第16話 ギルドからの応援と合流!

ギルドマスターは、銀色のフルプレートに身を包み現れた。インテリな顔からは想像出来ない装備にギルドマスターの現役時代を知らない者は驚きと意外な顔をする。


「ギルマスのその姿を見るのは、久しぶりです。まだまだ現役でもおかしくないと思いますよ」


エルマは、10年前に受付嬢となり、新人の時に一度だけギルマスのフルプレート姿を目にしていた。その時を最後に、ギルマスは現役を引退したのだ。


「私など、もうお役御免の存在ですよ。現役の者に失礼です。それよりも、冒険者は集まりましたか?」


「申し訳ございませんが、Cランク冒険者2組だけです。そして、伯爵家からは騎士団長を派遣してくれるとのことです。他の騎士は、もしもの場合に備えて、待機させると仰っておりました」


ホスニケムは、魔物の危険がなく、新人冒険者に人気の街になっているため、高ランク冒険者の数が少ない。そのため、Cランク以上は中々集まらないのだ。


「最低限以下だが、蒼の双翼と死霊の秘儀がいるのは大きいですね。それにしても......フッ、流石ラッセルですよ。馬鹿な貴族とは大違いです」


蒼の双翼は、若手台頭でBランクにもっとも近いと冒険者である。そして、死霊の秘儀は、Cランク以上の実力はあるものの、スケルトンやレイスを使うことから、他の街では薄気味悪がられ、依頼は少ないが、普通に接してもらえるホスニケムで活動を続けている。


「蒼の双翼と死霊の秘儀の皆さん、お願いしますね。では、早急に参りましょう。タリアさん、案内をお願いします」


タリアは、元気良く返事をした。蒼の双翼と死霊の秘儀の両パーティーも、頷いて返す。

そして、騎士団長が待つ門に向かうのだった。





ギルマス達が、門に着くと、すでに騎士団長が待っていた。


「ブレイク騎士団長、お待たせしました。あまり時間もありませんので、すぐに参りましょう」


「そうだな。向かいながら、伯爵様からの伝言を伝えることにする」


ギルマスとブレイクは、挨拶をそこそこに、馬を走らせてミナト達が待つ戦場に向かった。


「伯爵様からは、ギルドマスターに指揮権を与えるとのことだ。よろしく頼んだぞ。それから、討伐報酬と治療費などは全て伯爵様が持つと言われている」


「ラッセルは、相変わらずですね。皆さん、必ずドン達を救いましょう。そして、ホスニケムに到達する前に、女王を討伐しますよ」


ギルドマスターは、先程からラッセルを呼び捨てしており、どうやら旧知の仲のようだ。

そして、ここまでのお膳立てと冒険者に対して手厚い補償をしてくれるならばとギルドマスターはやる気を見せた。

ギルドマスターの言葉を聞いて、蒼の双翼と死霊の秘儀とタリアも、やる気のある返事をする。





ドンとジェフは、ミナトを抱えて森を走っていた。はじめは、女王の出現で、魔物達は隠れていたが、気配が消えたことで魔物達の活動が活発になり、ウルフ系の魔物やゴブリン達がドンとジェフを邪魔してくる。


「こう次々と現れると面倒ですね。それに、魔力回復ポーションがなくなりました。ドン、悪いですが、交代してもらえますか?」


「あぁ、ミナトを頼むぞ。絶対に落とすなよ」


ドンは、ミナトをジェフに渡して、2本の斧を手に持ち走り出した。


「もうすぐしたら街道に出るが、まだこないのか?タリア達とすれ違ったのか?それとも、冒険者は応援すら寄越さないのか?」


「この道は、冒険者がよく使う道ですし、すれ違いはないでしょう。それに、あのギルドマスターが見捨てるとは考えられません。今は、いち早く......」


ジェフが話している途中で、ドンが前方から何か来る気配を感じ、手で制して止めた。

すると、ギルドマスターの後ろから顔出して手を振っているタリアが見えた。


「ドンさんとジェフさんで間違いありませんね?女王とデッドリーポイズンキラービーは、どこにいるのですか?」


ドンとジェフは、激しい戦いと森を走り抜けて来たことで、服があちこち破れ、顔も薄汚れており、ギルドマスターは本人か確認をした。そして、ドンが頷くとすぐに女王とデッドリーポイズンキラービーのことを尋ねる。


「ギルマス悪いが、話はあとにしてくれ!それから、女王とデッドリーポイズンキラービーなら、ミナトが倒した。そのせいで意識を失ってるんだ。今すぐ回復を頼む」


ドンとジェフは、ギルマスに一瞬顔を合わせたあと、蒼の双翼と死霊の秘儀の前に行き、回復魔法が使えないか尋ねる。


「ヒールしか使えないけどやってみるよ。その子を地面に寝かせて」


ジェフは、優しくミナトを地面に寝かせると、蒼の双翼のメンバーの一人である少年が、手をかざしてヒールをかけるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る