第36話

私達の住まいはレイの住むお城になった。まぁ、元々そう言われてたけど。

まさかレイの隣の部屋になるとは思わなかったけど・・・・

ルリとスイの部屋も、私の部屋の隣でドアで繋がっている。

当然、その反対側の扉はレイの部屋に繋がっていた。

「ねえ、ルリ・・・この部屋って・・・・」

「そうですね。竜妃の部屋ですね」

ですよねー・・・レイはなんだかんだと言いながら、外堀から埋めにかかっている。

あまりの手際の良さに感心しつつも、私の気持ちの根底には嬉しさが渦巻いているのだから、飽きれてしまう。

嬉しいくせに、なんで素直に頷けないのか・・・・


「まぁ、エリ様に必要なのは陛下と腹を割って話す事ではないかと思いますよ」

グダグダ悩む私に、今まで何も言わなかったルリ達。

でも、ここでアドバイスしてくるという事は・・・後悔する前に腹を括れって事なのかもしれない。

数少ない事例からしても、多分レイに「番」が現れる可能性が高い。

そうなってからでは遅いのだと。

何を気にして何に意地を張っているのかと、多分そう言いたいのだろう。


「そうね・・・レイの時間が空き次第、話してみるわ」


城に戻ってからレイはすぐに仕事に戻っていった。

レイのお父様が執務を代わってくれていたし、転送で仕事が回ってきていたから溜まっていることは無い。

けれど、これまでの事情説明とこれからの事を話し合わなくてはいけなくて、名残惜しそうにしながらも部屋を出て行ったのだ。

豪華でだだっ広い部屋での荷解きは、あっという間に終わってしまった。

正直、観光に来ただけなのだから、大した荷物は持ってきていない。しかも、無限収納バッグに入れてきているから、ほぼ手ぶら。

侍女の方にお茶を入れてもらった後は、取り敢えず三人にしてもらって、私らは私らでこの後どうするかを話しているうちに先程の話になったのだ。

「観光もいいですけど、多分、ゆっくりできなさそうですね」

スイの嫌な予感を感じさせるような言葉に「やめてよー!」と笑っていたが、実際笑えない事が起きるとは、その時は当然わかるはずもない。


午前に帝国に入り、お昼はレイの側近達と顔合わせの為の昼食会、夜はレイのご両親に夕食に招待されている。

「観光に来たはずなのに・・・なんだか、違う気がする・・・」

確かに恋人として側近に紹介されるのは、わかる。でも、恋人というよりも、それ以上の存在として扱われている気がしてならない。

多分私が「神の愛し子」であることも関係しているんだと思うけど。

レイの側近は三人。

アルト・ブラウ。彼は伯爵令息で髪も瞳も青い、竜に変化すればブルードラゴンになるらしい。

ノルン・ロードゥ。彼も伯爵令息で髪瞳共に赤い、レッドドラゴンに。

ブライアン・ゲール。彼は侯爵令息で髪瞳共に黄色の、イエロードラゴンに変化できるようだ。

そして今回の一連の問題の起因となった使用人の主でもあるのが、ゲール侯爵家。

この件に関しては、当然ゲール侯爵家でも大きな問題となり、使用人全ての身辺調査と、侯爵家に使える者としての意識を徹底したという。

侯爵家からは何らかの罰をと求められたが、事件の徹底的な解明と使用人達の再教育をすることで、それを罰としたのだ。

使用人達の再教育に関しては、ゲール侯爵家だけではなく、側近でもある二つの伯爵家にも徹底させた。


とまぁ、そんな話でほぼ終わった昼食会。

レイは忙しくて、傍に居れない事を謝罪しながらも時間が取れ次第会いに来てくれることを約束してくれた。

そして夜は、本当はレイのご両親との夕食会だったのだが、お父様はレイ同様忙しいらしく、わざわざ謝罪だけを言いに顔を出し、そのまま出て行ってしまった。

「ごめんなさいね、慌ただしくて」

お母様は愛らしい顔を困ったように顰め、溜息を吐いた。

でも、夕食会はほぼ女子会の様で、とても楽しかった。男性陣がいるとどうしても気を使ってしまうし。

私の事も呼び捨てにしてもらえるくらいは、仲良くなれたと思う。

お母様は竜人族の恋愛事情や、その人間性なんかを本ではわからない事を沢山教えてくれた。

「竜人族は情に深い事は間違いないんだけど、残念な事にすべてがそうではないのよ」

まぁ、そうだろうなと思ってたわ。人間だってそうだもの。・・・あぁ、私が住んでた世界のね。

「やはり「番」に憧れている者もいて、恋人ができても「竜芯」の交換を拒否する者もいるの。

そう言う場合は、大概破局して別の人と結ばれたりしているわね。いくら片方だけが好きでも、想いが実らないとわかっていて縋り付くのもねぇ」

まぁ、好意を抱いた相手に対して情が深いが現実主義でもあり、サバサバしているというのがお母様の見解。

恋愛感情以外は、意外とあっさりしている種族なのかもしれない。


ただ例外もあり、それが「番」なのだという。

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