謎の自信があるよなぁ」
「謎ってなんだよ。本当に自信あるよ!」
「ほんとかぁ〜」
意地悪そうな顔するのはアイドルの「浅野 淳」。少し俺の方が先輩なんだよ。
何でこの2人が居るのかと言うと、俺がもしバレたらフォローをお願いしてるのだけど、2人だと心配なので、車でさっちゃんが待機してくれてる。
「約束の時間まで時間あるけど、ずっとそこで待ってるのか?」
「そうだよ。だってKさんがどんな格好をしてるのか分かんないし、それに早く会いたい!」
“8”。この数字は早いようで遅い。Kさんと出会ってから時間が経っているのに、今まで姿を見たこと無かった。
それが今日、分かる。
「ちなみにだけどKさんて男?それとも女?」
「分かんない。だって初めて会った時に互いのことは余り探り合あのは止めようってなって、だから互いの性別、見た目が分かんない。第一人称も変えたりしてる」
「何だそれ。相当自分を知られたくないんだな」
「当時の俺も学生だったから、個人情報とか漏れるの嫌だったし」
それに、こんな仕事してることバレるのは問題が起こる可能性もある。
ピコン!
「ん、Kさんからだ!」
「何て書いてある?」
「えっと、『近くまで来ました』だって」
「そんじゃ、俺らは車にいるは」
「うん。ありがと」
2人が車に乗り組むのを見て辺りを見回す。まわりには余り人が居ない。俺の存在を気付く人はそう簡単には居ないだろう。
近くの柱にもたれかかり携帯を見た。
K<目印はパーカーを深く被ってます。
分かりやすく自分がどのような格好をしているのか教えてくれた。俺も分かるように今の自分の服装を教え、今いる場所も書く。
早くKさんが来ないかソワソワしてると、柱の周りをウロウロしてる女性がいた。
短パンに黒タイツ、中にはシンプルなシャツ、上に羽織っているパーカーは背中に柄が入っていてフードが大きめであった。
髪も綺麗にセットされており。マスクを着けていた。
携帯を見ては閉じ見ては閉じを繰り返し、何か思い出したかのように、深くフードを被り始めた。
その一連の流れを見ていた俺は、もしやと思い、思い切ってその女性に話しかけた。
「Kさん?」
女性はピクリと体を震わせると、俺に体を向け。
「…初めまして、貴方がRさんですね」
落ち着いて話しているが、少し体が震えていた。
実際俺も緊張して、カチカチだ。
「あの、えっと。どうしますこの後…特に決めてなくて…」
「……そうでしたね。私達会うことばかり考えていて、この後どうするか決めてなかったですから」
クスッと笑ってそう言った。
「では、私のオススメの場所行きましょう」
先を歩き出すKさんを追いかけて、そのオススメと言われた場所に向かうことにした。
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