第6話ハーフエルフ事件

 次の日、森の洞窟内でレベル15~20のスケルトンを狩っていた。次のFクラスのクエストである。カムイとクロウが前衛に出て暴れ回っている。イオナが特技スキル水霊召喚で水の圧力でスケルトンを吹き飛ばしていた。ナーゼは切り込み隊長で細剣の連撃でスケルトンアーチャーを突き崩す。スケルトンメイジには、ビックスライムと武装したラットマンと大剣を持って鎧を着こんだゴブリンキングが相手をしていた。スケルトンメイジは火球を放ってくるが、私が勇気を出して割り込み、特技スキル呪い反射で逆に詠唱主や周りを炎上させていた。私は闇魔法を試そうと、詠唱を始める。

『暗き闇よ、爆発せよ』

 単純な短縮詠唱でナーゼの力が流れ込んでくる。数体のスケルトンを闇の衝撃で爆発させ破壊する。戦闘もそろそろ終わりだ。この洞窟は冒険者の練習用に開放されている。ビックスライムが、スケルトンの骨と装備を食べて回収する。私は短剣で突き刺し呪いをかける

 スケルトンキングレベル40 魔物

 HP2057       

 MP2964      

 力236         

 速さ478                               

 体力564         

 器用478         

 魔力546       

 幸運869           

 スキル同期レベル10

 スキル夜目レベル9

 スキル鑑定レベル8

 魔法火、闇

 耐性呪いレベル10

 耐性物理攻撃

 耐性魔法攻撃

 特技スキル再生

 特技スキル絶対防御              


 スケルトンの三倍もあるスケルトンキングは上出来な収穫だった。特技スキルがまたいい。

「昇陽様、影に入っています、よろしく」武装したスケルトンキングは影に入る。

「さてどうしようか、この場所のモンスターは狩りつくしてしまったから、アンデットだから、また出て来るよね」

「昇陽、さっきの闇魔法は良かったわ、魔力が吸い上げられるけど、初歩的な物なら大丈夫」

「そうか、ナーゼ、相手の魔力を使うね、今度から気をつけるよ。特技スキルは問題ないね」

 口から火炎の息を吹く。

「だんだん、人間離れしていくようだよ。仲間が増えて嬉しいけどね」

「これから、町に帰りますか?ドラゴンを相手にするなら味方は多い方がいいですけど」

 クロウは意見を述べる。

「今日は一端冒険者ギルドに戻って、クエストの確認をしよう。仲間が増えそうだしね」

「そうしますか、Dランク試験、楽しみですな」

「私も力になれるなら、頑張ります」

 カムイとイオナも安心させてくれる。

 

 一端町に戻ると冒険者ギルドの受付に向かう。

「あ、昇陽様スケルトンは仲間にしましたか?召喚術師にはちょうどいい狩場だったでしょう」

 受付嬢のお姉さん、アンネさん、ようやく名前を聞けた。というより才能を見込まれて名前を覚えられたというほうが正しい。忙しく立ち働いているのを見ると、精神病院の自堕落な生活が痛く思える。かなりの仕事人で、若いのに受付嬢レベル32ある。

「それが、また合体してスケルトンキングになりました。スケルトンの三倍はあります」

「それはもう中ボス的な何かですね、昇陽様は不思議な才能をお持ちです。お世話のしがいがあります。もうひとつ、Fランククエスト受けてみませんか?昇陽様が来て仕事が進むので、ありがたいくらいです。ギルドは常に人材不足ですからね。頑張って下さい」

 笑顔がまぶしいアンネさんだった。


「それじゃあ、もう一つクエストをお願いします」

「う~ん、採取系ですか、探索系ですか、討伐系は出払っていて残っていません。ああ、これなんてどうです。ハーフエルフの探し人のクエストです。エルフは珍しいので、奴隷にされがちですよね」

「私、受けてみたいです。同じ奴隷出身として、助け出したいです!!」

 イオナは勢いよく体を乗り出す。

「いいですよ、冒険者として助け出すのは良いことですが、情報だけで、金銭のやり取りは依頼主がするそうです。それでも良ければ受けますか?」

「はい、受けます、ハーフエルフも奴隷にされがちですね、差別とか偏見ですか?高く売れるとか?」

「裏では高値で売買されています。冒険者ギルドとしても見過ごせないですね。情報だけでいいので、探索系の前金は受け取っています。何でも仲間のハーフエルフが奴隷に売られたとかで、冒険者としての実力はあるそうです」

