第22話

あれは、告白?告白だったの?


「好き」と言われたわけではない。

「勘違いじゃない」と言われ、ほっぺにキスされただけ。

その「勘違い」ってなんなの?

私の言っていた「勘違い」は、レイが私を好きなのでは・・・という、恥ずかしい自惚れ。

レイの言っている「勘違い」は私と同じなのだろうか・・・

その事を確認しようとしたら、帝国からお仕事が送られてきて有耶無耶に・・・

そして、私は悶々と考え込み、レイは前帝から送られてきた大量の書類を捌いている。


私はレイを弟の様に見てきた。でも彼は自分は年上だからそれは成り立たないという。

確かにね。でも、見た目が子供だったから、可愛がっちゃうのは仕方がないと思うのよ。ホント!鼻息荒くなるほど可愛かったし!

だから、彼が日に日に変わっていく事に戸惑いしかなかった。なんで大きくなるの!?とさえ、思ったわよ。

小さかった数日は、まさに甘やかしの押し売りをしていた自覚もある。

自分は年上だから・・・って言ってたけど、やっぱりレイも私の事姉の様に思ってたんじゃないかな?

だから私がナニをしても、受け入れてくれてたのではないのかな?

でも、弟にはなりえないって・・・・

という事は、レイが兄?・・・・いやいや、無理があるよね。あの容姿じゃ。


・・・・・あぁぁぁぁ!!ループじゃ!無限ループじゃあ!!


これはレイに直接聞くしかない!

勘違いだったら、早い方が恥ずかしいだけで済むし。


その時の私は気付いていなかった。

レイの事を弟位にしか思っていないなら、ここまで気にすることは無い。聞き流せばいいのだから。

無意識とはいえ、レイが仕事をしているダイニングへと向かってまで真実を知りたいと思っていた。

その意味さえも深く考える事無く。


レイの臨時執務室はダイニングキッチン。

いつの間にか山積みになっている書類が置かれているのは、見るからに豪華で重厚感溢れるマホガニー材の机・・・ではない。

紫檀という高級木材ではあるが、ただのダイニングテーブル。

それが、レイが仕事をしているだけで、本来持っていたであろう高級感が滲み出る机に見えるのだから・・・現金な物よね。

私の視線など気付かないレイは、とてつもない速さで書類を捌いている。

思わず不思議な生き物を見る様に凝視していた私だったけど、取り敢えずお茶を入れてあげることにした。

因みにルリとスイは今、結界外の森をパトロール中。銀狼族がまだうろついていないか、超警戒中なのよ。


レイはコーヒーがお気に入り。

この世界には紅茶はあるけれど、コーヒーはない。でも、私の家にはあるのよね。

インスタントもあるし豆もある。勿論、コーヒーメーカーもあるわよ。私はコーヒー飲まないけど。

コーヒーよりお茶の方が好きだから、専ら淹れる方専門。

じゃあ、何であるのかと言えば、神様・・・もとい、両親が好きなのよ。

母神様は私の世界の神様で、この世界より色々と発展していて豊。

父神様は母神様と仲良くなってそれを知ったらしく、今ではコーヒーショップでも始められそうなくらい詳しい。


神様なのにコーヒーが好きだなんて、人間臭いなって思ったわ。

一緒に住んでいた時は、私はコーヒーを飲まない事に残念がっていたけど淹れ方だけは教わって、両親に出していたの。

実はルリとスイもコーヒーの虜になっちゃってて(彼女らは砂糖とミルクたっぷりだけどね)、レイにも飲ませちゃったのよ。

そしたらことのほか気に入ったみたいで、朝や仕事の合間に飲んでいる。今みたいな時は特にね。

私がそっとテーブルにコーヒーを置けば、レイは顔を上げ私だと気づけば嬉しそうに笑った。


くっそー!眩しい笑顔だわ・・・・


「ありがとう、エリ」

「いいえ。ねぇ、レイ」

「ん?」

「ちょっと聞きたい事があって・・・お仕事が終わってからでいいんだけど、時間貰えるかな?」

「かまわないよ。あとこの一枚で終わりだから・・・・」

早いな・・・と、驚く私を尻目に、ささっとサインをすると書類を揃え脇に寄せる。

そして立ち上がると、淹れたてのコーヒーと私の手を取ってソファーへと移動し始めた。

ここでもいいのに・・・という言葉は飲み込み、大人しく後について行くと、コーヒーをテーブルに置くや否や私の腰に手をまわし、あっという間に膝の上へと座らせたのだ。


「へ?」

あまりの早業に、何が起きたかわからなくて間抜けな声を上げた私に、レイは変わらず・・・いや、と同じ蕩ける様な笑みを浮かべ抱きしめてくる。

そして当然の様に、と同じように頬にキスをしてきた。


いや、ちょっと待て・・・何が起きているんだ?

勘違いって、やっぱり、えっと・・・そうなの!?


頭の中は真っ白になって、抵抗さえもできない私はただただ、ぎゅうぎゅうと抱きしめられるのを受け入れるしかできないでいた。


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