第17話 検問2度目の突破と願うナノ!

ミナトの治療を行っている間に、ドンはギルドマスターを、少し離れたところに連れてきた。


「ドンさん、先程あそこで治療を受けている少年が、女王とデッドリーポイズンキラービーを討伐したと仰っていましたが、詳しくお聞かせ願いませんか?」


「詳しくも何も事実だ。雷帝のような強さで斬り刻んでいたとしか言えないな。現場を見りゃあわかるだろうよ」


ギルドマスターは、少年であるミナトが倒したことを信じられずにいた。

そして、ドンからしても未だにあの異様な強さを言葉で説明することは出来ずにいる。


「そうですか......雷帝とはまたとんでもない人物の名を口にしましたねぇ。それよりも、これからのことを話しましょう。一度、ミナトくんでしたっけ?あの子の状態を確認しますよ」


ギルドマスターは、まだ信じられていないが、現状の把握とこれからの行動を決めようと全員の下に戻った。


「ミナトく〜ん、うわぁぁぁん。死なないでぇぇぇ」


ギルドマスターとドンが戻ると、タリアが大泣きして騒いでいた。


「ミナトくんの容態はどうですか?」


ギルドマスターが、ミナトの状態を確認するが、ヒールをかけている少年は、首を横に振る。


「ギルマス、外傷がないから僕の力じゃどうにもできないかな。少し顔色は良くなったけど、目覚める気配がないよ。すぐに、高位の回復魔法が使える誰かに見てもらわないと......でも、街に高位......」


「ミナトは、伯爵様の命の恩人なんだ。伯爵様が、見捨てるとは思えない。すまないが、俺はミナトを連れて先に街に戻るぞ。あとのことは、任せてもいいか?」


ヒールをかけている少年は、街に高位の回復魔法師がいないことと、いたとしても莫大な金がかかってしまうことで懸念していたが、ブレイクが話に割って入ってきた。


「ラッセルの恩人でしたか。今すぐ連れ帰って上げてください。それから、確証はありませんが、ドンさん曰く、ミナトくんが討伐したそうなので、外部に漏れないようラッセルだけに伝えてもらえませんか?」


ギルドマスターは、確認していない状態で、街の住人に知れ渡ることを懸念した。しかし、ラッセルに安心材料も与える必要があるのと、ドンが嘘を言っているとは思えないのでラッセルだけに伝える許可を出した。


「ギルドマスター、恩に着る。あとは、頼んだぞ」


ブレイクは、ミナトを抱えて馬に乗り、街を目指すのだった。





あれから、休むことなく馬を走らせて、街に着く。すると、タリアと同じように検問をする兵士の横を馬で素通りした。兵士は、騒いでいるようだが、ブレイクは気にすることなく伯爵邸に向かう。


「あとで、兵士に謝りに行かなくてはな。それに、頑張ってくれたこいつも労ってやらないとな」


ブレイクは、馬の首を撫でながら休みなく走らせていることに罪悪感を感じて、労りながら後でおいしい人参をあげようと決めた。


『聞こえてないとは思いますが、ご主人様をお願いします!まだご主人様の第二の人生が始まったばかりなのです』


ナノは、聞こえないのはわかっているが、ミナトの日本で受けてきた苦痛を理解しているので、第二の人生を長く生きてほしいことを伝えようとする。


「今すぐ開けてくれ!早急に伯爵様に伝えることがあるんだ」


伯爵邸の門前を守っている兵士が、ブレイクの言葉を聞いて、急いで門を開ける。そして、そのまま馬を走らせて中に入る。


「シュニッツェルはいないか?ミナトが、大変なんだ!」


「ブレイク騎士団長様!ミナト様が、大変......え?どうされたのですか?今すぐ、寝室にお連れしましょう」


シュニッツェルは、大慌てでやってきて、寝室に案内をする。

寝室に着くと、ブレイクは優しくミナトをベッドに寝かせると、後ろのドアが開いて、ラッセル伯爵とエマとアンジェが凄い勢いで入ってきたのだった。

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