第15話 一癖も二癖もありそうなギルドマスター!

デッドリーポイズンキラービーを倒したミナトは、やり切った表情をして地上にゆっくり落ちて行った。

そして、愛斧である武器を放り投げたドンが、走り出してミナトを受け止める。


「痛ぇぇ!空中から落ちてくるやつを受け止めるのが、こんな大変だとは思わなかったぞ!」


ミナトは、まだ子供ではあるが、空中から落ちてきたミナトの体は重力の影響で何倍も重たくなっており、ドンの足が土に埋もれるくらいの衝撃を与えた。


「痛いで済むのはドンだけですよ。私が受け止めたら潰れています。それより、ミナトくんの状態はどうですか?」


ジェフは、考えなしに受け止めに行ったドンを呆れた表情で見る。


「気を失ってやがるな。穏やかな表情をしてるが、顔色が悪い。早く、回復魔法の使えるやつに見てもらわねぇとマズイかもな」


急激に脳を酷使したことで、ミナトは生死の境を彷徨っている状態になっている。


「このまま街まで走りましょう。応援を待つ余裕はありませんし、デッドリーポイズンキラービーの死体回収よりも、ミナトくんの方が大事です」


「言われるまでもねぇ!全力で救うぞ」


ドンは、ミナトを肩に担いで、回復ポーションを飲んで街に向かって走り出す。


『お願い!ナノのことは聞こえないですが、どうかどうか!ご主人様を助けてください!』


ナノの力で脳を再生すれば解決することなのだが、体の一部を再生するのとは別で構造が複雑かつ一歩間違えると目覚めた時、ミナトとは別の存在が生まれる可能性があるため、無闇に作り変えることが出来ずにいた。





タリアは、森を抜けて街に辿り着き、検問に立っている兵を無視して冒険者ギルドに向かった。

そして、冒険者ギルドに辿り着き、受け付けに一目散に走る。


「女王が現れたよぉぉ!仲間が死んじゃう!助けてぇぇ」


「は、はい?タリアさん、女王とはなんでしょうか?もう少し詳しくお願いします」


タリアは、慌て過ぎて支離滅裂になっており、受付嬢のエルマには全く意味がわからない。


「だから〜女王が現れて死んじゃうんだよぉぉ!あぁぁぁ、もぉぉ〜、ギルマスを呼んでぇぇ」


「ここにいたのか!あの女を捕まえろ!」


「ハッ!ただちに」


タリアが、腕をブンブンと振りながら大声を上げていると、入り口から兵士が入ってきてタリアを捕まえようと向かってきた。


「え?なんでぇぇ!アタシ何もしてないよぉ」


「検問を無理矢理突破して街に侵入したと報告を受けている!話は詰め所で聞いてやるから、暴れず大人しくしろ」


兵士は、タリアの手を縛って拘束して連れて行こうとするが、仲間とミナトの命がかかっているタリアは暴れて抵抗をする。


「大人しくしろ!このガキ......」


「女性を殴るのは頂けませんねぇ。それも、冒険者ギルド内でとは。それよりも、タリアさん。先程、女王と聞こえましたが、まさかデッドリーポイズンキラービーの女王が現れたとは言いませんよねぇ?」


兵士が、タリアを大人しくさせようと拳を振り上げたところに、メガネが似合うザ・インテリといった男が兵士の腕を掴んで止めた。


「ギルマスゥゥゥ!デッドリーポイズンキラービーの女王が大群を連れてきて、ドンとジェフとミナトくんが戦ってるの!助けて!お願い」


「何をわけのわからんことを言っているんだ!言い訳するにしても、もっとマシな嘘を付け!ギルドマスター、こいつはれっきとした犯罪者だ。こいつの戯言で、キャリアに傷を付けたくないだろう?」


ギルドマスターに、腕を掴まれている兵士は、タリアとギルドマスターの会話を遮って、脅しのようなことを言ってきた。


「戯言ですか。タリアさんは、優秀な冒険者であり、このような嘘をつく方ではございません。それに比べて、ジキル警備隊長は、奥様もいながら......他にも、色々知っていますよ。そちらこそ、キャリアに傷を付けたくないでしょ?今すぐ離して下さい」


ギルドマスターは、全く動じることなく、警備隊長を逆に脅していく。みるみるうちに顔色が変わる警備隊長を見て、ギルドマスターは鼻で笑うのだ。

そして、警備隊長は周りを見渡して、居た堪れない気持ちになり、タリアを離して、そのまま冒険者ギルドをあとにした。


「タリアさん、デッドリーポイズンキラービーの女王が現れて、3人が戦っていることはわかりました。出現場所への案内とデッドリーポイズンキラービーが、どの程度いるかわかりますか?」


ギルドマスターは、タリアの言った言葉から瞬時に状況判断をして、最低限のことを聞く。


「案内できるよぉ。デッドリーポイズンキラービーは、わからない......いっぱいだよぉ......お願い!助けて」


「引退してからは、平和に過ごしたく、この地を選んだのですがねぇ。エルマさん、Cランク以上を集めてください!それから、伯爵邸に人を送り、状況説明をお願いします。私も、討伐に行きましょう」


ギルドマスターは、エルマに指示を出したあと、装備を取りに部屋へ向かうのだった。

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