 

 私はクエストを受けて、特技スキル呪い霊召喚を呼び出す。また、ドローンの様に飛ばしてみる。壁抜けもできる。酒場で待ちながら町の隅々まで探し回ると、邸宅の牢屋で軟禁されているのを見つけ出す。鎖で繋がれていてぐったりした様子だ。衣服も簡素な物しか着ていない。他にもハーフエルフが二十人くらい捕まっている。商売用のようだ。

「どうしようか、冒険者ギルドに一度報告して見ようか?犯罪者の摘発になるかもしれないから」

「そうね、そうした方がいいわね。この町にも大規模な闇取引があるのね、冒険者ギルドに報告しましょう」

 ナーゼ達が賛成する。


 冒険者ギルドに行くと、アンネさんは「困りましたね、あそこは貴族派閥の屋敷ですよ。冒険者ギルドとしては見過ごせないですが、問題になりますね。ちょっと打ち合わせて来ます。ギルドマスターも今日はいることですし、相談して来ます」

 職員で会議をしているようなので、待つことにした。

 程なく待つと「決まりました、冒険者ギルドとしては依頼を探索系から摘発に変えます。それと戦力ですが、昇陽様達の力もお借りできないかとギルドマスターも申しています。召喚術師ならEランクでも十分戦力となりますので、クエストに数えられます。報酬は金貨二百五十枚ですが、受けられますか?」

 きらきらと期待するような目で見られる。

「いいですよ、こんな犯罪があるのがおかしいですから、力を貸します」

「そうですか、受理しますね、Dランクの試験が楽しみです。なるべく殺さず、取り押さえて下さい。頑張って来て下さい」


 私達は打ち合わせをする。表玄関から、ビックスライムとラットマン、ゴブリンキングとスケルトンキング、私とナーゼが陽動で敵を引きつける。裏口からクロウ、カムイ、イオナで地下の牢屋のハーフエルフを助け出す計画だ。昼間だが、冒険者ギルドの許可は取ってあるので、踏み込むことにした。

 豪華な玄関の邸宅で突然スケルトンキングが現れ火球を連発する。ビッグスライムとラットマン、ゴブリンキングが門を破ってなだれ込む。ビッグスライムは火炎の息を吐いた。

「なんだ、街中にモンスターが、侵入してきたぞ!!?」

「商品を隠せ、迎え撃て!!!」

 切り込み隊長のナーゼが細剣で構成員の肩を貫いていく。ばたばたと倒れる男達、私は闇魔法の衝撃波で男達を吹き飛ばしていく。ビッグスライムが構成員を体内で溶かして、ラットマンが、剣で切り裂いている。ゴブリンキングは大剣を振り下ろして、吹き飛ばしている。スケルトンキングは物理攻撃をほとんど通さず、握っては投げ捨てていた。門の中は混乱状態である。


 その間にクロウ達が裏口から侵入して、疾風迅雷と金剛力、水精召喚で敵を切り裂き殴り飛ばして、吹き飛ばしている。

「なんだ、こいつら、いつばれた!!?」

「殺せ、商品を確保しろ!!!」

 クロウが『疾風よ、逆巻け』風の魔法を短縮詠唱して疾風迅雷の特技スキルに重ねる。凄い速さで扉を蹴破り、地下まであっという間にたどり着く。見張りを切り裂くと、ハーフエルフの少女達が首輪を鎖で繋がれている。追いついてきた、カムイとイオナは、鍵束を手に入れて、救出する。なだれ込んできた構成員を、カムイとイオナは『光よ、あれ』短縮詠唱で爆発的な光の魔法で目をくらませる。その間、クロウが疾風迅雷で敵の真ん中で切り裂くダンスを踊る。血を流して倒れこむ男達。三人は裏口からハーフエルフを救出して行く。


