第3話:共鳴者

次の日、特に会話もすること無く淡々と授業を受けていた。

放課後、互いに察するように人がいなくなるまで俺達は帰らずに残っていた。


「…昨日の話。」

「ごめんね、昨日は。僕が北条さんに話してもらうように頼んだんだ。」

「…お前があっちの世界のヤツだって事も、警察と組んで何かできる位の権力を持ってる事も知ってるが…お前は何者なんだよ?」

ミドリは斜め上を見つめて少し考えた後、

「うーん、僕も自分が何者か説明するのがすっごく難しいんだけどね…。」

「とにかく、僕は君を勧誘しにこっちに来たんだよ。」

勧誘?

「そうそう、昨日さ、もう1つの世界が君たちの世界を滅ぼそうとしてたらどうする?って聞いたでしょ。君にはそれを阻止するための…ヒーローになってほしくって!!」


沈黙。

自分の境遇から、非現実的なものへの耐性はあるはずだったが

いくら考えてもツッコミどころが多すぎる。


「…整理させてくれ…。まず、滅ぼすってところから。」

「えーと、北条さんから聞いたよね?神隠しの原因はこっち…僕がいたもう1つの世界にあるってさ。」

「実は僕も詳しいことは余り知らないんだけどね、君たちの世界から人を攫ってる奴らがいるんだよ。そんなのが続いたら君たちの世界って滅亡しちゃうでしょ?…という感じで、誘い文句にはスケールが大きい方がいいかなと思って言いました。」

「…てことは別に滅ぶのが決まりきってる訳じゃあねえってことだよな。」

「んー、まあ現状ではそうなりますな…。」

てへてへとしている態度にイライラするが、露骨にぶっ飛ばすこともできない。

(強いし、男だけど顔が可愛いすぎるので)


「じゃあ、ヒーローってのは?」

待ってました!と言わんばかりに、ミドリは派手な装飾が施されたトランクをロッカーから持ってきた。通学用の鞄とは別に、いつもこいつが持ち歩いてるものだ。


開かれたトランクの中には、沢山のきれいな石…、宝石のようなものが等間隔で並べられていた。

「宝石か…?お前、詐欺師とかそういうヤツなの?」

「違うよ!これはめつりゅうの…えっと、様々な力を与えてくれる魔法道具みたいなやつだよ!」

頭の中で、日曜の朝にTVでやっているような子供向け番組を思い浮かべた。

「へんしーん。」

俺はそれっぽいポーズを真顔で取った後、

「アホらしい。帰る。」

鞄を手にして立ち去ろうとした。

「待ってよ!それで大体合ってるんだって!」

「…見せたほうが早い?」

振り返ると、ミドリの前でさっきの石が光り輝いたのが見え…

それはいつの間にか、バカでかいハンマーになってミドリの手に握られていた。


「じゃーん!見て!これが僕の武器なんだよ!」

思わず鞄を手放してしまう。

「…おま、お前それ…どっから…てか重くないのかよ!!」

「うーん、持ってみるー?」

恐る恐る、ミドリの持つハンマーを受け取った瞬間。


ガシャーン!!


重さを感じるも一瞬、あっという間にハンマーの先は床に落ち、俺の椅子を破壊していた。

「ありゃりゃ、壊れちゃったじゃん。」

「あーー!!重すぎだろ、お前、こんなのなんで平気で持てるんだよ!!」

「これもこの力の賜福っていうか、まあ、結構怪力なんだよねえ。まあ、せっかくだから見ててよ。」

ミドリがまたハンマーを振り上げ、壊れた椅子に振り下ろした。

すると、今度こそ木端微塵になると思われた椅子が、どんどん…

「直っていく…?」


そして、椅子は元通りになった。

魔法?手品?幻覚?確かにあっちの世界では、そういった物が存在してもおかしくはないような気がするが。

「これが僕の能力だよ。トンテンカンすれば物を壊せるし、材料があれば直せる。もちろんハンマーで打撃もできるけどね。この石から貰ったのさ。」

トンテンカンどころか一振りしかしてねえじゃねえか。というツッコミは留めておいた。

するとハンマーは緑色の石に戻ったかと思うと、ミドリの手のひらに消えたのだった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る