013 - なんでかな?班がなかなか決まらない01
寮に戻る前に団長室に顔を出して師匠から預かった傷薬とかの入った袋を机の上に置く。
「師匠から愛弟子にって」
「いつも買うって言っているのに…よくしてくれる師匠だよ、全く」
「ロンとリゼも一緒になって新しい薬作ったみたいでそれも入ってるから効果の感想を寄越せって言ってたから今度お茶でも飲みに行ってやってよ」
「ああ、そうする…そういえばシャロンは3回くらい行っただろう?どうだった?」
「全然勝てる気配がない内に終わってるんだけれど」
「独特なんだよな、サーベルって…俺もなかなか勝てなかったな」
「それに副団長の強さがラフェル以上で流石副団長っていう地位にいるだけの事はあるなと思いました」
「何言ってんだよ、ミハエルさんには俺も勝てたことないぞ」
「…はい?」
「オホンッ…団長、それは内緒に…」
副団長がそっとそう言ったけれど、もう聞いてしまった。
団長が勝てない相手なのに、俺本気でバカだな全然勝てる相手じゃなかったじゃん。俺、凄い人達に教えてもらえたんだな。
「2人は明日から通常業務復帰でいいんだな?」
「その為に帰ってきたので」
「今日はもう少し自主的に修業の続きをしたいので」
「そうだな、俺もちょっと打ち込んでこようと思ってる」
「程々にしろよ」
団長室を出ると俺は2階に上がっていくためにロンと別れる。事務室に入るとシャロンさんが物凄い速さで計算をしている机の横に立つ。
「ちょっと待ってねー」
あのボヤーっとしているシャロンさんは仕事が物凄い速く、とても出来る事務員さんだったようだ…。のんびりしているから遅いとか思っていてごめんなさい。
ラナさんに軽く挨拶したけれどちょっと手が上がって終わっただけだからまだ悪阻大変なんだろうな。
仕事を区切ってくれたシャロンさんにも薬詰めた袋を渡す。
「師匠から、シャロンさんにも新薬使ったら感想送ってって言っていました」
「わぁ嬉しいな、良く効くんだよねーゼン師匠の薬」
ゼンとは俺の師匠の名前。たまに名前出されると誰だっけ?ってなるくらいの期間俺は「師匠」、リゼットは「おじいちゃん」と呼んでいる。
「時間作ってくれてありがとうございました。また時間のある時にお願いしたいです」
「うん、ラナちゃんが復帰したらいつでも、彼女の仕事ほとんど僕に来てるからねー」
確かに紙の山を見ると…こんなに溜め込んでまで俺の修業に付き合ってくれていたのか…申し訳ない気持ちが。
「これは今日の分なんだー…多い方だから今日は付き合えないけれどこれの半分くらいだったら大丈夫だから」
「あ、ありがとうございます…」
あ、1日分なんだ…。仕事の邪魔になるので早々に退散すると荷物を置きに寮の部屋に行って、動きやすい格好になって道場に向かう。
「あ、リュカ」
「久しぶり、かな」
「もう修業終わってきたんだ」
「ちょっと打ち込みしようかなって思って」
「終わったら手合わせする?」
「時間あったらお願いしようかな」
今の時間は何もないみたいでストレッチしている所だったみたいだ。俺は起きてから配達とかしているからちょっとだけストレッチをして筋を伸ばしてから木刀を手に取る。
打ち込み用の木人に向かって軽く打ち込んでいく。5分くらいの軽い打ち込みしてからラフェルを見る。
「出来そうならやろうか」
「いいぞ!」
ラフェルと向き合ってみたけれど前みたいに臆病になる事もない。本気でかからないと相手に失礼だと学んだからね。
軽くいつもみたいに打ち合ってから身体を温めてそれから本気で掛かっていく。
「お、修業はしっかりしてきたみたいだな」
「勿論」
「じゃあもっと力入れちゃおうかな」
「マジか」
木刀のカンカン響くけれど互いに決定打を打てないでいる。読み合いながらの打ち合い。
「おおお、こんなに吹っ切ってきたのか」
「本気で掛からないなんて相手に失礼だって学んだ」
「それでここまで出来るようになったなら修業の甲斐があったな」
下から攻めてみても上手くかわされるし、上段は簡単に弾かれる。身長差を活かしての奇襲攻撃すらも読まれてしまう。野生の感凄すぎじゃない!?