 そろそろいいかもしれない。呪い霊召喚で見ていた。

「ナーゼ、ハーフエルフは助け出した。後は制圧戦だ。一人残らず行動不能にしろ」

「それはいいけど、強敵が現れたわよ。暗殺者みたい」

 ナーゼは飛び退くと黒いナイフが首筋のあった場所に走る。姿は見えない。鑑定では暗殺者レベル50ある。ナーゼと戦っているがいい勝負だ。小柄で小人族と鑑定スキルでは出ている。闇魔法で牽制するも早過ぎて対応できない。ナーゼに当たってしまう。私は火炎の息を吐く。木の上に避難する暗殺者、突然投げてくるのが鑑定スキルで爆弾とわかる。クロウの疾風迅雷でかわす。かわさなくていいが、怖かったのだ。やはり肉体的に負荷がかかる。

 絶対防御が良かったか、呪いで仲間にできるが、慎重に行きたい。ナーゼは『爆炎よ、混ざってはぜろ』短縮詠唱で細剣に火の爆炎魔法をかける。細剣を振って爆炎の花を咲かす。逃げ場所を許さない。


 爆弾使いの暗殺者は小型携帯爆弾をばらまき逃走しようとする。連続して火炎が爆発する中、黒い猫人の運動能力で、特技スキルハートオブキルを暗殺者の肩口に突き刺す。即死スキルで小人族の心臓が止まる。虚ろな顔をして倒れこむ暗殺者、黒い装束でまるで忍者のようだ。

「昇陽様、制圧終わりました」

 スケルトンキングが報告して来る。ビックスライム達も無事だ。

「昇陽、この子仲間にしましょう、爆弾使いなんて珍しいわ」

「え、女の子なの、レベル50はあるよ」

「プロの暗殺者でしょう、相当修練を重ねているわね、ちょうどいいわ、短剣を」

 私はびっくりしながら、短剣を死体に突き刺す。呪いが体を回り始める。

 小人族の女の子は起き上がり礼をして「、どうぞ、ご自由に」

「じゃあ、カグヤで」

 カグヤレベル57 暗殺者

 HP3378        

 MP5746       

 力330           

 速さ978                             

 体力621          

 器用879       

 魔力564        

 幸運1509           

 スキル同期レベル10

 スキル夜目レベル9              

 スキル鑑定レベル8

 魔法火、闇

 耐性呪いレベル10

 耐性物理攻撃

 耐性魔法攻撃

 特技スキル暗殺者歩法

 特技スキル隠形術

 特技スキル爆弾作り


 呪いで力がさらに上乗せされている。

「呪いで臣下となりましたカグヤと申します。よろしくお願いします」

「よろしく、カグヤ、情報は同期スキルでわかるね」

「はい、用心棒をしていたので。嫌な仕事でしたが任務でしたので、これからは昇陽様に一生の誓いを立てます」

「とりあえず、冒険者ギルドに行きましょう。昇陽」

「私は主人の影に隠れています、いつでもお呼びを」

 カグヤ達は影に吸収される。集まって来た町の人を抜けて冒険者ギルドに向かう。


 アンネさんに報告すると、警邏隊が屋敷を取り調べしているらしい。どうやら、町のハーフエルフ専門の奴隷商会だったようだ。カグヤの情報を合わせて報告すると、貴族が大きなお客様だったらしい。隷属奴隷というやつだろう。書類はカグヤが全て破棄してしまっていたので、本人から直接報告させる。

「昇陽様、レベル57の暗殺者も召喚対象にしてしまったのですか、すごいですね、軒並み昇陽様達のレベルも上がっていますよ。情報はギルドマスターに報告します。ご苦労様でした。報酬はこちらです。後、Dランクの試験は明日行います。ハーフエルフの探し人も達成ですね。冒険者仲間から礼状とお金が届いています。俺達の仲間を救ってくれてありがとうと礼を述べていました。近いうちに会うかもしれませんね、明日の試験頑張って下さい」

 

 アンネさんに見送られて、宿屋に着く。相変わらず酒宴が始まり、カグヤも普段着でなって飲んでいる。影に料理や酒を与えながら、カグヤは孤児で子供の頃からフリーの暗殺者だそうだ。爆弾の技術や隠形術、色んなものを磨いてきたらしい。今の所、ナーゼの次にレベルが高い。貴重な戦力が入ったものである。レベルを見るのは明日にして、今日はいいことをしたと、クロウ達もよく飲んでいた。ナーゼはスキルと魔法のかけ合わせも重要よと話していた。カグヤが仲間入りして、Dランクの試験が始まる。

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