住むセカイが違うので
よひら
第1話
いつも1人だった。
何かをする時も1人で周りから指を指されて笑われていた。
だから、現実から逃げる様にゲームをする。
自分を守るために。
昔からずっと、今に至るまで。
暗い部屋の中、静かにキーボードのタッピング音が部屋に響く。
椅子に座って画面を見つめる私は全くか言ってその場から動がなかった。
「………はぁ。作業終わったぁ〜」
背もたれにもたれ、背伸びをする。
全く、何でこんなギリギリの時に作業を手伝わせるなんて…。
スマホで時間を確認すると、20時を回っていた。
「ご飯食べなぁ」
部屋から出てリビングに向かう。
まとめていた髪を下ろし、クシャクシャと頭をかいた。
「あら、お疲れさん」
「んー」
「も〜。目にクマできてんで、また夜遅かったん?」
「ちょっとなぁ。今日も遅なるけど心配せんといて、お母さん」
今は実家暮らしで、親子3人と猫1匹で料理屋兼住宅で暮らしている。
「ん?なんや、小豆。チュールは上げへんで」
小さくニャーと鳴き、脚にスリスリとして近づいているのは、我が家癒し、黒猫の小豆だ。この様に足元にスリスリしてくるのは、おやつの要求をしているのだが、今、小豆はダイエット中なのである。お母さん曰く、病院の先生に太り気味だからと注意を受けた。
「ダーメ。もうすぐご飯やから我慢して」
お母さんはキッチンで鼻歌を歌いながら楽しそうに料理をしている。お父さんは、お店があるからおらんし、お母さんと私だけ。あと、猫1匹。
テーブルに着くと副菜が盛られた小鉢が沢山あった。
金平、煮物、おひたし…。今日は焼き魚かぁ。
私の考えは的中し、今晩はブリだった。
小豆はお母さんからブリを一口貰い、美味しそうに食べている。
「咲良。好きなことを頑張るのはええけど、あまり無理をせんといてね」
心配そうな顔つきで言われた。
「大丈夫やって。今まで倒れるようなこと無かったやろ。だから心配いらないよ」
そう言いながらお味噌汁を啜り一息つく。
「ホンマかなぁ」
「ホンマやって」
ゆるい会話が続く。
ご飯に気を取られいると、突然テレビから『今人気の芸能人特集』がやっていた。
横目でチラリと見るが興味が無かった。
「あっ!茜くん出てはる!」
そう言ってお母さんがテレビの音量を上げた。
ー今人気の若手男優「燐道 茜」さんです
ーこんにちは〜
そこには明るく気さくに手を振る若い男性がいた。
周りのお客さんは『キャー!!』と黄色い歓声が聞こえる。
「かっこええなぁ。顔小さいし」
お母さんはうっとりとテレビを見ている。
かっこいい?よく分からへん。そこら辺の人と一緒ちゃうの?
ー茜くんは休日何してるんですか?
ーそうですねー。…ゲームとか良くしてます。他の人達と一緒にゲームやったりしてますよ。
ーそう言えば、SNSなどでゲームの話をなさってましたね。
ゲーム…。どうせ、趣味レベルの人だろう。
「ごちそうさまでした」
食べた食器を食洗機に入れ、ソファーに座り携帯をいじっているとDisucord《リスコード》から連絡がきた。
<早く来い!
<待ってるからな!
そろそろ時間かと思いながらソファー立ち上がりお母さんの元に行く。
「仕事の時間だから行くね。おやすみ」
「はいはい。頑張ってらっしゃい。おやすみ咲良」
リビングを出て、自分の部屋に向かう。
途中で髪を適当に束ね、部屋のドアを開ける。
「さてと、始めますか」
椅子に座りパソコンの電源を付け、みんながいるチャットに入った。
自分が自分でいられるのはゲームの中だけ。でも最近、自分が自分でいられているか不安で仕方ない。
Rさんとゲームしたい。
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