第5話モンスター達との酒宴
私達は町の外にある平原に出る。
森の外でスライムを相手に戦闘を試そうとした。私は特技スキル呪い霊召喚を早速試みる。『呪い霊召喚』透明な私だけに見える呪い霊が現れる。姿は尾の大きなリスのようで中々可愛い。どきどきしたのが損のようだ。平原をドローンの様に飛び回りレベル1のスライムの集団を見つける。
五人は忍びより、草むらから出て攻撃を加える。ナーゼは細剣で貫き、クロウは疾風迅雷を使うまでもなく簡単に突き刺し、カムイはスライムを蹴り下して潰している。イオナは魔法の杖で殴りつけている。私は短剣でスライムの攻撃をかわして、突き刺している。あっという間に十匹どころか、四十九匹は倒してしまった。初心者のクエストは簡単すぎたようだ。
スライムの死体を集めて突き刺すと呪いの力で蘇る。ぽこぽことスライムが話してくる。
「昇陽様、後一匹倒してください、呪いの力で融合巨大化します」
後一匹見つけて止めを刺すとビックスライムになる。
ビックスライムレベル20 魔物
HP1027
MP679
力114
速さ106
体力203
器用212
魔力194
幸運657
スキル同期レベル10
スキル夜目レベル8
スキル鑑定レベル7
魔法火、水
耐性呪いレベル10
耐性物理攻撃
耐性魔法攻撃
特技スキル弾性
特技スキル火炎の息
「昇陽様よろしく、影に入っています」
スライムより巨大なビックスライムは私の影に吸い込まれた。
「びっくりした、モンスターも呪いで仲間にできるね、色んなモンスターを育てるのかな」
私はいつになくわくわくしている。
「あなたは生と死を司る、モンスターも仲間にできるのはいいわね」
イオナはほっとしたように話す。
「残りのクエストも平らげてしまいましょう。仲間が手に入るかもしれないわ」
ナーゼもほっと安心している様子だ。
町の下水道でレベル5のラットマンを倒す。カムイが金剛力で吹き飛ばしていた。ビックスライムが死体を食べて集める。
ラットマンレベル25 魔物
HP1267
MP356
力156
速さ207
体力210
器用197
魔力108
幸運564
スキル同期レベル10
スキル夜目レベル9
スキル鑑定レベル7
魔法水、風、闇
耐性呪いレベル10
耐性物理攻撃
特技スキル壊疽毒
特技スキル黒死病
次はゴブリン退治に行く。レベル5~15はある。クロウの特技スキル疾風迅雷で倒してしまう。イオナも特技スキル風精召喚の風で切り刻んでいた。ラットマンはゴブリンから奪った剣と盾で切り結び倒していた。ビックスライムは死体を回収して食べてしまう。
ゴブリンキングレベル35 魔物
HP1567
MP564
力186
速さ226
体力387
器用237
魔力256
幸運564
スキル同期レベル10
スキル夜目レベル9
スキル鑑定レベル7
耐性呪いレベル10
耐性物理攻撃
特技スキル悪食
特技スキル悪知恵
三体の魔物を仲間にした。三つのクエスト完了である。
「昇陽様、私達は影に入っています」
「昇陽様、これからよろしくお願いします」
ラットマンとゴブリンキングが影に収まる。町の冒険者ギルドに帰還すると、いつもの受付嬢のお姉さんにクエスト達成の印に、三体の魔物を見せる。冒険者達は騒然となったが、私のことを召喚術師とお姉さんが説明してくれて安全だと確信したら、腕のいい召喚術師と納得してくれた。というよりラットマンがイオナを、ゴブリンキングがカムイのレベルより上だったということに驚かれた。才能ある召喚術師として名が売れ出した。
「昇陽様、冒険者ギルドは階級制度があります。S、A、B、C、D、E、F、G、のランクに分かれています。新人はもちろんGクラスですが、昇陽様の成長度からいって、Eランクは確実です。昇級なさいますか?Dランクから試験が課せられます。Dランクのクエストを受けるには試験を通らなければいけません。試験を受けますか?」
「受けるよ、課題は何だろう?」
