ミナトが倒れてから、数週間が経った。ミナトは無事に回復魔法を受けて、回復はしているのだが、目を覚ますことはなく、伯爵家が責任を持って看病を続けている。

「ここは？あれ？俺は、女王を倒して......それから、どうなったんだ？」

ミナトは、気付くと暗闇の中で、ポツンと一人佇んでいた。この状況に理解が追い付かず、呆然とするしかない。

「グフフフ、第一フェーズは50%というところでしょうか。最高傑作を注入しても、この結果とは非常に残念極まりませんがね」

靴と地面が当たるたびに、コツンコツンと鳴らしながら、暗闇の中を歩いてくる人物がいた。ミナトは、声と音のする方を見るが、暗闇で何も見えない。

「50%？最高傑作？何を言ってるんだ？ここがどこか知ってるなら教えろ」

「フッフフ、貴方を変えたのは私ですよ。親と言っても差し支えありません。そんな私に、教えろとは常識がなっていませんね。ん？そうですね。教育をして差し上げなければなりませんね」

ミナトの周りを一周するかのようにコツンコツンと音を立てて歩いている。

『ナノ？いないのか？もし、いるならこの状況を説明してくれ』

見えないこの人物に問いかけたとしても、気が狂っているか、頭がおかしくまともな返答を貰えないと思ったミナトは、ナノに聞くことにした。

「生みの親である私を無視し、子供同士で会話をしようとするとは、なんて親不孝な息子なんでしょう。それと、ここにはナノは入って来れませんよ！だって、貴方は死の淵に立ち、私が止めているのですからね」

この人物は、わけの分からないことを口にして、狂った笑い声を上げている。

「さっきから親がどうとか言ってるが、誰なんだ？悪ふざけにも程があるだろ！早く俺をここから出せ」

ミナトは、頭のおかしい人物の声を聞いて、少したじろいでしまうが、悪い夢を見ているのではないかと思い始める。

「ここまで理解力がないとは親として恥ずかしくなりますよ。それに、悪い夢だとお考えですか......なら、夢が覚めるまで、そのままにして上げましょう」

この声の人物は、わけの分からないことを口走ったあと、気配がスッと消えた。

「お、おい！本当に、どういうことだよ......ハァ〜とりあえず、落ち着くか。ここが、どこなのかわからないけど、抜け出す方法はあるだろうしな」

ミナトは、目を瞑り大きく深呼吸をした。

そして、あぐらをかいて座り、今の状況とさっきの声の主の正体と抜け出す方法を探る。

「よくよく考えたら、ナノが後遺症が残るって言ってたな。もしかしたら、これが後遺症かもな。それと、さっきの声は、ナノも俺のことも知って......あ〜、クソ！あいつが、俺を改造したやつか......」

ミナトは、後遺症に関して、当たらずも遠からずの答えを出した。そして、あの声の正体が、マッドサイエンティストだと理解した。

「でも、あいつイカれてるけど、俺を変えてくれた張本人でもあるんだよな。複雑過ぎるだろう。あとは、ここから出る方法だけど、どうしよう。まぁ、考えても仕方ないし、横になって待つか」

ミナトは、地獄のような日々から解放してくれた張本人でもあるので、イラついても怒るに怒れないと思ってしまう。

そして、ミナトはそのまま考えるのをやめて大の字になって寝るのだ。

「何故、この状況で寝られるのですか？本当に、寝ていませんよね？」

「.......」

「我が子ながら、ぶっ飛んでますね。じきに耐えれなくなり、私に頭を垂れることでしょう」

マッドサイエンティストは、声かけたり揺らしたりするが、ミナトは本当に爆睡しているようで、シュールな状況が生まれるのだった。

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