第4話新しい仲間

 朝目覚めると、頭が痛い。完全に二日酔いだ。ナーゼが部屋に来てくれて、酔い覚ましの薬と水を渡してくる。


「昨日は嬉しかったわ、昇陽。今日のクエストはどうする?ドラゴンを探してみる?」


「いや、呪われているなら冗談じゃないし、あいたたた、頭が痛い、この薬ありがとう。少し気分が良くなるよ。それにドラゴンもいいけど昨日気になった場所に行きたい」


「奴隷商の所よね、商館があったわ」


「この呪いが生と死を司るなら、このスキル可能性があるかもしれない」


「昇陽様、支度手伝いましょうか?初めての酒の味は格別でした。また一緒に飲みたいですね」クロウが平気な顔で入ってくる。酒の味には文句なかったけど二日酔いもない酒豪と一緒にしないで欲しい。酒豪と言えばナーゼがクロウを潰していた気がする。気のせいだろうか。


「それと、装備品を整えたい。武器防具屋に行かないか?」


「いいわね、盗賊の物品も売ってしまいましょう」

 ナーゼは賛成する。


「いいですよ、朝食を食べたら行きましょう。ドラゴンを騎士仲間にしましょう」

 二人とも本気らしい。冗談でも私ならできるかも知れない。多少度胸がついた。昨日の出来事のお陰だろうか?僕にも守るものが出来た。それだけで精神病院の十年の歳月から救われたような気がした。


 奴隷商の商館に訪れる。

 応接間は見事な調度品で、商人はこちらを品定めしている感じだ。鑑定スキルで『奴隷商レベル54』はある。やり手の商人らしい。

「それで今日はどんな奴隷をお求めですか?」

 傍に立つ女奴隷は若く清潔で綺麗な顔と、豊満な体をしている。

 私はそれを見て決める。

「こちらに廃棄寸前の奴隷はいませんか?」

「廃棄寸前!?病気や怪我で死ぬものは商館で管理されています。そのようなものをお客様にお譲りすることは出来ません」


「私は召喚術師です。契約した人を癒す力があります。それで、今日は誰が廃棄されるのですか?」もちろん嘘だがナーゼに聞いた召喚術師のレベルでは出来るらしい。

 商人はメイドから帳簿を持って来させて、急いで読んでいく。

「腕を失った、熊人とエルフがいますが病気で三日ほど前からいつ死んでもおかしくありません」

「ではそれを買い取らせてください。二人で幾らになりますか?」

 商人は悩んでいる。

「廃棄寸前とは穏やかではありませんが、商売なら協力しましょう」

「二人を見せてください。話はそれからです」


 地下施設に案内されると、奴隷が監禁されている。不潔ではないが、先ほどの二人のほかは廃棄されたのだろう。奥の方で熊人の男が力なく頭を垂れている。その両腕はない。もう一つを見るとエルフだが、病気なのかやせ細って、腐っているのか肌が黒ずんでいる。

「本当によろしいのですか、健康な奴隷も紹介できますが……」

「この二人は幾らになりますか?」

「本気ですね、銀貨四枚で結構です」


 ナーゼが支払うと、クロウと一緒に熊人とハイエルフの監禁されている中に入る。

「熊人さん、あなたにもう一度両腕を与えることが出来る。ついてくるか?」

「何を言っている、俺はもうすぐ処分される。だがもう一度戦えるなら味方になろう」

だ」

 熊人の汚れた体に触ると、黒い呪いが体を覆い両腕が再生していく。

「なんという名前だ」

「いいつけてくれ、これでまた、神の信仰に身を捧げられる。願ってもない」

「じゃあカムイで」

 カムイレベル33 武僧

 HP1546       

 MP1028       

 力202             

 速さ257                              

 体力487          

 器用652         

 魔力325         

 幸運564         

 スキル同期レベル10

 スキル夜目レベル8

 スキル鑑定レベル8

 魔法火、水、風、土、光

 耐性呪いレベル10

 耐性物理攻撃

 耐性魔法攻撃

 特技スキル金剛力

 

 意外と武僧として呪いの力で底上げされているが強かったらしい。

 次はエルフの所に行き、聞いてみるが答えられない。カムイが『ヒール』と回復魔法を唱える。

 少し血色の戻ったエルフは、一部始終を見ていて、「助けて」とかすれ声で話してくる。

「いい、わ」

 エルフの手を握りしめる。

 イオナレベル24 精霊使い

 HP689         

 MP1245       

 力94             

 速さ167                              

 体力224          

 器用546         

 魔力878         

 幸運437         

 スキル同期レベル10

 スキル夜目レベル8

 スキル鑑定レベル8

 魔法水、風、光

 耐性呪いレベル10

 耐性魔法攻撃

 特技スキル水精召喚

 特技スキル風精召喚

 

 エルフの精霊使いが呪いの力で底上げされている。肌の色も健康体になっている。

「信じられない、病気で死にかけていたのに……」エルフは自分の肌を見る。

「昇陽様、おめでとうございます。廃棄寸前の奴隷を復活させるとは、その魔法はどれくらい使えるのです?」

 奴隷商の商人が商売顏を張り付けている気がする。

「残念ですが二人分ですね。無限に復活できませんから」

 商人は残念そうにうなだれると「そうですか、良い買い物をされましたね」

「無茶を言ってすみません。召喚術師として修業中なので今回はありがとうございました」

「いえ、貴重なものを見られて勉強になりました。また奴隷がご入用ならお越しください」

 商人はさすがに明るく笑顔を顔に張り付けたまま見送ってくれた。


 二人の服を購入して商館を出て行く。

 目立ち過ぎただろうか、私達とカムイとイオナは同期スキルで情報を共有している。便利すぎるが、隠し事もできる。プライベートなことは秘密になるらしい。呪いでも信頼を勝ち取ってからという訳らしい。

