第21話
あぁ・・・もう、こんなに成長しちゃって・・・
これって、完全体じゃないの?違うの?え?もっと成長するの?
八日目くらいには、レイはもう立派な青年に変貌した。
私は元々のレイの姿を知らないから、これで終わりなのかまだまだ成長するのかがわからない。
成長した彼は、ぶっちゃけカッコいい。日本に住んでた時、色んな世界のカッコいい男をメディアで見てきたけれど、全然レベルが違う。
私と同じはずの黒髪はレイのほうが艶やかで、幼体の時にはくりくりと可愛らしかった琥珀色の瞳は、きりりと男らしくなっている。
顔のパーツも幼体の時から整ってはいたけれど、完全体に近づくにつれ、凛々しさと仄かな色気が醸し出され、ドキドキしかしない。
しかも、今まで通りに接してくれなんて・・・
「絶対に無理なんですけど・・・・」
「え?なんで?昨日一昨日までの姿だと、ダメだったんだろ?今はこうしてエリにふさわしい姿になってる。何の問題もないじゃないか」
いや、問題だらけです!
「それに俺は、いつもと変わらずエリに接してもらいたい」
竜なのに子犬の様な眼差しで見てくるもんだから・・・思いっきり頷いてしまいそうになる。というか、既に先日頷いてたのよね・・・ワスレテタ・・・
愛情深い竜人族ではあるが、意外と親離れ子離れが早いらしくそれが傍から見れば冷たく見えるらしい。
突き放すわけではないので、いつでも親に甘えてもいいのだけど、恥ずかしいものがあるのだと・・・レイ談。
だが今は、子供から大人へと早足ではあるが駆け上がっている。
だから、恥ずかしい気持ちもなく本能のままに私に甘えているらしい。
そんな事を言いながら、ぎゅうぎゅうに抱きしめ、私の頭に頬を摺り寄せてくるレイに、私は無になるしかない。
レイが幼体になってから、彼の希望で夜は一緒に寝ていた。治癒で傷は治せたけど、眠っている時間が結構長くて私自身も色々心配だったから。
小さいときは私が抱きしめて寝てたのよ。それが目覚める度に成長していてビビっちゃってたのに、ある日から私が抱きしめられていたなんて・・・心臓止まりそうになったわよ。
でもね、実は未だ一緒に寝ている・・・
もう一人で寝てもいいのではって言ってるんだけど、現状維持。正直、どうかと思うよ。うん。
「ねぇ、レイには婚約者とかいないの?」
これまで小さかったからあまり気にしていなかったけど、こうもカッコイイと・・・それに帝国一の権力者。小説の読みすぎかもしれないけど、色んな意味でモテモテなんじゃないかな。
「婚約者?いないよ」
「そうなの?竜人族って『番』が現れるんだよね?レイにはいないの?」
アーンバル帝国には、というか、竜人族には『番』が現れる場合があるのだと本に書いていた。
日本に居た時は『番』を題材にした小説なんかも読んでたから、恐らく理解はできるわよ。
だが、『番』という単語が出た瞬間、レイの表情が変わった。良い意味ではないほうへ・・・
「レイ?」
もしかして『番』の話題はNGだったのかしら?
困惑気味の私にルリが説明してくれた。
『番』の所為で起きた、悲しい話を。
「なるほど・・・確かに『番』と無縁の人からすれば、理解できないわね。ましてや、愛する人を捨ててしまうほどなんて・・・」
おちおち恋愛なんてできないじゃない。怖くて。
「正直、呪いの様にしか感じない。これまで起きてきた事を顧みても、愛する人達を引き裂くために『番』が現れているから」
あまりいい状態でない時に『番』が現れてるから、そう思うんだろうなぁ。
レイも三百才。そんなに長く生きていて、それこそ『番』が現れなかったのかしら・・・
好きな人もいないんなら『番』が現れても幸せになるだけだろうに。
色々と考えていると、レイがぽそりと呟く。
「俺は『番』に関してはなんとも思っていなかった。それは俺の中に愛する人がいなかったから。―――でも、今は恐ろしいとさえ思う」
「それは『番』が現れたら困る状況になったと?」
「まぁ・・そんなとこかな」
照れたように私を見るレイは、はっきり言って目に毒!お色気ムンムンよ・・・
「い、いやぁ、レイに想われるなんて、その人は幸せね」
「そう思う?」
ずいっと顔を近づけ私の目を覗き込んでくるレイ。
うっわー!近い近い!綺麗すぎて、目がっ!!目がぁぁ!!
「そんな目で見ないでよ~!勘違いしそうになるじゃない」
照れを隠すために何気なく言った言葉に、レイは数日前の幼さを思わせる様に破顔。
「勘違いなんかじゃない。だから安心して」
そう言いながら、今度は蕩ける様な眼差しで私の頬に唇を寄せた。
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