「試験には冒険者としての責任と世界への秩序の貢献度が試されます。腕も必要ですが、歪んだ思想を持つ者や、犯罪者はDランクになれません。厳しい倫理感と正義と行動が必要です。そして、Bランクの冒険者の査定が入ります。試験は後日となりますので、今日はお帰り下さい。日時はまたお知らせします。今日はご苦労様でした。昇陽様担当として期待していますよ」
飛び切りの笑顔で送り出された。お姉さんは上手く仕事をこなしているなと思い、上手く対応できない自分とは出来が違うなと思い、報酬を貰い宿屋に帰った。
前の宿屋の一階の酒場で打ち上げを始めた。カムイは信仰で飲まないらしい。イオナは真面目だが飲まないとやっていられない過去があるらしい。ナーゼは余裕でついて行く。クロウも元狼と思えない程酒豪だ。私は料理や酒をばれないように影に沈めていた。
「静かに飲んで食べなよ」と断って影に与えていた。
「しかし、私達は運がいい、良い主に出会えたこの日を感謝します」
カムイは祈りを捧げていた。やはり主食は肉らしい。肉の塊が不思議なほどテーブルから消えていく。
「わ、私は、今日、い、命を助けられたばかりか、き、奇跡を見ました。エルフ族を、代表して感謝します」
イオナは酒に弱いらしい。完全に酔っている。エルフ族も酔いたい時があるなと不思議に納得する。
「そういえば、ドラゴンを仲間にするのでは?」
「そうよね、当面の目標はそれだったわね」
酒豪のクロウとナーゼは完全に素面に見える。
「いや、もっと慎重に行こう。仲間を集めて戦いを挑もう」
私もかなり酔っているが目が座っているわよとナーゼに言われる。
前の酔っ払いも噂を聞いたのか寄って来る。
「おい、坊主、前は悪かったな、お前の実力は本当だった。でよ、俺達と組まないか、いい儲け話があるが、一口乗らないか」
「お前達、主人を愚弄してまだ飽き足らないか!!!」
カムイが立ち上がり、その巨躯で叫ぶ。
「ひいいいいいいいい」
三人は飛ぶように酒場を飛び出して行った。
「悪だったみたいだね。外でどうにかして連れ出せないか話しているよ」
特技スキル呪い霊召喚で見聞きしている。
「そういえば、ナーゼ魔法のやり方はどうすればいい?」
「ああ、後で教えてあげようと思ったけど、魔法は火、水、風、土、光、闇の六種あるわ。光と闇が稀よね。火は一番基本的で一番覚えやすいけど、今の昇陽は魔法が呪われているから、闇魔法の習得から覚えた方がいいわね。スキルに乗せることもできるから、魔法を使えると便利で戦いの幅が大きく広がるわ」
「闇魔法か、まだ覚えていないから、後回しにしたほうがいいかな?」
「そうね、まず、身体能力も磨いたほうがいいわ、仲間を増やすと呪いが増えて、流れ込んでくる力の総量も上がるから必然的に扱える魔法も増えるわ」
「火の基本は『灯りよ、光れ』の詠唱だったね」
「今は使わない方がいいわよ、この宿が火事になるから」
「そこまで―――強力なのか、今は封印して置こう」
「懸命な判断ですね、イメージとして送るとこうなります」
クロウが同期スキルを使ってイメージを送ってくる。
「な、中々強力だね、炎が黒い物!!?」
「全焼ですよ、まだ使ったら行けませんよ」
「ああ、そういえば、仲間の特技スキルや魔法は使えるわね、私もうっかりしていた」
「ということは、ナーゼとラットマンの闇魔法が使えるね」
酒が入るとやはり違うのかナーゼもうっかりしていたようだ。
「とりあえず、話は明日にして、飲み直そう」
「そうね、久しぶりの肉体にお酒はおいしいわ」
「ナーゼは女神の仮初だよね、そういう感覚もあるのか……」
「ま、まあ、そういう場合もあるわね、うん」
「さすがに日本人は下戸が多いから、私も酒にあまり強くない」
テーブルに突っ伏して眠ってしまう。今は仲間と良い酒が飲めることに感謝しなくては、ナーゼの異世界生活のお陰である。それを愛おし気に見つめる黒い猫人と仲間達がいた。
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