003 - 仕事は普通の『騎士』でいたい03
「まずシャルフの違いは魔力…マナが0なところ。マナコアすら無い人もいるんだけれど、シャルフはマナがないのに空っぽのマナコアがあるのが第一条件」
「コアがないとどうなるんだ?それでもマナはある人もいるんだろう?」
「うん。魔法が使えないだけ、ごく普通の一般人は大体そんな感じかな」
「そういえば俺はマナコアもある、マナもあるっていう判定だった」
「そうなるとガルの素質があるって事」
「マナコアがあってマナがなければまずはシャルフとしての素質があるかもしれない、どっちも無い人はシャルフにも魔法使いにすらもなれない、どっちも有る人は魔法使いになれるしガルの素質があるかもしれない」
なるほどと腕を組みながらぽつりぽつりと俺の教えたことを復唱しながら納得したラフェルが顔を上げた。
「魔法使い第2検査を勧められたけれど」
「それはガルとしての素質を見るためだね」
「ガルはね、普通の魔法使いとまた違うんですよ」
「違うの?」
「ええ、魔法も色があって…白、青までは回復のみ出来るヒーラー。赤や黒も使えると魔法使い。ガルになるには緑まで全てが使えないとなれないのです」
「主に緑と赤をサポートに使ってもらっているからね」
「じゃあさっきの網張ったりしたのは?」
「あれは赤魔法、物に対して発動させれる魔法です。武器強化なども赤魔法」
剣に付けてもらった能力強化も赤魔法を基準としていてそれから派生されたのが属性付与。大地に使う網も赤魔法からの派生。
「俺の身体能力を上げてくれる強化系は緑魔法、跳躍力上げたり筋力上げたり…この緑魔法を受けられる身体じゃないとシャルフにはなれない、これを調べるのがシャルフの第2検査」
「シャルフのマナコアにガルの魔力を送って一時的に能力を上げれる魔法を自分用に変換して体内に流せるようなコアじゃないとシャルフとしての能力は無いということです」
「空っぽのコアは自分に合う魔法にカスタマイズする為の場所ってことか」
「そう、空でも変換できなくて体調崩したり、入った魔力がコアを素通りして定着させられないで放出されるコアじゃあダメなわけ」
「ほう、あとの黒魔法っていうのは攻撃する魔法だろ?」
「そうです、それは訓練して資格を得ないと仕事では使えないから学校に通うか師匠に教わって覚えるのです」
「だから学校か師匠なんだな」
「はい」
話をしているとロンがお茶のお代わりを入れてきてくれた。
「僕は弓術士として黒魔法と赤魔法を教わりましたが緑系は使えないですね」
「職業によっても覚えたりする魔法は様々だけれど緑魔法だけが特殊でガルとしての資格がないと使えないから覚えても意味がないですからね」
「僕は黒魔法の資格取得したので仕事でも使えます、赤魔法は資格を取得していないから自分の武器にしか強化魔法使えないですし」
「じゃあ俺も戦闘で黒魔法使うには資格を取らないといけないってことだな」
「そうなりますね、魔法騎士なんて数少ないからジャン騎士も是非」
「仕事で使わないっていうなら黒魔法は覚えるだけでも使えますよ、履歴書とかに書けたらすぐに騎士昇格でしょうね…僕は弓術士なので関係ないですが」
黒魔法を取り締まる事にも最近は力を入れていると聞いたな。違法で使って捕まったら魔力制御されてしまうとか聞いた。ラフェルにもそこはしっかり気を付けてもらわないと騎士たるものがそんな犯罪犯したら団長にも迷惑を掛けてしまう。
「そういうわけで、基礎の毎日の訓練方法を教えますからそれでマナのコントロールを憶えていって下さい」
「ああ、世話になる!」
ラフェルとリアガルが訓練方法の話を始めたので俺はロンに頼んで弓の指導をしてもらえることになったので弓術の練習場へと2人で向かった。
何人かの弓兵が自分の弓のメンテナンスをしていたり射る練習をしているので俺は練習用の弓を借りて矢を使わずに弦を引いてみる。
「うん、型にハマりすぎてる」
「え、でもこれが基本だって…」
「そうですよ、だからいい意味でです。それが出来ているので簡単な事です、ただ的を射る事だけを思い…しっかりと的を見据えて」
ロンが説明しながら的を目掛けて自分の弓で矢を放つ。あんなに喋りながら軽々と的を射た。
「随分あっさりと…凄いんだな!ロン!」
「まぁこれは僕の職業ですからね、出来て当然と言われたらそれまでですが、ありがとうございます」
「俺は確かに次の事を考えながら射ったりするからいけないんだな」
「慣れるまでは弓に集中してみて、慣れてきたら次の事を考えながらも命中させていくでしょう…体幹も筋力もシャルフとして訓練されている班長ですから大丈夫」
矢も借りて言われた通りに的をしっかりと見てゆっくりと時間をかけて放てば命中はする。これが戦場でとなると動いているから大変だが…
「要は練習あるのみと言いたいのだろう?」
「ええ、そうです」
「基本さえマスターすれば動いても的を外さなくなると」
「そうです、後は距離感をしっかりと把握する事と深視力を強化するのがいいでしょう」
「やっぱ目だよな…」
「しかし、銃みたいに簡単に扱えるものがあるのに…やはりガル次第ですか?そこも」
