第7話 天然たらしのミナトに呆れるナノ!

ミナトは、やっと夕食が終わり部屋に戻ることができた。ベッドに寝転がりながらグーっと背筋を伸ばす。


『ご主人様、緊張されていましたね』


「当たり前だろ。あんな高級そうなダイニングで食べたことないんだから。しかも、全員上品に食うし、振り返ればメイドさんが控えてるって、気を遣って味なんかわかるもんか」


ミナトは、日本にいる時も、高級レストランに行くような性格ではなかったので、それ以上の食事マナーを要求される貴族との食事は相当気を遣って疲れてしまった。ミナトは、誰も見ていないので、ため息を吐きながらベッドの上でだらけた。


『ですが、インストールしたおかげでこせていましたよ。それにラッセル一家は、その様子を見て驚いていました。これで、良いところの出自だと思われそうですね。流石に間者とは、思われないでしょうが、変な行動をせず、普段通りお過ごし下さい』


目立ち過ぎるのも問題だなと改めて理解したが、今更やってしまったことは変えられないのと、行儀が悪いと思われるよりはいいかと考えた。


「でも、これからも頼むよ。それより、ここまで良くして貰っているし、昼間話した化粧水を送りたいんだけど作ることは可能かな?」


『解析済みです。グリセリンと尿素に代わる素材は、爆炎テントウムシの油袋とラフラフの花の蜜です。それと、精製水を手に入れて下さい』


普通であれば、こんな簡単に貴族と接点を持つなど出来ないのと、現状ラッセルはいい貴族に見えるので、この繋がりを大切にしたいと考えた。そこで、妻であるエマにいい印象を持って貰おうとナノの案である化粧水作製に取り掛かろうとする。


「ラフラフの花の蜜は、簡単そうだけど爆炎テントウムシって名前からしてヤバそうだけど大丈夫なのか?」


爆炎テントウムシという名前からして触っただけで、爆発しそうなイメージをする。


『イメージ通り触ったら爆発します。しかし、寝ている間は爆発しないので、睡眠香を購入してください。ラフラフの花の近くには、デッドリーポイズンキラービーが居ますので気を付けて下さい。猛毒を備えた蜂です。睡眠香も聞きませんので戦闘になります』


化粧水を作るだけで、大怪我か下手をすれば死んでしまうのではと考えた。

前途多難な冒険になりそうだと思うのだが、お返しをしたいので頑張るかと意気込む。


「明日は、冒険者登録をして必要な素材を取りに行きますか!じゃあ今日は、早めに寝よう。おやすみナノ」


『おやすみなさいませ。ご主人様』


そしてミナトは、深い眠りにつくのであった。





チュンチュンチュンチュンと鳥の鳴き声が窓の外から聞こえる。


「ん〜、ふわぁぁ」


ミナトは、鳥の鳴き声で目覚め、大あくびをする。


「おはようございます。空気の入れ替えをしようと致しまして......起こしてしまい申し訳ございません」


メイドが、朝の日課で窓を開けに来てくれたようだが、ミナトは非現実的なメイドという存在にまだ慣れておらず、少し緊張してしまう。


「いえ、ちょうど起きようと思っておりましたので大丈夫ですよ」


「そうでしたか。よかったです。もうすぐ致しましたら、朝食ですのでダイニングまでお越し下さい」


メイドは、安堵した表情で、それだけを告げると部屋を出ていった。


ミナトはその後、用意されていた服に着替えてトイレに行き、顔を洗ってからダイニングへと向う。するとラッセル一家は、すでに席に着いていた。


「遅くなってしまい大変申し訳ございません。明日からは、もう少し早く来られるように致します」


ミナトは、勢揃いしているラッセル一家に申し訳なさで、ドアの前で頭を下げた。


「アハハハ、構わん構わん。見知らぬ土地に来て護衛やら色々気を使って疲れていたのであろう。私達も先程来たばかりだ。ミナトくんも席に着いてくれ。食事にしよう」


「そう言って頂けると助かります」


席について食事が配膳されるのを待っていると、昨日一言も話さなかったアンジェリカが声をかけてきた。


「あの、えっと、あの、ミナト様、おはようございます!」


明らかに、ミナト様あたりから声のボリュームがおかしい。あまりの声の大きさにミナトは、ビクッとなって驚く。


「おはようございます。アンジェリカ様。今日も一段と可愛らしいですね」


「あ、あ、あぅ〜」


ミナトが、そう言うと顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

日本にいる頃では考えられないような言葉が、ミナトの口から飛び出すが、ミナトは全くその変化に気付いていない。


「あらあら、若いって良いわね〜。それより、最近アナタが褒めてくれないから私寂しいわ」


エマは、ラッセルの顔を見てわざとらしく寂しさをアピールする。


「ミナトくんが、そんなことを言うからとばっちりがきたではないか。エマは、いくつになっても最高の妻さ」


「アナタったら......」


ラッセルは、恥ずかしかったのか、顔をポリポリと掻いている。エマは、嬉しそうに微笑む。


『ご主人様は、天然ですね。責任を取れないようなら安易なことは口にしない方がよろしいかと。すでに目の前に後戻りが出来ない存在をお作りになられております』


ナノは、ミナトの変化に気付いているようだが、敢えて知らせるようなことはせず、からかう様なことを言う。


『えっえっえ、どういうこと?』


『ここまで来たら病気ですね。私にはお手上げです。ご主人様、これからは背中に気を付けて下さいね』


ナノは、ミナトから気付いて、性格が変わった理由を聞いてくるまで言わないことにした。そして、この天然たらしな部分を楽しんでいるのであった。

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