3話
——チャイムと共に物理の授業が始まった。
今回の授業は物理教室での実験。2種類の重さの異なる重りをある程度の高さから落下させ、記録テープによりそれぞれの加速度を調べるという内容だ。実験は男女2人ずつの、4人グループで行われる。
メンバーはというと、俺と細川さんと『控え目だが地味に面白い男子』大澤と『部活はガチだが普段は地味な女子』信濃さんとなっている。
まず初めに、教師から実験についての大まかな説明があった。結果がどうなれば実験が成功なのかは伝えられなかったが、おそらく『どちらの重りも加速度が等しく、実はそれが重力加速度なんだよ』ということが伝えたいんだろう。まあ、2種類の重りの形状も異なるし、そもそも俺らが実験を行っても必ずミスって誤差が出まくるだろう。
そんなことを考えながら作業に入った。
まずは実験装置の組み立てからだ。机のうえにスタンドを置き、そこに記録装置を設置する。
ってえええ―――――!?!?
ここでまさかの細川さんが急接近してきた。俺が記録装置を固定しているところの補助にきたつもりだったのか、ひょこっと俺のすぐ隣に現れた。
あまりの出来事に心臓をバクバクさせていると、次は手を重ねてきた。さっきのことで俺の手元が不安定になっているところを支えてくれたようだ。
顔がみるみると熱を帯びていくのが分かる。
「遠野くんどうしたの? 顔赤いよ?」
どうやら細川さんに気づかれていたようだ…… 幸いにもグループの他の2人は別の作業で盛り上がっている。急な細川さんからの不意打ちに頭が混乱していると――
「えへっ 変なの~~」
と言って細川さんは笑顔で去り、大澤と信濃さんの元へと向かって行った。
その後は心臓を落ち着かせながらも作業を進め、なんとか実験装置を完成させた。
すると細川さんを含む他の3人も作業が完了したようで、俺たちは早速実験へと移った。
俺はしゃがみこみ、装置を下から見上げる。
まず大澤が靴を脱ぎ、机の上に上がった。そして重りを持つ。あとは記録テープと装置の摩擦を小さくするために……
って、ええ?! 大澤がなんの前触れもなしに急に重りを手から離しやがった。
が、落とす位置が大幅にずれたようで、記録テープと記録装置との間で凄い音を鳴らしながら、重りが暴れだした。
するとそこへ、重りを受けに行ったつもりなのか、細川さんが飛び出ていく。
——どうやら重りは確保したようだ。
っと次は装置の下に置いてあったクッション用の雑巾にスルっと足を滑らした!
まるでアクション映画のワンシーンのようだったので眺めていると——
っっっ?! こっちに向かってきた?!
瞬時に、どうすれば回避出来るか思考を最大出力で回転させ考える。
そして俺はただ1つの結果に辿り着く。
——無理だ! ならば最適な対ショック姿勢をとらないt
バタンッ……
俺は後ろへと倒れ、頭を打った。しばらく頭がクラクラとしていたが、時間が経つと次第に収まった。が、
——なんか重い。
思わず目を開けると、俺は細川さんに上に乗る形で抱かれていた。そして泣きながら何かを叫んでいる——
「遠野くんごめん…… 私のせいでぇええ… うええぇぇん! あたしのばかぁぁ!!」
どうやら必死に謝ってくれているようだ。
これには心苦しく思ったので、
「細川さん? 別に怪我してないし、
大丈夫だよ…… あと、そろそろ降りてくれるかな?」
普通に重いのもあるが、何より、この状況はかなりまずい。学年トップクラスの美少女に抱きつかれることは幸せだが、他の男子に見られると嫉妬により最悪いじめられるかもしれない。とは言っても時すでにお寿司。クラス中から視線が向けられている。
「あ、ごめん! 重かったよね…… 本当にごめんなさい……」
すると細川さんは俺の上から降りてくれたのだが、次は急に顔を近づけてきた。
鼻が触れ合いそうな距離である。細川さんの目は涙目になっていた——
当然、心臓はバクバクである。そんなときに細川さんが、
「遠野くん。何でもしますから…… さっきのこと許してくれますか……?」
と、上目遣いで言われたので意識が飛んだ。その後の記憶は全く無い——
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