「昇陽様、カムイと言います。ご存じの通り、俺達二人は昇陽様の呪いで生かされています。これからよろしくお願いします。私は大地母神教の武僧で、ある奴に両腕を斬り落とされ奴隷に落とされました。敵討ちをしたいです」

「私は奴隷商に捕まって売り飛ばされる所を流行り病にかかり、廃棄寸前でした。感謝します。例えそれが呪いの力でも、昇陽様は人助けしていますよ。精霊使いなので、呪いでも精霊が答えてくれると思います。エルフです。名は失いましたがよろしくお願いします」

 昇陽レベル12 呪い師

 HP220         

 MP500                   

 力45

 速さ90         

 体力118         

 器用78         

 魔力245       

 幸運0           

 スキル呪いレベル10

 スキル鑑定レベル10

 魔法火、水、風、土(呪われている)

 耐性呪いレベル10

 耐性物理攻撃

 耐性魔法攻撃

 特技スキル呪い霊召喚

 特技スキル呪い反射

 

 ナーゼレベル54 剣士

 HP3078       

 MP7274       

 力301           

 速さ586                               

 体力648          

 器用938        

 魔力675         

 幸運1256           

 スキル同期レベル10

 スキル夜目レベル9

 スキル鑑定レベル10

 魔法火、水、風、土、光、闇

 耐性呪いレベル10

 耐性物理攻撃

 耐性魔法攻撃              

 特技スキルハートオブキル

 特技スキル女神のキス

 

 レベル12とレベル54になって特技スキルも覚えた。

 呪い霊召喚と呪い反射はどういう特技スキルだろう?鑑定してみる。


 呪い霊召喚―――一体の呪い霊を召喚できる。見聞きした物がそのまま主に伝わる。

 呪い反射――――全ての魔法が呪いによって詠唱主に反射される。たびたび周りを巻き込む。


 むごい能力だった。殺戮レベルだ。いざという時以外ひかえようと思う。

 ナーゼは何かと思う。

 ハートオブキル―――一撃で心臓を止めるスキル。即死スキル。

 女神のキス―――――蘇生スキル。キスをすれば相手は必ず蘇る。(肉体の損傷程度による)

 凄い能力だった。私と連動して覚えたらしい。

「昇陽、あなたは物理攻撃も魔法攻撃も無敵になったわ。もしもの時でも私が生き返せるからね」

 頼もしい言葉をかけてくるナーゼ。


 そのまま武器防具屋を訪れると店員の女性が出てくる。

「いらっしゃい、武器防具屋のリケン店だよ。獣人の三人はともかく少年は召喚術師様だろう。昨日の酒場の一件偉かったね、サービスしておくよ」

 

 もう十代後半ですけど、鏡を見ると、確かに十代後半に若返っていた。ナーゼは話したでしょうと笑っていた。案外かわいい顔立ちをしているのねとからかわれた。


 武装は動きやすいローブ系がいいのか店員に尋ねてみる。

「レベル12の召喚術師ならそれがいいよ。売り買いも希望かい、うわっ、影から武器防具が出て来た。雑なつくりだね。盗賊の皮鎧かと剣か安上がりな作りだ。あまり高くないよ。そこの黒い猫人のローブと剣、黒い狼人の皮鎧と武器、熊人の武僧服と手甲、エルフは皮鎧とローブと魔法の杖、まとめて安くしておくよ」


「それじゃあ、見繕ってくれないか、金貨三枚で」

 色々金銭感覚がおかしいことを話してしまう。

「それじゃあ、赤字だね、金貨五十枚は必要だよ」


「はいはい、私から出しておくわ。まだ財政的に余裕があるから大丈夫よ、昇陽」

 ナーゼが足りない分を虚空から出してくれる。どこから出したのか知らないが、流石女神の仮初の力である。


 五人は着替えて、私は召喚術師のローブと短剣を、ナーゼは黒のローブと細剣を、クロウは黒い丈夫な皮鎧と投げナイフと両手の鉄の爪を、カムイ大地母神教の武装僧侶服と鎖帷子と鉄の手甲、イオナは皮鎧と下に魔法使いのローブと魔法の杖を装備した。


「毎度あり、良く似合っているよ、五人とも。お金に余裕が出来たらまた来なよ」


 手を振って愛想よく送り出してくれる。


「ごめん、ナーゼ、後お金どのくらいある?必ず返すよ」


「気にしなくていいわ、好きで出しているもの、昇陽の役に立てて嬉しいわ。それよりそのローブ似合っているわよ」


「あはは、何とか頑張るよ」


「私は鉄の爪が気に入りました。冒険者ギルドに行ってカムイとイオナの登録とクエストを受けましょう。それが恩返しになりますよ、昇陽様」


 私達は冒険者ギルドに出向く。カムイとイオナの登録を済ませる。武僧と精霊使いだ。顔見知りの受付嬢が相手をしてくれる。

「レベル33の熊人とレベル24のエルフですか、いい仲間を手にしましたね、昇陽様」

「偶然だけどね、それでいいクエストないかな」

 受付嬢のお姉さんは書類を広げる。

「初心者のスライム退治と下水道のラットマン退治、後はゴブリン退治ですね。人数とそれだけレベルがあれば大丈夫だと思います」

「まず戦って見たい、スライム退治にするよ」

「では、受付けます。スライム十匹倒せばクエストクリアです」


 私達は初のクエストを受けることにした。



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