第2話

キル:獲物そっちに行った

ボム:りょーかい

ノック:まって、俺死にそう

フィア:あ〜。私がサポート入る


 耳にはヘッドホンをつけ、口の近くにはマイクが、机にはキーボードとマウス。手元にはコントローラーが握られている。

 目の前には、大きな画面のパソコンが3台並べられていた。


 今やっているゲームはモンハン。

 このゲームはプレイヤーがハンターになってモンスターを討伐すると言うゲームだ。

 オンラインで、フレンドと一緒に出来る様になっているので、チームのみんなとやっている。


ノック:あ”ーー

キル:ノックうるさい


 ヘッドホンから馬鹿でかい悲鳴をあげ上げたノックの声が耳に刺さった。


ノック:んだよ。死んだんだぞ!

キル:3回死んだら討伐失敗になるんだけど

ノック:相変わらず冷たいなぁ


 私の名前はキル。私は配信者として働いている。案件とかやったり、動画の編集などをしてお金を稼いでいる。

 チームメイトからはクールで落ち着きのある性格だと言われる。


 コレが本当の私。


 お母さん達の前では明るく振る舞っている。昔から。心配をかけない様に。仕事の事もテレワークとしか言ってない。だから私が活動者なんて知りもしない。


キル:そんな簡単に死んでるのはノックが下手だか

   らじゃないの

ノック:んだと!


 チームメイトの紹介をするね。

 さっきからうるさいのはノック。ムードメーカー的な役割でよく喋る。


ノック:キルだってダメージ結構食らってるんじゃ

    ないのか?!

ボム:こらこら2人とも、喧嘩しないで。リスナー

   のみんなごめんね


 今リスナーのみんなに謝ったのはボムさん。ゲームにとても詳しくて、オススメのゲームとか教えてもらってる。


フィア:そうよ2人とも。チームワークに必要なの

    は仲良くすることよ!


 最後に、彼女はフィア。優しくて、頼りになる私達のチームのリーダー。


ノック:姐さん、だって!

フィア:ノックは直ぐにムキにならない。キルはも

    う少し優しく喋る練習をしましょうね。

    返事は?

ノック:はい

キル:…分かった。リーダー


 こんな感じで、みんなでゲームをして配信を毎晩してる。

 たまに動画投稿とかもしてる。言っても切り抜きとかだけど。

 みんなと一緒にゲームをして、もう日にちが変わる時間帯になると…


フィア:あら、もう0時過ぎた?

ボム:その様だね


 もうそろそろ終わりかな。


フィア:ボム、ノック。せーの!

フィア・ボム・ノック:キルお誕生日おめでとう!

キル:え?


 誕生日おめでとう?


ノック:どうだ!驚いたか!

ボム:もうキルも20歳だね

フィア:コレでやっと飲み配信できるわね!


 そうか、今日私の…


キル:誕生日だったんだ私


 忘れてた。そう言えば去年もこんな感じでみんなに祝ってもらったけ。


ボム:お〜。去年と全く同じ反応だよ

ノック:マジかよ!そろそろキル自分のことに興味

    持てよ

キル:努力はする…


 そんなことも去年言われたっけ。


フィア:おめでとうキル


 コメント欄からも、リスナーのみんなから「おめでとう」の文字が見える。


キル:ありがとう。みんな


 声だけしか伝わってないけど、私は今嬉しいよ。

 こうして、みんなといれて。


フィア:さて、キルにおめでとう言えたし。今日は

    コレで終わり!

    またねー。乙!

ボム:おつかれ〜

ノック:じぁなあ

キル:バイバイ


 それぞれ別れの挨拶をしてチャットのマイクをオフにした。


 みんなから誕生日を祝ってもらえて嬉しいなぁ。


「…はぁ。キルは良いね。こんなに良い仲間がいて」


 元々私の名前は「キル」じゃない。この名前はチームに入る前に周りから呼ばれてた名前。

 本当は「K」。苗字の頭文字を取っただけに過ぎないけど。

 私を「K」と呼んでくれるのは1人だけだ。


 初めての友達。Rさんだけ。顔も、声も、性別も知らない。

 8年前にゲームの中で出会ってそれから連絡先交換して一緒にしてたなぁ。でも、ここ数年全然遊んでない。Rさんの事情もあるけど、寂しいな。


 椅子から降りて引き出しから通帳を取り出した。


 結構溜まって来たね。後は…お母さん達を説得するだけか。

 ここまで貯まるのに5年近くかかったんだ!

 必ず説得してみせる!


 

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