第8話

沖縄の両親に、あたしの妹、生まれたらしい。

きゃあああああああ、今度、会いに行ってみよう!


高2の時に、富士山に修学旅行に行った。

5号目までバスで行き、そこから頂上まで歩いて登った。頂上付近に大きな鳥居、立ってた。そこをくぐり抜けたら、

「富士山まで来ちゃったよ~」

っていう女の子の声、聴こえてきた。

中3の修学旅行の時に、聴いたのと、同じ声だった。

そしたら、急に、あたり一面に、真っ白な濃い霧、立ちこめてきて、まわりの景色も友達も、一瞬で見えなくなってしまった。

「よく、ここまで登ってきてくれましたねっ」

って富士山に歓迎されてるかのような、神聖で、清々しい霧のようにも感じられた。

うしろに人の気配を感じたので、振り返ってみたら、きみちゃん先生だった。

「ああ~、きみちゃん~!なんで、そこにいるの~?」

「鳥居をくぐって、うろうろしてたら、白い霧の中に入っちゃったのよ~」

あたしは、好きなきみちゃんに白い霧の中で抱きついた。

「きみちゃ~ん!好き~」

って言ったら、きみちゃん、あたしにチュッてキスしてくれた。

「ああ~、いいなあ~」

っていう女の子の声、聴こえてきたから、

「あたし、あんたには、毎晩いつもキスされてるやないの~」

って、その子に思ったら、

「あっ、そうやった~」

って言っていた。


「ん?誰かおったん?」

って、きみちゃん先生に言われて、

「いや、べつに、誰もおらんけど...」

って答えたけど、きみちゃんには話してみようって思って、

「うちの部屋に霊おって、女の子の芸術家みたいで...今も、白い霧の中で、あたしに話しかけてたっ!」

「先生もなっ、高校入学式の前の日に、夢の中に伊勢さん出て来てなっ、百人一首の伊勢さんなんやけど、その伊勢さんに、『女の子みたいな新入生来るから、その子のことよろしくねっ!』って言われたんよっ」

「ええーっ!!」

あたしと、霊の女の子、2人同時に、びっくりした声、あげていた。

「あっ!今も、その霊の女の子、びっくりした声、だしてます~」

って、きみちゃんに言ったら、

「今、たしかに、2人の声、聴こえたわ~」

って、きみちゃんにも聴こえたみたいやった。

「伊勢さん、夢の中にあらわれはったんですか~?」

って、霊の女の子の声、聴こえてきた。

「そうなのよ~。夢の中で、はっきりと...」

「伊勢さんは、うちの師匠でもあるんです~。うちも、あやめちゃんのこと、伊勢さんから、よろしくって言われてたんです~」

って、きみちゃんと、霊の女の子は、霧の中で会話していた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る