第3話

「happy birthday!咲良!」


 いきなり部屋のドアが思いっきり開くと、そこには笑顔で嬉しそうな父の姿が見える。


「お父さん。おはよう」


「可愛いBaby今はもうお昼だよ」


 時計を見ると、11時を過ぎていた。


 そっか、嬉し過ぎて寝られなくてゲームしてたんだっけ。


「ささ。早く起きてlunchを食べよう」


「うん」


 リビングに行くとルンルンの母が料理をしていた。


「あ!おはようさん。お誕生日おめでとう咲良」


「ありがとう。お母さん」


 ありがとうの気持ちを込めて笑顔を見せる。


「今日は特別な日やで!みんなでお出かけするわよー!」


「いいねぇ。shoppingだ」


「それの前にお昼にしよーや。お母さん」


「それもそうやね」


 お母さん楽しそう。さて、私も着替えて準備せなぁ。


 一旦部屋に戻って外服に着替える。顔を洗ってリビングに戻る。


「ご飯できたから座って」


「はーい」


 席に着いて、手を合わせる。


「いただきます」


 箸を取り、お皿に盛られているおかずに箸を伸ばす。


「…美味しい」


「喜んでもらえて嬉しいわぁ」


 お母さんは口を手で隠して照れている。


「本当に美味しいよ。香子」


「もう、ジルったら」


 あぁ、父と母がイチャイチャし始めた。


「お世辞じゃないよ。君の料理は出会った時から変わらず美味しいよ」


 お父さんはイタリア人で、料理の修業?のために日本に来たんやけど、お母さんと出会って胃袋を掴まれったてわけや。


 イタリアに帰ってもお母さんのことを忘れられず、1年後また日本に来て猛アタックしたとか…。


 さすがお父さん。諦め無かったわけだ。


 いまだに仲良しなのは良いんやけど、娘の前では控えて欲しい。

 無言で2人の様子を伺う。


「…」


 さすがに見てられず、テレビに目を向けた。


 おっ!今日の天気は晴れか。いい日になりそうやな。

 


 お昼を食べ、家族仲良くショッピングをして私が観たかった映画を見て家に帰った。


「ふぁ〜。楽しかった!」


 久しぶりに外に出たなぁ。ずっと家に居たから。

 さて、晩御飯は何しよう?


「咲良。こっちにおいで」


 お父さんがお店の方から手招きをしたので、言われた通り向かった。


「どうしたん?」


 顔を出し、正面を向くと。


「咲良さん!お誕生日おめでとうございまーす!」


 パンパンと小さな破裂音が聞こえた。

 驚いてその場で固まる。


「あら、ビックリして固まってもうてる。大丈夫か咲良?」


「…へっ、あ。うん」


 お母さんに声をかけられて正気に戻った。

 さっきの破裂音はクラッカーで、紐を引いた犯人はお父さんのお弟子さん達だった。


「咲良さんすみません。そんなに驚くとは思っていなくてですね」


「いやいや私が勝手に驚いてただけやし、こうしてお祝いされて嬉しいよ」


 顔を横に降り違うと主張する。

 そうすると、お弟子さん達はパァーっと顔を明るくし、奥から沢山の料理を持ってきてくれた。


「今日は咲良さんの好きなものを作ってみました」


 出された料理を一口いただく。


「ん!すごく美味しい!」


「本当やねー。腕上げたやないの」


 私とお母さんは大絶賛。


「……」


 お父さんはよく噛んで黙りしてると思ったら突然泣き出した。


「腕を上げたなぁー。お前たち」


「「し、師匠!」」


 今晩のメニューはイタリア料理がメインでもあるが、和食もある。

 みんなで楽しくご飯を食べてまったりとする頃に、いよいよ本題に入った。


「お父さん、お母さん」


 私は真剣な顔で2人を見つめる。


「どうしたんだい咲良?」


「急に改まるやないの〜」


 2人は不思議そうにこちら体を向けてくれた。


「あんな私、一人暮らしがしたいねん!」


 そう言って、通帳をバッン!とテーブルに叩き付けた。


「引越し代とか新居とかのお金は今まで貯めて来たし、2人には迷惑かけへんから、お願い!」


 土下座をし顔を深々と下げた。


「…良いんちゃう?もうええ歳になったし」


 お母さんの言葉を聞いてバッと顔を上げた。


「ほんまに!!」


「お父さんもそう思うやろ?」


 突然のことを言ったから驚いてしまったか…?


「ングッ。グス」


 違った、大号泣してる。


「えあ、お父さん?」


「愛しのBaby!こんなに大きくなって!」


 脇を掴まれ、突然の高い高いをされた。


「お、お父さん!」


「お前ももうそんな歳か、いいぞ!存分に好きなことをしなさい!」


 それってつまり…!


「一人暮らししてええってこと」


「もちろんさ!」


 やたー!と満面の笑みを浮かべて父にハグをした。


「ちなみに、どこで暮らすのですか?」


 お弟子さんの1人が聞いて来たのでこう答えた。


「もう決まってるの!マンションの部屋も買ったから」


 おおよそお父さん達が良いよって言ってくれるの予想してたことや

し。許してもらえへんくても押し切って説明するし。


「場所はね…」


 今までチームのみんなとは離れた場所に住んでいたから、会いに行くんしんどいねん。

 やから、みんながいる…


「東京!」


 そう、私は今日一つの野望を成し遂げた。


 

 


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