「ん、ああ…」
借りていた弓を戻してロンと食堂の方へと戻りながら
「あれはガルの実力次第だからね…後は相性かな」
「銃弾作ってもらうのって相性必要なんですね」
「ああ、シャルフの持っている銃は特殊だからね、銃の性能と俺のマナコアから変換されたマナに合わせて銃弾作ってもらわないと威力が半減してしまうんだ」
「そうなるとやはり弓がいいんですね」
「弓は物質に直接魔法を与えて自分の筋力で引いて射るから、銃弾と俺のマナを媒介する銃とは違うからね」
「リアさんと話してみたらどうです?」
「リアガルとの相性っていうのも分かってしまうから結構賭けなんだよな」
なんて話していたら食堂についたので荷物を持って部屋に戻ろうとして中に入ったらまだマナの勉強をしていた。
「班長はこれからどうするんです?」
「俺は団長が戻って報告するまで自由時間だから少し武器のメンテと昼寝かな。俺は慣れていないからさ、シャルフの能力って寝て体力回復しないと辛くて」
「なるほど、じゃあ僕も自由時間ですね」
「そうだね、ゆっくり休んで」
そこでロンとも別れたので詰所のすぐ隣にある寮に入ると自室で武器のメンテナンスをして、本当に昼寝をしていたら呼び出しの通信で目が覚めた。1時間は寝ていたんだな。
「はい、グランツ」
『ラフェルだ!団長帰ってきたので報告行こうと思うが』
「行くよ」
寮を出て急いで団長の部屋に向かうと、途中の廊下の隅でラフェルが瞑想をしながら待っていてくれた。
「お、マナのコントロール?」
「おお、それがね思ったより簡単に出来て、今はコアにマナを貯める訓練しているところ」
「なるほど、それを魔法に変換して出せるようになるのもすぐかもね」
「リアがこれからが大変だって言っていたぞ」
「なんかラフェルならすぐ黒魔法の資格取れそうだからさ」
団長の部屋をノックして返事後に入っていく。
部屋の中には副団長の姿もあった。久々に見たな、副団長。ちょくちょく仕事で外に出ているから最近騎士団の詰所内で見ることもない。
「グランツ、ジャン両名先ほどの討伐の報告にあがりました」
「団長も無事の帰還なによりです!」
「ああ、ありがとうな…ラナちゃんからも凄い興奮した感じにリュシアンのシャルフとしての仕事ぶりを聞いたよ」
「そんな報告してないですが…」
「リアから聞いたと言っていた」
ああ、目の前でリアガルは見ていたからね…。
報告は滞りなく済まされ、ラフェルが魔法を覚えるという件に関しても話をしていたら団長も何だか乗り気だったし許可も出たのでよかった。
「ジャンが魔法騎士になったらうちももっと強くなるなぁ」
「ええ、ローウェンが来ただけでもかなりの戦力アップに繋がったのですからね」
ロンの事だ。弓術士というしっかりとした職業だし黒魔法まで使えるとなるとやはり強い。普通の弓兵とは違うからね。
しかし、ラフェルが魔法騎士と言われるようになったらかっこいいな。
「頑張って、ラフェル!戦力アップ!」
「それはあれか?自分がシャルフとして出ないで済むからだろ?」
「…シャルフは、怖くて本当はやりたくないからね…」
「リュカ…まだそんな事言ってるのか…師匠から頼まれているんだ、俺は」
団長の師匠と俺の師匠は同じで、
「師匠のじぃちゃんが勝手にここに俺を入れたん…です…」
「辞めてもいいんだぞ?前から言っているけれど無理させて死なれても困る」
「今は…俺が頑張って、救われる人がいるんだって知ったから…無理矢理やっているわけじゃないから大丈夫です」
「でもシャルフは嫌なんだろ?騎士より安全だろうが」
「今みたいに、任務で行くときにくらいなら…いい」
「ほう、なんかあったのか?いいだなんて言うようになったなんて…師匠に報告だな」
「ややや、そこはやめてください!!師匠なら絶対ここじゃなくて中央に行けって言い出すからぁぁそれが嫌だからシャルフとして出たくないんです!!」
この辺境の領地を守る騎士としてならいいけれど、中央の城勤務とか言われたら俺絶対嫌だ!だってあそこは
「いいじゃないか、中央…俺も通った道だしな」
「団長は、生きて帰ってきたけれど!父さんは死んだ!!だから俺は…」
失礼しますと小さな声で言って部屋を飛び出してしまった。
俺の父さんの事なんか思い出したくなかったけれど、いや、忘れていたわけではない。でも表には出さないようにしていたのに。
「リュシアン!」
「…」
腕を掴まれてようやく止まったけれど詰所からも飛び出していた。
顔を上げれば心配そうなラフェルと目が合う。ごめん大丈夫と冷静を装って小さく謝るけれど手を離してはもらえなかった。
「全然大丈夫な顔してないけどな」
「大した事じゃない」
「ほう?大した事じゃないなら大丈夫だろう?ちょっと付き合えよ」
「は?」
逃がさんとばかりに腕をガッチリ掴まれたまま引っ張られてきたのは剣道場。練習用の木刀を渡されてそれを受け取る。
「とりあえず、手合わせしよう」
「え」
「汗かくのが一番だろう!」
なんかキラッキラな笑みでそんな事言われたら断れなかった。
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