10分程打ち合い続けた気がするけれど結局勝てなかった。でもすぐに転がされてた前よりは進歩したと思う。
「よし、仕事の時間だから俺そろそろ行くな」
「ありがとう」
「まぁまだまだだけれど少しは俺の修業にもなりそうにはなってきたな…これからも励めよ!次は俺に一発くらい入れてくれよな!」
「ああ!次こそは!!」
ラフェルを見送ってから他の団員と手合わせしたりして。修業の成果を自分でもちゃんと確認してから今日は早めに就寝して明日からの仕事に備える。
翌朝早々から仕事の振り分けで俺の班はエルナー含め3人での討伐になっている。詰所の食堂前に仕事表があるのでロンと一緒に仕事の時間を見ている所に高貴なオーラをまとったお嬢様のエルナーが合流した。
「グランツさん、ローウェンさんお久しぶりですわ」
「うん、久しぶりの一緒の仕事だね!よろしく!」
「よろしく、僕はロンでいいよ、長いでしょ」
「まあ!ロンさんですわね、よろしくお願いします」
「うん、よろしくね、エルナーさん」
うん、何か女の子に普通に対応しているロンを見ていてやっぱり幻でも見たんじゃないかって気持ちになった。リゼットを前にしたロンはきっと幻だったんだ…。こんなにスマートに女性に対応している爽やかイケメンがあんなにモジモジしてるなんて…。
「モルシャちゃんとは一緒じゃありませんのね」
「ああ、リアとは同じ班ってわけじゃないからね。そういえば、エルナーもどこの班にも配属決まっていないの」
「ええと、これからお世話になります…でよろしいかと」
「へ?」
「そういうことなのでよろしくね、リュシアン」
「え、あ、シャロンさん」
そう言う事?と首を傾げるとサラッと「グランツ班の新メンバー」と言われた。俺はてっきりリアと一緒になるものだと思っていたけれど。
「やっと3人での仕事が出来るようになるわけなので、今日は少し大きな討伐に3班でいって貰うことになってます」
「あ、ラフェルとリア、もう1班がそうだね…あ、これって副団長の班?」
「そう、正解ですーなので今日は団長室行かないで時間になったら外集合で大丈夫なので」
「了解です」
そこでシャロンさんが他の班の騎士を連れて団長室に向かっていった。ラナさんが動けるようになるまではきっとシャロンさんを良く見かける事になるだろうな。現に良く見るもんね。
装備の確認を班員達にしてもらい、自分も整えてから外に出るとラフェル達も少しして出てきた。
「ラフェル…マシロとリアが班になったの?」
「皆班決まっていないんだよね」
「リュシアンと一緒だと思っていたのよ、私」
「俺もそうなんだと思ってた、このままずっとシャルフとして働かされるものだと」
ガルと呼べる人は他にはいなくはないけれど他の
「それについては私が説明しましょうかね」
「あ、副団長!おはようございます!!」
皆整列してキッチリ挨拶をすると副団長からも挨拶が返ってくる。そこから俺とリアが別々にされた理由を教えてくれるというが。
「先に馬車に乗りましょうかね、用意してもらえているので…あ、グランツ君は騎乗装備をして下さい」
「はい」
返事したはいいけれど、ガルいないで1人で乗るのか?
仕事の時間もあるのだろう、皆馬車に乗り込み俺は相変わらずシーファにまたがっている。まぁ本当に1人だけれど。
現地に向かっている間に副団長からの説明に1番驚いたのはロンとエルナーであろう。ガルになってもらうなんて言われたら。
「ダグラス様からの話はしっかりと聞かせて頂きました、それにシャイアナ様からも」
「あ、エルちゃんは私の師匠の所に修業に行っていたものね」
「はい、シャイアナ様からとても丁寧に教えて頂きましたわ」
ダグラスって俺の師匠の事ね、ゼン・ダグラス。あー俺達だけじゃなく、エルナーも修業に出ていたのね。
「副団長、でも僕がガルになっても体重の問題で同乗出来ない」
「ですが騎乗してないシャルフには対応は出来る、そういう魔力の高い人材も育てていきたいと団長と話し合った結果なのです。なのでローウェンとブラック君はリアガルのガルとしての仕事を見つつ、本物のシャルフと組んで現場で学んでもらう」
「私がリュシアンの班どころか何処にも属していないのは?」
「リアガルは暫くグランツシャルフ専属のガルとして組んでもらう事になります、2人がガルの資格を取り次第グランツシャルフにはブラック君を育ててもらう為同乗してもらい、陸上戦でのバディにローウェンを付けるようになります」
俺、そんなに実績のある
「ジャン騎士の班と一緒に2人をガルにする為のサポートでグランツシャルフの班と一緒に行動してもらうことになります、仕事毎にどちらかの班に行ってもらう事になりますね」
「実質フリーってことかしら?」
「班別けをするとなるとそうなりますかね。5人1班と言ってもいいんですけれどね、一応どちらも騎士になるのでどちらかを班長とするのはね…」
「あ、ラフェル班長にして俺班員でいいですよ」
「は?俺?」
「だって1番強いもん、ラフェル」
「決めて頂ければ団長と話してみますが」
5人1班ならやっぱラフェルの方が感鋭いしいい班長になれると思うんだよね俺は。
「5人1班ってなると俺は?」
「クヌギ君は私の班の所属になりますよ。操縦してくれているフレイ君が唯一の班員だったのでもう1人をずっと悩んでいたのです」
「副団長は指示出すばかりだから班員いらないと思ってますよ、俺操縦ばかりしてる」
そういうフレイさんは白魔法と黒魔法を使いこなす上級魔法使い。彼こそガルになるべきだと思うけれど。
「クヌギ君の忍としての能力がとても優秀なので私の班を手伝って頂きたいのです」
副団長の班に入れるというのは凄い。この騎士団には忍がいないのもあるが、マシロが引き抜かれたのは間違いなく実力だろう。
「自分が、副団長の班に…?ただの一般兵ですよ?」
「君は忍という職業を身につけている、それに実績はしっかりと把握してますからね」
「マシロも出世街道まっしぐらか?」
「頑張り次第ですよ、皆さん」
とりあえずこれからの事は帰ってから話し合おうとなった。何せ現地に着いた時には魔物が村を襲っている所だったからね。
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