第18話 厄介事と箝口令と身代わり!
「ミナトくんが、大変だと聞いたのだが、騎士団長どういうことなのだ?」
娘のアンジェリカは、ベッドで寝ているミナトに駆け寄って泣きそうな顔をしている。
エマも、心配そうに見つめていた。
「外傷はないのですが、女王と大量のデッドリーポイズンキラービーとの戦いで、何かしらあったのだと思います。そして、ヒールでは目覚めず、顔色も悪いままでして......」
「なんてことだ。シュニッツェル、今すぐに高位の回復魔法師を手配しなさい!騎士団長は、執務室に来て、現在の状況を説明を頼む」
ラッセルは、ブレイクの言っていた通り、恩人に対して最大の敬意を払っているようで、すぐに回復魔法師の手配を命令した。
「畏まりました。早急に、帝都の回復魔法師の協会に問い合わせてみます。では、失礼致します」
シュニッツェルは、足早に部屋から出て行き、手配に向かった。
「現状の説明ですが、不確定なことが多過ぎまして、ギルドマスターが戻られてからの方がよろしいかと思います」
「うむ。ならば、この場で構わん。把握していることだけ説明しなさい」
ブレイクは、ミナトの強さを理解しているが、Aランクである女王を討伐したことを信じられずにいる。
「え〜ギルドマスターから、伯爵様だけにお伝えするように言われているのですが、ミナトが女王と大量のデッドリーポイズンキラービーを討伐したと、行動を共にしていた冒険者から聞きました。今ギルドマスターが、確認に向かっております」
ブレイクの話を聞いたラッセルとエマとアンジェリカは、驚いた表情をする。
「なんと......いや、だが......とりあえずは、ギルドマスターの報告待ちであるな。エマとアンジェは、このことを内密にするように。もし、ミナトくんが討伐に貢献してくれたというのならば、どうお礼をすればよいやら......」
ラッセルも、他のみんなと同じで、討伐したことを半信半疑でいるのだが、助けてもらった時のことを思い出すと、本当の話かも知れないと頭をよぎる。
「お父様、ミナト様の側にいてもよろしいですか?こんな苦しい表情をしているミナト様を放っておけません」
「アンジェ......」
「あなた、私も付いているわ。だから、安心してちょうだい」
アンジェリカは、ミナトの手を握って悲しい表情を浮かべる。
ラッセルは、アンジェリカがそばにいることは反対ではないが、責任感の強い子なので寝ずに看病をして倒れて仕舞わないか心配した。しかし、エマが助け舟を出す。
「エマが付いているなら安心だな。では、アンジェ。ミナトのことを頼んだぞ」
「は、はい!お父様」
ラッセルのお許しをもらったアンジェリカは、満面の笑みでお礼を言った。
◆
ミナトが、屋敷に運ばれてから数時間が経ち、ギルドマスターがラッセルを訪ねてきた。
「ロイト、緊急とはいえ、ギルドマスター自ら討伐に向かってくれたこと感謝する。早速だが、報告を頼めるか?」
ラッセルは、挨拶をそこそこに、緊急事態ということで、状況説明を求める。
「お礼を言われるようなことはございません。この街に、骨を埋めようと決めた以上、街に被害は出したくありませんでしたからねぇ。結果からお伝えすると、女王の討伐は成功致しました。今素材の回収中です」
「そうか。よかった......まさかとは思うが、ミナトが討伐したというのは事実なのか?」
ギルドマスターのロイトがいたとしても、こんな短時間で女王と大量のデッドリーポイズンキラービーを討伐することは、不可能に近いので、ラッセルは確証を得るために尋ねた。
「はい。信じがたいですが、戦闘のあとを見る限り、ミナトくんがやったのでしょう。そして、推測なのですが、何かしら体に大きな負担がかかるスキルを使用したのではないかと思います。この事実が公になれば、動くはずです」
「そうか......私は、もしミナトくんがスキルを所持していた場合、皇帝と事を構える予定でいる。恩人を渡すという恩を仇で返すことはしたくないのだ」
少年であるミナトが、Aランクの魔物を倒した事実と戦闘の痕跡と意識を失ったことを総合的に見て、ギルドマスターのロイトはスキル持ちだと判断した。
そして、スキル持ちは、何故かはわからないが、帝国から狙われる立場にあるようだ。
「ラッセルが、そこまでいうのでしたら、協力は致しますが、事を構えない方向で考えましょう。ですが、まずはミナトくんが目覚めてからです」
「礼を言う。あと、知っている者には箝口令を敷き、知らぬ者には、討伐者の身代わりを用意してほしい」
ミナトが、スキルを持っているのかの確認と帝都に知れ渡らないように箝口令と身代わりを提案した。すると、ロイトは頷いて、すぐさま冒険者ギルドに向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます